ゲームズ・マスター(以下GM):ネイズビーの戦いの後、エドワードは戦争に嫌気が差したか何かで冒険者生活を始め、携帯用実験室一式を乗せた荷車を牽くラバの馬丁を求めていました。そこで護衛兼馬丁として雇われたのがエドガーです。
エドガー:なぜか親近感を覚えました(笑)(※エドワードとエドガーは、互いにそうとは知りませんが、生き別れの双子です)。
エドワード:なぜかSIZも同じで、生年月日も一緒ですからな。
GM:ヴァレリィも道連れとして同行して、荷車を押しています。でも油断していると、彼女は荷車に乗って、押すのをサボります(笑)
エドガー:いや、それはダメでしょ!
GM:さて、冒険生活の始まりに、エドワードは手紙を受け取ります。差出人はジャック・パーソンズ。以前、何かの商取引で関わった人物だとしておきましょう。
手紙の内容は、おおよそ以下の通りです。
- ケズィックにあるパーソンズの銅精錬所が、近くにある湖の浮島に住むドイツ人たちによって破壊されたおかげで、彼は現在無職である。
- 精錬所は銅鉱石から得られる利益を王党派の戦費として提供していたが、暴徒に襲撃され、火を放たれた。
- 襲撃者はドイツ人鉱夫の妻たちで、3か月前に彼女らの夫が連れ去られたことへの復讐だと語った。
- しかし、鉱夫たちを連れ去ったという人物、鉱山監督のジェームズ・ニコルソンは、パーソンズの知る限り、既に亡くなっている。
ケズィックは湖水地方にある田舎で、ダーウェント・ウォーターという湖の近くにあります。ここでパーソンズは銅鉱石の精錬所の所長をしていました。鉱夫たちはドイツからの移民で、ダーウェント・ウォーターに浮かぶヴィカーズ島で共同生活を送っていました。
内戦で鉱山は閉鎖されたはずですが、鉱山監督のニコルソンがヴィカーズ島を訪れ、再開された鉱山に鉱夫たちを連れて行きました。しかし、鉱夫たちは3か月間戻らず、妻たちが精錬所に抗議。パーソンズはニコルソンの死を認識していましたが、鉱夫の妻たちは夫を率いて行ったのがニコルソンだと主張して引かず、争いが起こり、事務所が放火されたという顛末です。
GM:「この謎多き事件の解決に協力してほしい」とのことです。そして皆さんはケズィックへ向かっている途中です。
エドガー:「……まったく、不思議な話もあったものですね」
エドワード:「ふむ」
GM:ケズィックには何事もなく到着します。人口600人くらいの市場町なのですが、銅鉱山が閉鎖されてしまってからは活気を失ってしまっています。手紙の指定では、町のメイン・ストリートに面したキングズ・アームズ亭というコーチング・イン(※馬車を止めて休息する旅館のような場所)でパーソンズと落ち合うことになっています。
エドワード:では、入っていきましょう。
GM:宿に入ると、でっぷりとした体つきの店主と、すごく痩せた女将が皆さんを出迎えます。1階はバーになっているのですが、客は1人もいません。(店主)「おお、お客さんとは珍しい!」
エドワード:「ジャック・パーソンズに招かれて来たのだけれど、こちらで良かったかな?」
GM:(店主)「おお!? エドワード卿とお見受けいたします。パーソンズの旦那から話は聞いておりますよ」店主は40代半ばの男で、ジェフリー・スタンディッシュと自己紹介します。
エドガー:パーソンズはまだ来ていないんだよね? じゃあ、店主に話を聞いてみます。
キングズ・アームズ亭の店主ジェフリー・スタンディッシュから聞き出せた情報は以下の通り。
- 精錬所に対する襲撃はひどいものだった。首謀者の何名かは当局に捕まり、裁きを受けるためにランカスターへ連行された。島の住人たちは、ケズィックの住民からは嫌われている。
- 島の住人はオランダ人(店主はDeutchman(ドイツ人)とDutchman(オランダ人)を混同してしまっている)らしく、鉱山で働かせるために家族とともに連れて来られた。彼らはケズィックには馴染めておらず、鉱山再開に備えて特権鉱山会社が彼らを養っている。
エドガー:ジェームズ・ニコルソンについては?
GM:(店主)「いい奴だったよ。去年だったか、マネスティにある鉱山で落盤事故か何かで死んじまった」
エドガー:「ニコルソンはどこの人だったんだい?」
GM:(店主)「ケズィックさ。この町の墓地に埋葬された。葬儀後の食事会はこの店で行なわれたんだ」
エドガー:そうなんだ!
エドワード:ヴィカーズ島のドイツ人たちは町とは没交渉だから、ニコルソンが死んだことを知らないのか。
GM:女将のベス・スタンディッシュも「昨年の夏だったかねぇ。ここでちゃんと見送ってやったよ」と夫の発言を裏づけます。
GM:店主が用意したマトンのシチューと焼き立てのパンで食事をとっていると、みすぼらしい身なりをした、浅黒い肌の男が2人、店に入ってきます。
エドワード:ん? パーソンズじゃないよね?
 GM:2人の男は店内を見回して、皆さんに気づくと不快そうな表情を浮かべます。そして皆さんから離れた一番奥のテーブルに着きます。
エドガー:さり気なく男たちの様子、所作をうかがいます。さり気なく。
GM:〈知覚〉ロールをしてください(エドガーが成功)。フードを目深にかぶっているので顔が良く見えないのですが、片方の男の瞳孔が山羊のように横に長いことに気づきます。
エドガー:ええ~っ!?
GM:男たちは30代くらいで、様子からすると山羊目の男の方が主人で、もう1人の方が従者のようです。彼らはテーブルの上に身を乗り出して顔を突き合わせて、何やらコソコソと話し合っています。
エドワード:店の馴染みの客なのかね? それとも一見の客?
エドガー:店主に聞いてみましょう。「あの2人は?」
GM:すると注文を取りに行った女将のベスが、2人組の正体が分かるや怒りを爆発させます。「出てお行き! 前にも言ったはずだよ、ここではあんたらみたいな奴らに出すものはないってね!」
エドワード:お?
GM:すると2人の男はガタンと椅子を鳴らして立ち上がって、山羊目の男の方がベスをギロッと睨みつけてこう言います。「口を閉じろ、この馬鹿女!」すると、ベスは体を痙攣させながら床に倒れ込みます。
エドガー:! 駆け寄ります。
エドワード:突然倒れちゃったってことだよね?
GM:〈呪術〉技能を持っている人は……いませんよね。では女将は突然クタクタと倒れてしまったように見えます。それを見届けると、2人の男は店を出て行こうとします。店主のジェフリーはベスに駆け寄って、「大丈夫か、お前!?」と彼女を抱き起こします。
エドガー:実際に大丈夫そうですか?
GM:白目を剥いて痙攣していますが、息はあります。
エドワード:一応〈応急手当〉をしてみますか。(コロコロ……)成功。
GM:とりあえず、外傷はないようですね。楽な姿勢を取らせるくらいのことはできます。
エドガー:出て行こうとしている男たちの背中に、「お前ら! 女将さんに何かしたのか!?」と声をかけます。
GM:すると男たちは店の戸口で振り返って、皆さんをギロリと睥睨すると、こう言います。「“森の主”が戻ってきたら、俺たちへの扱いを変えろ、さもないと、この場所は石ころ1つ残らないぞ!」そして2人とも暗くなった店の外へと姿を消します。
エドガー:「……森の主?」
エドワード:店主に「奴らは何者なんだ?」と聞きます。
GM:ジェフリーは女性従業員にベスの介抱を任せると、小声でこう答えます。「取り替え子(チェンジリング)なんだ、あいつらは」
エドガー:「取り替え子?」
GM:(店主)「美しき民が本物の子供たちを連れ去って、あいつら――人間(と呼べるかどうか分からないが)――を置いていくらしい。何かがおかしいんだ、何か――山羊みたいな、不自然な感じがするんだ。あんたらは知らんだろうが、あの2人の内の1人はジョン卿(※ケズィックの名士)の末息子ウィリアム・ド・マンカスターなんだ――言っておくが、ほかの兄弟とは似ても似つかないんだぜ。従者の方はプレストン・ラドリーという男だ」
エドガー:取り替え子については、おとぎ話的に知っているものなの?
GM:そうですね、妖精が自分の子供と人間の子供をすり替えて連れ去るという、ごく一般的な知識です。まあ、この時代のイングランドでは“おとぎ話”というよりも“事実”ですけどね。
エドガー:なるほど。さすがイギリス、妖精界との距離が近い。
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