
キーパー:ビビビさんとの約束の時間が近くなったので、待ち合わせの場所へと向かいます。そこにはGoProを持った、いたって普通の風貌の、眼鏡をかけた中肉中背の20代の男性がいます。宇乃さんは知っていますが、彼がビビビさんですね。
宇乃:「今回は見学者がいるんだけど、良いよね?」
一同:ぞろぞろ。
キーパー:(ビビビ)「え? イイっすけど、どんな関係の人たちですか?」
宇乃:「今、一緒に働いている人たち」
キーパー:「え? じゃあ、オカルト系の……?」
佐山:ある意味正しい。
キーパー:ではビビビさんや宇乃さんは「ここが殺人現場です」といった動画のオープニング等を撮り始めます。まだ規制線は張られたままですね。昼間にいた見張りに立っている警官は引き上げていますが、サイレンを鳴らさずに徐行しているパトカーが定期的に巡回してきます。宵の口に集合して、現在はとっぷり夜になっている時間帯です。
宇乃:「なんだか詳しい人に話を聞いたら、クマが出て、喉笛に噛みつかれて、内臓を持ち去られたらしいよ」
キーパー:(ビビビ)「クマっすか!? この辺にいるんすか!?」
村雨:その情報、漏洩しちゃって良いんでしたっけ?(笑)
キーパー:(ビビビ)「じゃあ、この界隈をブラついてみますかね」ということで周辺の路地裏などを回ってみることになるんですけれども、ここで皆さん、〈聞き耳〉ロールを(山田、宇乃、佐山が成功)。ひと気のないビルの背面に挟まれた狭い路地を歩いていますと、ロールに成功した人には「うわぁっ!」という悲鳴が聞こえます。声の主は男性で、聞こえてきた方角は分かります。
佐山:そちらに向かいましょう。
宇乃:「今、悲鳴が聞こえたよね!?」
村雨:「え? 何も聞こえなかったけど?(走り出した仲間たちの後を追いながら)何も聞こえなかったけどーーーーー!?」
キーパー:何本か路地を駆け抜けた後、持っていた照明の光の中に倒れている人の姿が入ります。
一同:お?
キーパー:その倒れている人を組み伏せて、喉笛に食らいついているモノがいます。それはフィルムに引っかき傷をつけたような、ザザザッていうノイズのような見た目をした、四つ足の獣のようなシルエットを持つモノです。その頭からは、枝分かれした角っぽいものが生えています。
村雨:……鹿っぽいな。
山田:うん。
キーパー:〈正気度〉ロールをお願いします(泰野教授が4正気度ポイントを喪失)。懐中電灯で照らすと、そのモノは顔を上げて皆さんの方に注意を向けるリアクションを取ります。
探索者たちは異形のモノから逃走しようとするため、チェイスが発生します。
肉体的に優れていない泰野教授が逃げ遅れるため、(村雨以外の)腕に覚えのある探索者たちが彼女を守りながらの逃走となります。
結果的には、鹿っぽいモノの角によって山田が軽い傷を負ったものの、全員逃げ切りました。
キーパー:皆さんが路地を抜けて、ひと気のある通りに到達すると、鹿は地面に溶け込むようにして消えてきました。
泰野教授:逃げ切った!
宇乃:怪物が消えていったということなら、襲われていた人の所へ戻りましょう。
佐山:119番します。あと、110番も。
キーパー:襲われていた人の息はあります。ほどなく救急車が到着し、付近を巡回していたパトカーもやってきます。負傷した山田さんも一緒に救急車に乗せられて、病院でしかるべき処置を受けられます。現場に残った人たちの所へ武納警視がやって来て、「また君たち!?」という顔をします。
探索者たちはそれぞれ、自分たちが見たありのままを武納警視に話します。宇乃と佐山(とビビビ)が撮っていた映像も(喧々諤々の末)提供し、とりあえず判断と検証は警察に任せます。
警察の捜査から解放された後、ニュースで同様の事件が4件起きていたことを知って、探索者たちは驚くのでした。白凰市民には外出自粛が求められています。
その後、埼玉県にいる飛鳥英樹から連絡が入り、新たな情報が提供されます。近々発表がある北始製薬の社内人事で、北始成武は会長職を退くとのことです。
村雨:つまり、仙人になる準備が整ったってことなんじゃないですかね?
泰野教授:それっぽいよね。
さらに北始製薬会長秘書の多賀からも連絡が入ります。
泰野教授が香炉の貸し出しは可能である旨を伝えると、多賀からは感謝の言葉とともに、儀礼実施の際には白凰市万座区に場所を押さえると伝えられます。また、香炉は儀礼で使用した後は原状回復して返却されるとのことです。儀礼の内容は北始会長自身でないと分からないため、引き続き確認要件として持ち越されます。
村雨:……いや~、儀礼の内容は回答がないんじゃないかな~。あるいは当たり障りのない噓の内容が伝えられるか。キーパー目線になってメタ的に言うと儀礼内容がシナリオのキモになると思うので、それはクライマックスで対峙すべきショッカーというか、コンフリクトになると思うんですよ。
宇乃:でも、それを確認しないで貸出するのは危ないんじゃない?
泰野教授:貸出許可申請の内容部分が空白だと許可を取るのは難しいんじゃないかな~。
村雨:なんつーか、そこはゲーム的に割り切って話を進めた方が良いと思いますけどね~。正直、儀式内容はクライマックス前にこだわるポイントじゃなくて、もっと他の何かを見つけてアタックしたほうが良いですよ、きっと。例えば“人胆”とか、結局どう関わってくるんですかね?
泰野教授:儀礼で仙人になるんだったら、いらなくなるよね、ソレって。
宇乃:多分、これからやろうとしている儀礼にたどり着くための手段だったんですよ。会長職を引退するっていうんだから、もう“人胆”とか関係なくなるんじゃない?
村雨:でも、鹿で肝臓を集めていますよね?
宇乃:この儀礼に大量に必要ってこと?
泰野教授:あ~、そういうことか。いつもと違って、早急に大量に必要だってこと? もうゴールは見えてきたから、多少の無茶は構わない?
宇乃:そのとおりで、リスク取ってきているってことだよね。
村雨:そうなると、充分な肝臓が揃うまでは儀礼を執り行なうことはできないってことになりますよね。
宇乃:ってことは、殺人事件は続く?
佐山:鹿にやられた被害者から取られたのは肝臓と判明しているんでしたっけ?
山田:武納警視からの報告によると“内臓”とだけで、肝臓とまでは特定されていないね。
泰野教授:……先方はこちらの都合に合わせるってしきりに言っているから、例えば星辰が正しい何時々々までに執り行なわなければならないって追われている感じじゃないよね。
宇乃:鹿の騒ぎって、香炉を貸し出して儀礼を行なうって決まってから始まったんだよね?
村雨:まあ……そうですな。
泰野教授:目途が立ったので、具体的に動き始めた?
一同:う~ん。
村雨:……もう、いっそ始めてくれねぇかな、儀礼。
キーパー:その日はそんな感じで終わります。徹夜で事情を聴かれた皆さんは、泥のように眠ります。
|