フロム・ウラヌス



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【From Uranus】
 アビーとプロンはパセリを連れてクラークズ・コーナーズへ向かいます。
 農場へ行く人間が運転するトラクターの荷台に忍び込んで楽をするアビーとパセリ、忍び込みに失敗してマラソンをすることになったプロンなど悲喜こもごもでしたが、とりあえず無事に三匹はクラークズ・コーナーズに到着しました。
クラークズ・コーナーズへキーパー:それでは皆さんはアーカム郊外のクラークズ・コーナーズまでやってきました。生い茂る雑草の間に、家の残骸がいくつか見えます。
プロン:廃墟には本当に何もいないのかな? 人間以外にも、野生動物とかがいるなら警戒しておかないと。
アビー:それなら<嗅ぎ分け>とかで臭いを追ってみようかねぇ。
キーパー:なるほど。やってみてください(二匹とも成功)。そうですねー、何やら嗅ぎなれない臭いがあることに気づきました。アーカムにはいないタイプの生物の臭いがします。
プロン:その臭いがする場所へ行くか行かないかだね。
アビー:うん。とりあえず臭いを頼りに追跡してみますか。
キーパー:その臭いをたどって行けば、その何ものかがいるのは「この家だ!」というところまでは追跡できるでしょう。「出てこい! 出てこーい!」とパセリは大声を上げて威嚇しています(笑)
プロン:「シィーッ! 静かにしとけよ!」
キーパー:(パセリ)「何ィ!? 兄貴分に向かってその口の利き方は何だ!」
プロン:「誰が兄貴分だよ!?」
アビー:「やめろよ」(笑)
キーパー:臭いをたどっていくと、ちょっと大きめの廃屋にたどり着きます。ここが臭いの元なのは間違いないでしょう。
アビー:では<聞き耳>で中の様子をうかがってみますか。(コロコロ)成功。
プロン:……(失敗)。
キーパー:パセリが頷いて「……いますね」とアビーに目くばせをします。
プロン:くそー、お前、能力値がないくせに(笑)
キーパー:何かが廃屋の中で苦しそうに唸っている声が聞こえてきます。「う~ん、う~ん」
アビー:んん? 一匹?
キーパー:聞こえるのは一匹の声だけです。でも、普通の猫の声ではないようですね。
アビー:では勇気を振り絞ってひょいと覗き込んでみますか。
キーパー:ガラスがなくなってしまった窓から中を覗いてみますと、散乱したガラクタの中に何かが横たわっているのが見えます。人間の子供ほどの大きさのある、人間ではないものです。
プロン:んー、後はもう……。
アビー:近寄るしかない。
天王星からの猫キーパー:ひょいと窓枠の上に乗って、ヒラリと家の中に入ると、六つ足の、見たこともない動物がいます。こんなヤツです(イラストを見せる)。みなさん理性度ロールをしてください。
二匹:成功(※理性度喪失なし)
キーパー:直感で分かるんですが、こんな姿形をしていますが、これは“猫”です。
プロン:猫!? 猫語で話しかけてみよう。「おい、大丈夫か?」
キーパー:(謎の怪物)「うーん、うーん、痛い……」
アビー:「怪我しているのか?」
キーパー:どうやら足を挫いているようですね。
プロン:用心深く見渡してみますけど、周囲に脚が落ちているとか、こいつから猫の血の臭いがしているとかはないですか?
キーパー:それはないです。ちなみに、彼の脚は六本揃っています。(謎の怪物)「うーん、うーん、脚が痛い。腹が減った……」
プロン:ずいぶんと姿形は違うけど、彼に対して同族としての親近感みたいなものは湧くの?
キーパー:かなり遠くはありますが、彼は地球の猫の親戚に当たるということが分かります。種としては、間違いなく猫なんでしょう。彼はあなたたちが近づいてきたことに気が付くと、弱々しい声でこう言います。「やあ、地球の従兄弟たち……何か食べるものを持っていないか?」
プロン:じゃあいつも持ち歩いているカロリーメイト的なものを出して……。
アビー:いやいやいや(笑)
キーパー:この近くで餌場や水場を見つけるには<自然><裏社会>を振ってください。
プロン:よし、やってみよう。「ちょっと待っていろよ!」
 しかし、飼い猫であるアビーとプロンに自力で餌場を見つける技能などなく、ロールはことごとく失敗。ハンティングを試みて鳥を捕まえようとするも、これもダメ。やがて近くの農場にいる人間にすり寄って餌をもらおうとするも、<愛らしさ>ロールに失敗して交渉は決裂。最終手段として台所から食料を失敬する作戦に切り替え、プロンが見つかって散々追い掛け回されるも、その隙にアビーが小さな川魚を一匹くすねることに成功したのでした。
キーパー:魚をくわえたアビーがパセリと合流地点で待っていると、眼鏡の片方のレンズが割れたプロンがほうほうの態でやって来ました。
プロン:「ゼー、ゼー……どうやらアビーたちも無事だったようだね」(キラッ)
アビー:「あんたが無事じゃないよ!」(笑)
キーパー:危うく[九つの命]を使ってしまうところでしたからね(笑)
アビー:「よし、では戻ろう」
キーパー:では「任せておけ!」と胸を叩いて出て行った割りには、夕方頃にどうにか川魚一匹を戦利品として持ち帰ることができました。
二匹:(笑)
キーパー:魚を置くと、彼はそれを貪るようにバリバリっと食べました。ちょっと元気が出た。「おお……ありがとう、地球の従兄弟たちよ」
プロン:「君はきっと猫だと思うんだが、大分変わった身体をしているね」
キーパー:(謎の野獣)「確かに君たちから見たら変わっているかもしれないな。実は俺はリーギクス、君たちの言う天王星からやって来たのだ」
アビー:「天王星!?」
プロン:「あの太陽系の外側にある惑星から?」
キーパー:(天王星からの猫)「そう。俺は俺の家族を殺したシャンを追ってきたのだ」
プロン:「シャン?」
キーパー:シャンというのは昆虫のような姿をした生物のことです。シャッガイからの昆虫生物とも呼ばれます。こんな奴ですね(ルールブックのイラストを見せる)。
プロン:「そのシャンっていうのは、猫を襲ったりする輩なのか?」
キーパー:(天王星からの猫)「いや、シャン自体は猫を襲ったりはしない。奴らは鳥ほどの大きさしかないからな。しかし、俺の追ってきたシャンはルログという神を崇拝している狂信派で、崇拝様式が残虐すぎてリーギクスから追放された奴なのだ」
アビー:「ふむ」
キーパー:リーギクス人(天王星人)はルログという神に、自ら進んで自分の手足を切断して捧げるという自傷的な崇拝様式を持っています。しかし、彼が追ってきたシャンは同意しない犠牲者から足を切断して捧げるという様式を取っていて、それが邪悪すぎるとしてリーギクスから追放されました。この邪悪でサディスティックなシャンは、生贄の足を切断する時に犠牲者を殺してしまうこともあり、むしろその方が多いそうです。
プロン:理解しがたいけど、リーギクス人は自発的に手足を捧げていたけれど、このシャンはそうではないってことか。
キーパー:この怪我をした天王星からの猫は、両親と弟をシャンによって殺されたそうです。まあ、シャンが命令して、実際に手を下したのはリーギクス人なのでしょうが。彼は肉親の復讐をするために、はるばる天王星から地球まで仇を追ってきました。
プロン:「どうやら私たちと目的は一致しているみたいだ」ということで、こっちで起こっている事件について話します。
アビー:うん。
キーパー:(天王星からの猫)「う~む、確かに奴のしわざの可能性は高そうだ」
アビー:「その脚はシャンにやられたのかい?」
キーパー:(天王星からの猫)「いや、情けない話なのだが……」と言って彼が語るには、彼はドリームランド経由で地球までやって来ました。天王星からドリームランドの月へ跳躍して、そこから地球へとさらに跳躍したのですが、着地に失敗して足を挫いてしまったのだそうです。
プロン:なるほど。
キーパー:(天王星からの猫)「慣れない場所なので油断してしまった。故郷の天王星ならばこんなことはなかったぞ! 天王星では名の知れた着地名人なんだぞ!」
二匹:(笑)
キーパー:シャンを追う途中でドリームランドに立ち寄った時、シャンは黒い小人の姿をしていたそうです。シャンはドリームランドでは黒い小人の姿を取るという習性があります。ドリームランドのあやかしの森という場所の近くで見かけた黒い小人を追って、彼は地球へとやって来ました。(天王星からの猫)「間違いなく、シャンはこの周辺にいるはずだ。地球では奴がどんな姿をしているのかは分からないが……」ちなみにシャンには憑依能力があります。
プロン:憑依?
キーパー:シャン自身は鳩くらいの大きさしかないのですが、非実体化して犠牲者の脳に憑依する能力を持ちます。例えば、人間に憑依することも可能です。
プロン:「……それは厄介だね」
アビー:「うん。地球に来たシャンは一匹なの?」
キーパー:(天王星からの猫)「俺が追ってきたシャンは一匹だけだ。ただし、侍祭としてリーギクス人が二人付き従っているはずだ」
プロン:天王星人か。天王星人はどうやって見分けるの?
リーギクス人キーパー:天王星人はすぐに分かります。彼らはこんな姿をしています(イラストを見せる)。人間とは似ても似つかない姿をしていますので。「こんな人たちがアーカムのカフェでお茶していましたよ」という噂は聞いていないので、きっとどこかに潜伏しているのでしょう。
アビー:そうだろうねぇ(笑)
プロン:「君は一匹で来たのだろう? 君だけでシャンや天王星人たちに復讐できる強さがあるのかい?」
キーパー:(天王星からの猫)「……できるかできないかじゃない。やるんだ!」
アビー:熱いな!
プロン:「我々も仲間が殺されているのは同じだから、奴らに復讐をしなければならないのは同じだし、どうだろう、協力しないか?」
キーパー:(天王星からの猫)「そういうことなら、こちらからお願いしたいくらいだ。俺には地球の土地勘もないからな」
アビー:それなら決まりですな。
キーパー:彼によると、もうしばらくすれば傷も癒えるだろうから、それから一緒に行動してくれるみたいです。可能な限りは。
プロン:それまでに情報を集めたり、シャンの居場所を突き止めたりすれば良いのか。「ここは人間たちはあまり足を向けない場所だから、隠れているにはもってこいの場所だよ」とりあえず一度街に戻って、ボスにこの話をしよう。
アビー:彼の傷が癒えるまでは、食べ物はパセリにでも運んでもらえば良いんじゃない?
キーパー:なるほど。(パセリ)「任せてください、兄貴」
プロン:「よし。じゃあリンカーンと仲間たちに報告だ」
キーパー:では別れ際に天王星の猫が「地球の従兄弟たちよ。名前を聞かせてくれ」
アビー:「勇者アビー」
プロン:「プロフェッサー・プロン。君の名前も教えてほしい」
キーパー:(天王星からの猫)「俺の名前は――」と言って名乗りますが、それは地球の猫には発音できない名前です。それを聞いてパセリが「じゃあ、何かニックネームをつけてあげようよ!」と提案します。
プロン:(しばし考えて)「……じゃあ、天王星から来たのだからユラナスで良いんじゃないの?」
アビー:「ふむ。ユラちゃんですな」
キーパー:(天王星からの猫)「なるほど、それが地球でのリーギクスの呼び方か。ユラナス……ユラナス……」口の中で繰り返すと、彼はグフッ、グフフッと笑います。どうやらニックネームを気に入ったようです。
二匹:(笑)



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