ゲームズ・マスター(以下GM):さて、皆さんは夜のケンブリッジで馬車を追っています。
エドワード:え? 唐突にそんなところから?
GM:歯車の寺院の信徒である歯車の使徒と呼ばれる者たちが、ケンブリッジにあるクロックワーク工房から何かを強奪して逃げています。皆さんは馬車を止めなくてはならないという状況です。馬車は1ラウンドに24メートル進みます。当然、馬が引いているので速いわけです(※人間は1ラウンドに15メートル移動できます)。
エドガー:馬車を止めるには、御者か馬を撃つしかない? 銃を持っているなら、御者を撃てば良いんじゃない?
【第1戦闘ラウンド】
ジョン:移動してカービン(※射程12メートル)を撃ちます。(コロコロ……)命中して11ダメージ。
エドガー:マスケットを撃ちます。(コロコロ……)02! クリティカルです。17ダメージ。終わった後、銃を捨てます。
GM:御者(※歯車の使徒A)は死んで、御者台に突っ伏します。近くにいた歯車の使徒Bが〈運動〉ロールをして(コロコロ……成功)馬車に飛び乗って、御者に代わります。馬車は24メートル進みます。
エドワード:“全力移動”をしますが、ギリギリ馬車に届かないので終了ですな。
GM:伏兵(※歯車の使徒C)がいますので、エドワードが馬車を追うのを見てカービンを撃ちます。エドワードは30メートル動いているので、-40%で(コロコロ……)さすがに命中しませんな。カービンを構えた伏兵がいることに気づきました。
【第2戦闘ラウンド】
ジョン:“全力移動”で馬車を追いますが、追いつけないので、罵詈雑言を浴びせて御者を挑発します。挑発するのに技能は必要ですか?
GM:相手に何かリアクションを行なわせるには技能が必要だね。そうなると“全力移動”はできなくなります。
ジョン:分かりました。とりあえず罵詈雑言は浴びせておきます。
エドガー:剣を抜きながら伏兵に向かいます。
GM:すると、前方から新たな歯車の使徒Dが現れて、馬車はさらに24メートル進みます。次のラウンドになると馬車は逃げ切りです。歯車の使徒Cは退却を……いや、しないな。仲間(歯車の使徒D)が現れたんだから。剣を抜いて、エドガーを迎え撃つ準備をします。
エドワード:もう馬車を止めるのは無理かな。増援(※歯車の使徒D)に二刀流で攻撃します。(コロコロ……)銃は外れましたが、サーベルはクリティカル! 11ダメージ。
GM:歯車の使徒Dは致命傷を受けました。
この後、歯車の使徒Cはエドガーに倒されますが、馬車は逃げおおせました。
GM:馬車が走り去ると同時に、歯車の使徒Dを追ってきたと思しきニューモデル軍の兵士が現れます。エドワードとエドガーはその顔に見覚えがあります。オリンピアの件のときにキャンベル隊にいた護衛兵士の一人、ギルデンスターンです。彼は「くそっ! 逃げられたか!」と言っています。
エドガー:彼も歯車の使徒を追っていたの?「もしかして、あなたもあの馬車の連中を?」
GM:(ギルデンスターン)「いや、我々は馬車ではなく歯車の寺院の連中を追いかけていたのだが……」さらに、ギルデンスターンのあとからニューモデル軍の兵士数名と、スカサハが追いついてきます。
エドガー:……情報を共有する必要はないか? でも、前回、歯車の寺院とは一緒に戦ったという実績があるんだから、情報は伝えます?
エドワード:歯車の使徒たちを一刀両断にしてしまったので、情報を得るためには彼らと協力したほうが良いんじゃないですか?
GM:そうこうしていると、皆さんにはヴァレリィとオリンピアが追いついてきます。(オリンピア)「大丈夫ですか? 銃声も聞こえましたが……」
エドガー:あ、彼女もいるの?
GM:ケンブリッジにきていて、顔馴染みと一緒にいたところで騒ぎに巻き込まれたという状況です。
一同:なるほど。
GM:(ギルデンスターン)「実は現在、町で同時多発的に工房襲撃事件が起きている。我々はこの先にある工房の襲撃犯を追っていたのだが……。走り去った、あの馬車は?」
エドガー:「我々も工房を襲撃した奴らを追っていたのだが、すんでのところで逃がしてしまった」
GM:ギルデンスターンの後から追いついてきた兵士たちによると、彼らも何人か歯車の使徒を片付けましたが、逃げ切った使徒たちもいるようです。エドガーの話を聞いて、ギルデンスターンはスカサハと数名の兵士に馬車を追うように命じます。馬車は西へ逃げたので、スカサハたちはその方角へ向かいます。ギルデンスターン自身は「北でも襲撃があったらしいので、私はそちらへ向かう」と言っています。
エドガー:「あなたたちが力を入れて追っているということは、余程大きな事態だということですか?」
GM:(ギルデンスターン)「わからない。ただ、何か大規模なことが始まったのは確からしい。しかし、歯車の寺院は最近活動を始めた組織で、それを危険視している者は我ら――と、君たち――のようのような、ごく少数しかいない」
エドガー:「複数の工房が狙われたということですが、何が狙われたのですか?」
GM:(ギルデンスターン)「それも、これから調査しなければならない点だ」そう言うと、ギルデンスターンは残りの兵士を率いて町の北側へと走っていきます。
冒険者たち(+オリンピア)は騒ぎの様子をうかがうべく、ケンブリッジ最大の工房があるケンブリッジ大学へ向かいます。
ケンブリッジは大学で学ぶ学生たちと、工房で働く若い徒弟たちの仲が非常に悪く、今回の襲撃事件に乗じて騒いでいる若者たちも数多く見受けられます。混乱に拍車がかかる大学構内は立入禁止となっており、冒険者たちはニューモデル軍の兵士に止められます。
GM:(ニューモデル軍兵士)「はい、ダメダメダメ!」ということで足止めされます。
エドワード:王党派の錬金術師ということでただでさえ居心地が悪いというのに……。
GM:素性がバレないようにしなければなりませんね、特にケンブリッジでは。校門の前で入れろ、入れないで問答していると、皆さんの背後からコッポラが現れます。(コッポラ)「ん? 君は……オリンピアか? このような場所で何を?」なお、彼は皆さんを見て怪訝そうな表情を浮かべます。どうやら、皆さんの顔は覚えていないようです。
エドガー:「我々も一度、親方にはお会いしているのですが……」
GM:コッポラのアホ毛が「?」の形になります(笑)
エドガー:「我々も工房を襲撃した馬車が逃げるところに偶然出くわしまして」
エドワード:「まあ、結局取り逃しましたが……」
GM:(コッポラ)「なるほど。工房も大学もこの通りのありさまだ」といって渋い顔をします。コッポラの協力を得たい場合は〈影響力〉ロールをお願いします。
エドワード:(コロコロ……)04! 大成功です。
GM:(コッポラ)「ああ、君の顔は覚えているな。確か王党派の錬金――」
エドワード:「シーッ! シィーーーーーッ!」
一同:(笑)
GM:「彼らは私の連れだから」とコッポラが言うと、兵士たちは頷いて皆さんを通してくれます。先頭に立って大学構内を歩くコッポラを見ると、学生や兵士たちは挨拶や会釈を送ります。
エドガー:名の知れた人物だということですね。
GM:大学構内は騒然としていて、所々で火の手も上がっています。当然、大学関係者やニューモデル軍の兵士たちが事態の収拾に当たっています。騒動の中で死傷した者たちの中には、歯車の使徒たちもいるようです。
エドガー:大学外の工房も襲われたってことだったよね?
GM:はい。大学外にも小さな工房がいくつもあって、皆さんが追っていたのはそうした工房を襲った連中なのでしょう。
ジョン:そういう小さいところほど襲いやすいでしょうしね。
GM:大学構内を歩いている内に〈工学〉、あるいは〈工芸(クロックワーク)〉技能でロールしてください。
エドワード:〈工学〉で成功しましたよ。
ジョン:〈工芸(クロックワーク)〉で成功です。
GM:エドワードは建物建築のセオリーから察して、ジョンは単純にクロックワークの知識から分かりますが、倉庫周辺の被害が大きいですね。
エドガー:研究所とかではなく? いったい何が狙われたんだ?
ジョン:倉庫ということになると一気に漠然としますね。
GM:研究施設が狙われていないとなると、最新技術が標的とされたわけではないようです。
エドガー:そういうことですよね。「何か大きなことをやろうとしているような気がする。何かを大量に盗み出そうとするのが目的だったんじゃないか?」
ジョン:「シンプルに部材ですかね?」
GM:そうこうしている内に、コッポラの工房に到着します。幸運にも、ここは被害を受けていないようです。皆さんとオリンピアは工房の応接室に通されます。全員が椅子に腰掛けると、コッポラが彼の知っていることをかいつまんで話してくれます。大学の工房および倉庫を歯車の覆面をした不審者の集団が襲撃して、クロックワーク部品を強奪していったそうです。
エドガー:そこまでは我々も既に知っている情報ですね。
GM:(コッポラ)「狙われたのは――」ここでコッポラはチラリとオリンピアの顔を見ます。「――どうやら自動人形に関する部品のようだ」
一同:ほ~。
GM:自動人形は、現在の主力開発部門ではないです。自動人形の天才的第一人者であったアーサー・ゴブレット氏は出奔してしまっているので、開発は停滞しています。
ジョン:現在の主流は兵器開発ですよね。
GM:そう。クロックワーク開発は軍需によって強烈に進められているので、停滞している自動人形を使ったクロックワーク兵士部門が狙われるのは不自然な気はします。
エドガー:オリンピアには歯車の寺院から奪った部品が使われているので、逆を言うと、奴らが自動人形を大量に必要としている何かを行なっている疑いはあるよね。
ジョン:オリンピア自身が狙われるってことも考えられる?
GM:今のところ、オリンピア自身には魔の手は伸びてきていませんが、それがなぜなのかは不明です。コッポラによると、歯車の寺院は一般にティンカー(※“技術者たる神”を信じる派閥。コッポラはティンカー派閥に属している)の異端とみなされているそうですが、実は信じている神がまるで違う、まったく別の教団なのだそうです。
歯車の寺院
- 機械への進化――人間の肉体と精神を機械に近づける。
- 聖なる機械の復活――無限の力を持ち、世界を機械的な秩序に変えるルンクを復活させる。
- 混沌の秩序化――戦争の混乱を試練と捉え、社会や政府を機械的な秩序のもとに再編しようとしている。
- 機械と人間の融合――全人類を“機械神の子ら”に変えることを目指す。
ジャービル・ブン・ハイヤーンの著した『失われた石の書』(あるいは『失われた書』)を聖典とし、“歯車の神”ルンクを崇拝する秘密結社。ルンクの力をこの世にもたらし、混沌の中に秩序と機械的完全性を打ち立てることを目的としている。信者たちは、ルンクの教えに従い、世界を再構築することで人間の弱さや混沌から脱却し、完璧な機械仕掛けの世界を創造しようとしている。 |
GM:まぁ、良くない人たちです。「ちょっと、分かり合えないかなぁ」という集団です。
ジョン:意外と、服を剝いでみたら体の一部が機械だったりするんですか?
エドガー:自らの身体を機械に近づけるっていうモットーがあったよね。
GM:(コッポラ)「全員がそうとは限らないが、きっとそれを目指している、あるいは既に機械化に着手している者もいるかもしれない。あるいはティンカーの中にも……いや、何でもない」
ジョン:ティンカーの中にも半分そちらに足を踏み入れている奴らもいるんだろうなぁ(笑)
GM:(コッポラ)「ティンカーの行きつく先の一つではあると思う。極めて異端だが」
ジョン:「進化系の一つとしてあり得るでしょうね」
GM:(コッポラ)「おかしな話だ。我らティンカーが進むべきは、その方向ではないというのに」
コッポラの話やケンブリッジの状況を総合すると、歯車の寺院は何か大きな陰謀を企んでいると思われます。歯車の使徒たちがケンブリッジ郊外へ逃げ散っていったことを考えると、拠点は複数存在するのかもしれません。
ジョン:内通者がいた可能性もありますね。歯車の使徒が仮面を外して、工房の中に紛れ込んでいても不思議はありませんから。
エドガー:ジョンの言うとおり、彼らが手引きした可能性もあるよね。どこかに一つ大きな隠れ家があるわけではなくて、小さなアジトが複数あるというのなら、我々としてはそれを見つけて一つでも潰していければ良いですよね。
GM:オリンピアも自分の出自絡みの話でもあるので「歯車の寺院の陰謀の内容を調査して、阻止しましょう!」と皆さんを鼓舞します。
エドガー:依頼主がオリンピアってなったときに、報酬とかどうなるんですか?(笑)
GM:オリンピアはポケットを探って、テーブルの上に8ペニーを出します。彼女は町で買い食いもしないので、ほとんどお金を持っていません。たまに花を一輪買って満足するくらいです。
一同:(苦笑)
GM:(オリンピア)「成功したらケーキと紅茶をご馳走して、歌を贈ります。約束します!」
エドガー:せめて、このミッション中の衣食住が保障されるなら……。
GM:皆さんが話し合っているのを傍で聞いていたコッポラが「もし、事件解決のために動くつもりがあるのなら、協力ができないでもない。何なら、ここを拠点にして活動してみてはどうか?」
エドガー:「それはありがたい!」
エドワード:錬金術師の私が言うのも何ですが……「オリンピアが狙われる可能性もあるのでは?」
GM:(コッポラ)「(オリンピアを見ながら)確かに。しかし、きっとオリンピアほどの複雑な仕組みを扱える者は、アーサーを除くと数えるほどしかおるまい。真っ先にオリンピアを狙わないということは、連中はオリンピアほどの高度な自動人形を求めていないのではないか?」
エドガー:「なるほど。彼らの計画レベルに合致するものを奪ったというわけですね」
ジョン:「持っていった部品からも、それに違和感はないんじゃないですか?」
エドガー:ここにいれば、コッポラ親方のところにいろいろな情報が集まってくると思いますので、歯車の寺院のアジトにかかわる情報が入ったら、共有してもらいたい。我々は可能な限り、敵の活動を阻止するために動きたい。我々も独自に情報収集をしましょう。
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