陽勝香炉


五


キーパー:翌日です。
村雨:香炉を使った儀礼とやらを、技能を持っている人に調べてほしいのですけれど(※村雨は探索者としては今一つポンコツです)
佐山:終南派についても調べておきたいですね。
泰野教授:終南派の行なっていた儀礼について調べたいので、中国史に詳しい教授とか、知り合いにいませんかね?
キーパー:中国の歴史の中で重要な役割を果たした宗派ではないので、どちらかというと民族学とか、そちらの方ですね。
山田:中国の文化に詳しい人がいるかって話ですな。“極星香炉”自体についても調べてみますか。

 探索者たちは自分の専門分野の人脈や、自らの足(〈図書館〉技能)を使って調査をしますが、既に途絶えてしまった弱小宗派であるためか、終南派や“極星香炉”についての情報は得られません。


村雨:オレは“人胆”について、得意の医学方面から調べてみたいのですけど。
キーパー:それなら〈医学〉〈科学(薬学)〉のどちらでも良いですよ。
村雨:(コロコロ……)〈科学(薬学)〉で成功です。
キーパー:では先日の墓泥棒の話を踏まえて調査するとピンとくるんですけれども、戦後の混乱期、死体から内臓が取り去られたという話があります。それは肝臓だったそうです。つまり、それによって作られていたのは“山田丸とは同じものではない”ということです。山田丸は肝臓、胆嚢、脳とか色々なものを原料にしていたんですけれども、墓泥棒の話の中で取られていたのは肝臓だけです。
村雨:う~ん、なんだろ。肝油ドロップとか作るんですかね?
キーパー:その日の調査で分かったことといえばそんな感じですかね。

ライン

キーパー:翌日です。飛鳥英樹から電話がかかってきます。「どう? 何か調べて分かった? 差し支えなければ、今日の夕方あたりそちらにうかがって情報のやり取りをしたいと思っているんだけど?」
泰野教授:「こちらとしては、願ったりかなったりだけど」
飛鳥英樹キーパー:ではその日の夕方に飛鳥がやってきます。断りもなくソファにドカッと腰を下ろします。「死体泥棒がスポンサーとは、因果だな。いや、正確には内臓泥棒だな」
宇乃:「どうやったらそんなことができるの?」
村雨:「どこから、どういうルートで?」
キーパー:(飛鳥)「病院」
村雨:だよね。
キーパー:(飛鳥)「じゃあ、俺の方から」と言って、懐から写真を1枚取り出してテーブルの上に置きます。モノクロの写真で、華奢な青年が1人写っています。写真館のような所で撮ったような、肖像写真ですね。INTロールをしてみてください(コロコロ……村雨以外は成功)。成功した人は青年の目力に引きつけられます。直感的に、この青年が北始成武であることが分かります。(飛鳥)「正確には分からんが、この写真は1920年代に撮られたものらしい」
一同:ん~?
村雨:100年くらい前?
キーパー:(飛鳥)「やっぱ、あの爺さん、100歳を超えているな」
宇乃:つまり、上海租界の時代には既にちゃんとした青年だった?
佐山:会長は「10歳になるか、ならないかの頃」って言っていましたけどね。

 飛鳥英樹の情報提供は続きます。彼は北始成武の社会的信用を失墜させることを目的としているようです。

  • “ある薬”は人間の肝臓を原料として作るらしく、その効能は滋養強壮、しかもかなり強力なものである。

  • “ある薬”のレシピは北始成武しか知らない。

  • 原料(肝臓)の入手は、古くは墓泥棒、最近は病院経由でなされていたらしいが、その確証はまだつかめていない。


キーパー:(飛鳥)「こんな怪しい爺さんが興味を持った翡翠の骨董品とは、いったい何なのだろうな?」
村雨:現物を見せます。「写真撮っても構わないよ」
宇乃:我々が調べた範囲の情報も渡しましょう。陽勝の伝説とか。
キーパー:(飛鳥)「なるほど、あの爺さんが好きそうな品だな。俺はこっち方面にはあまり詳しくはないんだが、あの爺さんが目をつけたとなると、何かありそうだな」
泰野教授:香炉には不老不死に関する逸話があるから、内臓泥棒が“ある薬”(=長寿)と関連するなら、強引に結び付けられなくもないよ、くらいかな。
キーパー:飛鳥は「これからも情報を融通し合おうや」とギブ&テイクを約束して立ち去ります。

ライン

村雨:香炉を使って道教の儀礼を行なって、ムニャムニャってやって人胆を作ろうってことなんですかね?
泰野教授:それだと、政財界に安定供給することはできないでしょ。そもそも、これまでも香炉なしでやってきたわけだし。新しい方法を試す必要はないでしょ。
村雨:! そうか、今までだって作れていたわけですよね。
泰野教授:人胆に関して言うと、別に香炉はなくても良いわけよ。北始成武は香炉を使って今までやっていたこととは違うことをやりたいんじゃないのかって思うんだけど。香炉を見つけたから、今までやっていたこととは違うベクトルのことを始めているんじゃない?
宇乃:この時点で我々が恐れるべきなのは、香炉を使った儀礼っていうのがどんなものなのかが分からないのに、儀礼の現場にお呼ばれしているってことだよね。
泰野教授:飛鳥氏が現れるまでは、探し求めていた香炉を見つけて感激したお爺ちゃんが儀礼の真似事をしてみたいだけかと思っていたけど、何かそれだけじゃないぞってことが分かってきた。