
翌日、山田は武納警視に連絡して鹿の事件の詳細を聞き出します。
一昨日の夜に起きた事件の犯行時刻はバラバラで、どうやら探索者たちが遭遇した事件が最初のものだったようです。そして抜き取られていた内臓は、やはり肝臓であることが伝えられます。(ビビビたちから提供された)映像を踏まえ、警察は白凰市の中心部に厳戒態勢を敷いており、四足歩行の獣が関わっていると見て猟友会に協力を要請しています。
その後2日間は何事も起こらず、鹿のような怪物も現れませんでした。
宇乃:そろそろ儀礼について、催促してみても良いんじゃない?
泰野教授:そうだよね。多賀さんに電話してみます。「依頼していた件、そろそろいかがでしょうか? 儀礼を執り行なう具体的な場所はどこになりますか? それと、儀礼の内容についてはいかがですか?」
キーパー:(多賀)「場所は万座殿にある貸テナントを押さえています。儀礼の具体的な内容は当日ということになりますが、何でも終南派には不老長寿を祈るという儀礼があるらしく、それを再現してみたいという意向でして」
宇乃:不老長寿(笑)。もう隠さなくなってきたな。
キーパー:(多賀)「日程は来週あたりということでいかがでしょう?」
泰野教授:来週あたりって感じで良いのか……。
山田:もうこちらから日程を提案しちゃったほうが良いんじゃないですか?
村雨:そうですよね。もうぼんやり来週という話じゃなくて、こっちで決めちゃったほうが良いですよ。
泰野教授:「じゃあ、来週の金曜日でどうですか?」
キーパー:(多賀)「分かりました。それでは来週の金曜日、午前10時でお願いします」
泰野教授:「特にこちらで用意するものはありませんか?」
キーパー:(多賀)「極星香炉だけで結構です。ご足労おかけしますが、よろしくお願いします」

キーパー:今度は事務所の方に電話がかかってきます。飛鳥英樹からです。「ちょっとしたお土産」があるから事務所に来るそうです。
泰野教授:では、お待ちしていましょう。
キーパー:その日の午後に、古い大きな茶封筒を手に持った飛鳥が訪ねてきます。それを無造作にテーブルの上に放り投げます。「それが言っていたお土産。完全に、あんたらの畑のもんだから」
泰野教授:「はあ、なるほど」と言いながら、中身を取り出します。書類?
キーパー:和綴じの本が一冊出てきます。表紙には『終南経』と書かれています。
宇乃:お? お?
泰野教授:パラパラと中身を見ます。何語で書かれていますか?
キーパー:古き日本語で書かれています。
泰野教授:漢字かな交じり文で書かれているってこと? お経なのに?
村雨:そういう意味の“経”じゃないんでしょ。多分、『山海経』とかで使われる“経”の意味ですよ。
泰野教授:そういうことか。
キーパー:〈目星〉かINTロールをしてください(全員成功)。茶封筒は本一冊を入れるには明らかに大きすぎることに気づきます。
佐山:もともとは他にも何か入っていた?
キーパー:(飛鳥)「気づいたかい? ソイツは余り物なんだ。メインはレシピさ。“あの薬”のな」
続いて飛鳥英樹は明かしていなかった彼の側の事情を話します。
彼のスポンサーは北始製薬の広瀬社長と持田副社長です。北始成武のワンマン支配を嫌った広瀬と持田が会長を失脚させるために、飛鳥を使って、会長に不利になる情報を探らせていたのでした。
しかし先日の情報通り、北始成武は近々会長を退いて、広瀬社長に全権を譲渡すると役員会で決定しています。それに伴い、これまで門外不出とされていた“あの薬”のレシピは、北始会長から広瀬社長の手へ、あっさりと渡されました。
キーパー:(飛鳥)「おかげで、こっちはお役御免だよ。最後に手切れ金をがっぽりもらったけどな。ついでにもらったのがその本だ。俺にはチンプンカンプンだけど、あんたらなら何かの役に立ててくれると思ってさ」
山田:「要は、社長側としてはレシピが欲しいだけであって、内容の良く分からない本については不要だから持っていっても良いよってことか」
キーパー:(飛鳥)「どうやら、そういうことらしいね」
泰野教授:核心につながるものをもらったからというわけではないですが、儀礼を執り行なう日時が決まったことを話します。
キーパー:(飛鳥)「……差し支えなければ、俺もその儀礼に参加することはできないかな?」
宇乃:「面が割れていなければ……」
キーパー:(飛鳥)「それなりに変装はするから」
宇乃:「あなたの元スポンサーたちも同席する可能性があるけど、そこは?」
キーパー:(飛鳥)「それは大丈夫。手切れ金と土産をもらって、もう“終わっている”から。あの爺さん(=北始成武)は明らかに身辺整理をしているので、それがどういうことなのかを知りたいっていうのがある」
村雨:関わったことの結末を見たいっていうのは分からなくもない。レシピを手放したことから見るに、どうやらもう“人胆”はいらなくなった、“人胆”のいらないステージへと進もうとしているわけですよね、きっと。
泰野教授:「そういうことなら、まあ、OKですよ」
キーパー:「じゃあ、来週金曜日の10時に」ということで飛鳥は帰ります。
泰野教授:とりあえず儀礼までは、受け取った『終南経』について読んでみるくらいしかないかな~?
キーパー:古い日本語で書かれているということで、読んで理解するにはハードの〈母国語〉ロールに成功する必要がなります。
村雨:〈母国語〉が90%の私が読みましょう。(コロコロ……)17、なんならイクストリーム成功です。
キーパー:おお! ではスラスラ読めます(笑)。きっと写本なんだろうな、ということは分かります。もとは中国語らしく、但し書きなども書かれています。
終南真人を御本尊とする終南派の聖典『終南経』に書かれていた内容は以下の通り。
- 「御本尊と相対することができれば、天地に等しい寿命を得ることができる」と説いている。
- 御本尊と相対するための儀礼には“極星香炉”が必要となる(=終南真人を招来するのに香炉が必要となる)。
- 《終南真人影向》の儀礼とその際に唱えられる呪文。儀礼を行なうには“極星香炉”と“玄鹿の角”が必要となる。
- 《玄鹿を招く》の呪文。玄鹿には充分に滋養を与えておく必要があること。
村雨は3正気度ポイントを失い、〈クトゥルフ神話〉技能を2%獲得しました。
宇乃:この内容からすると、もう儀礼の準備は整っている感じだよね。現世での権力の源である“あの薬”のレシピも手放して、もう北始成武は人生の余韻を楽しんでいる段階なのかも。
村雨:これで人死にが出ていなければ好きにやってくれって感じなんですけどね。
山田:これで後は、会長は真人と相対するのみ、ってわけですか。
村雨:とりあえず、儀礼の内容は分かった。これが真実かはともかくとして、会長は真実だと信じているのでしょう。
山田:それを邪魔するのか、見届けるのか。
キーパー:とりあえず数日かけて『終南経』を読んで分かったのはそんなところです。
この後、探索者たちは儀礼の現場に行ってからの行動方針について話し合いますが、結局何が起こるか具体的には分かっていないため、「面白そうなところまで見たら(=〈正気度〉ロールが発生したら)、臨機応変に行動する」という内容のない結論に達するのでした(笑)
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