GM:2人組が立ち去ってから10分ほどすると、「いやいや、お待たせしました!」と言ってジャック・パーソンズが店に入ってきます。彼は精錬所の責任者で、エドワードの友人です。皆さんの強張った顔を見て、「何かありましたか?」とたずねます。
エドワード:かいつまんで今あったことを話します。
GM:「おお、それは何という……」とパーソンズは絶句します。店主がシチューや飲みものを持ってくると彼も同席して、精錬所が襲われたときの話をします。「いやぁ、ひどい夜でした。女たちが大合唱して、松明を振りかざし、それから火事が始まりました……。家族を守れたのは幸いでしたよ」
エドガー:「大合唱していた? 何を歌っていたのですか?」
GM:どうやらドイツ語で、シュプレヒコールのように何かを繰り返し言っていたらしいです。パーソンズはドイツ語が分からないので、内容は不明です。
エドワード:ああ、なるほど。
パーソンズは以下のことを語ります。
- 内戦が始まると、この地域の鉱山はすべて閉鎖され、多くの男たち(ドイツ人以外)が戦いに参加した。
- 特権鉱山会社は鉱山再開に備えてドイツ人を雇い続けていたが、鉱山が再開されたという話をパーソンズは聞いていない。もし新しい鉱石が採掘されていれば、精錬を担当するパーソンズが知らないはずがない。
- ドイツ人たちが働いていた鉱山は南のコニストンという町の近郊にあり、そこへは急いでも徒歩で2日はかかるので、鉱夫たちは現地に滞在して労働せねばならなかった。
エドワード:「ということは、今回の襲撃があって、初めて鉱夫たちが鉱山へ行ったことを知ったと?」
GM:(パーソンズ)「そうです。当局に捕まった女たちからの聞き取りで、鉱夫たちが島を出てコニストンへ向かったことを知りました。でも、一体全体、おかしいことがありすぎる話なのです」
エドワード:「ふむ」
エドガー:確認したいのは、鉱夫たちが島を出て南へ行ったのを目撃した人がいるのか? その足取りを知る者がいるのかということです。
GM:それを調べてほしいというのがパーソンズの依頼です。湖に浮かぶヴィカーズ島へは渡し船で行けるので、渡し守のスキッドオー老に話を聞けば、何か分かるかもしれないとのことです。
エドガー:あとは死んだはずのニコルソンの話か。ヴィカーズ島のドイツ人たちはニコルソンの顔を知っているはずだよね? それなら別人と見間違えるはずはないと思うんだけど……。
GM:パーソンズはカトリックのやり方で十字を切った後、「かわいそうに、ジェームズ・ニコルソン老はボローデール・ウェイの向こうのマネスティ鉱脈で落石にあって死にました。ここの教会墓地に埋葬して、この宿で葬儀後の食事会をしたのです。だが、問題は……」ここで言葉を切って、誰かに聞かれていないかを確認して、声をひそめます。「……埋葬したのがジェームズではなかったのだとしたら、一体誰を埋葬したというのでしょうか? 私は棺を運ぶのを手伝いましたが、その中には何か重いものが入っていましたよ」
エドワード:「……どういうこと?」
エドガー:「実際にジェームズ・ニコルソンの遺体を確認した人は?」
GM:(パーソンズ)「正確には言えませんな。マネスティ鉱脈の誰かだと思います。埋葬時に棺は開けられませんでした――事故で体がぐちゃぐちゃになったからだろうと、その時は思っていました。彼の未亡人は遺体を見たかもしれませんが、町を出てペンリスの近くの実家に帰ってしまっています」
エドワード:「つまり、ケズィックには棺に入った状態で運ばれてきて、そのまま中身は確認されずに埋められてしまった、と」
エドガー:現実的に考えると、実はジェームズ・ニコルソンは死んでいなくて、何かの理由で死んだことにされている……あるいはもっと突拍子もないことを言うとすると、死んだ人が生き返った? ……それは墓地を調べれば分かることか。
エドワード:うん。
GM:墓あばきの可能性について話していると、パーソンズは少し青ざめた顔でこう言います。「見てみるのは悪くないと思います。でも牧師には知らせない方が良いでしょう。彼は聖地を掘り返すのを嫌がるでしょうし、見たらすぐに皆さんを異教と呪術で告発するでしょうから」
エドワード:そりゃ、そうだよね(笑)
GM:(ニコルソン)「もしやるなら、夜が良いでしょう。でも、私は関わりません――もし誰かに聞かれても、私は何も知らないことにします。職を失ってからは、評判だけが頼りなんです。それを失うわけにはいかんのですよ」
エドガー:さっそく今夜、墓地へ行ってみましょう。
エドワード:それよりも先に、ヴィカーズ島へ行って鉱夫の奥さんたちに話を聞く方が先じゃない?
エドガー:とりあえず、ジェームズ・ニコルソンの人相を聞いておきましょう。墓の場所は分かりますよね?
GM:パーソンズから外見的な特徴を教えてもらえます。彼の墓は、町の北端にある聖ケンティガン教会の教会墓地にあるそうです。ここで2人は〈洞察〉ロールをしてください(2人とも成功)。この話の最中、死んだはずの同僚(=ニコルソン)がまだ地上を歩いているかもしれないと聞いて、パーソンズはひどく怯えています。

エドガー:では町が寝静まったころに墓地へ行ってみましょう。松明やスコップは購入してあります。これぞ冒険者ですよ!
エドワード:素晴らしい!
GM:教えられたとおり、教会墓地は町の北端にあります。教会自体は小さな四角い塔のある頑丈な建物で、周囲には広大な墓地があります。パーソンズの話によると、教会にはチャールズ・ライルズワース牧師がいるとのことです。
エドガー:牧師?
GM:牧師だからピューリタンですね。パーソンズの助言に従って、牧師に墓を掘り返す許可は取らないですよね? 松明の炎は目立つので、いざとなったらシャッターを閉めて明かりを隠すことのできるランタンを使った方が良いでしょう。ヴァレリィがランタンを所有しているので、照らしてくれます。自慢気にランタンを見せびらかします。
一同:(笑)
GM:掘り返す準備は整っていますので、墓を探しましょう。〈知覚〉ロールです(全員成功)。目当ての墓を見つけました。もし人目につかないように作業を進めるつもりなら、〈隠密〉ロールが必要です。
エドガー:え!? 寝静まった時間に来たのに? 牧師はこんな遅くまで起きているの?
GM:さあ、何とも言えませんね。教会の明かりは消えていますが、とりあえずロールをどうぞ。
エドガー:(コロコロ……)成功!
エドワード:(コロコロ……)失敗です。
GM:ちなみにヴァレリィは成功していました(笑)。突然「バーン!」と教会の扉が勢い良く開いて、両手に拳銃を持った牧師が飛び出してきて発砲します。
エドガー:はぁ!?
エドワード:(笑)
GM:事前に町で調べていれば分かりましたが、現在、ライルズワース師はとある事情により絶賛“偏執狂”中です(笑)。さて、誰に向かって発砲するかな? ランダムに決めて……(コロコロ)……利き手の拳銃でエドガーを、もう1丁の拳銃でヴァレリィを狙います。
エドガー:拳銃に対してはどんなリアクションが取れるんだっけ?
GM:命中しないように祈ることだけです(笑)
エドガー:全力で祈ります(笑)
GM:(コロコロ……)所詮牧師なので、2発とも外しました。牧師は「呪われた人食いカトリック教徒め! 全員地獄に落ちろ!」と言って襲いかかってきます。
偏執狂の牧師との戦闘。行動順:エドガー→牧師→エドワード。
第1戦闘ラウンド
エドガーはスコップを放り出して〈格闘〉技能で牧師に組みつこうとしますが失敗。
牧師は手に持った拳銃を棍棒として使うために握りを変えます(※このゲームには、すべての銃器に棍棒として使った際のデータが用意されています)。
エドワードは鞘からサーベルを抜きました。
第2戦闘ラウンド
エドガーは〈格闘〉に成功し、牧師が〈回避〉に失敗したため、組みついて抑え込みます。
牧師はエドガーの抑え込みを振りほどこうとしますが、失敗。
エドワードはロープで牧師を縛って動きを完全に封じました。
エドワード:このような偏執狂の牧師がいようとは……(笑)
GM:〈知覚〉ロールをしてください(エドガーが成功)。すると、騒ぎを聞きつけてか、墓石の影から食屍鬼(グール)が出現しました。
エドガー:マジ!?
GM:実は流れがあって、牧師が本当に警戒していたのは食屍鬼たちでした。牧師の言っていた「呪われた人食いカトリック教徒」は、実は食屍鬼たちのことだったのです。その辺りのことは町で事前に調べれば分かったかもしれないことですが、まっすぐ墓地に来てしまったので、ここから怒涛の食屍鬼たちとの戦闘となります(笑)
エドワード:(笑)
GM:アンデッドのモンスターではなく、いわゆるクトゥルフ神話的食屍鬼になるのでしょう。犬に似た鼻づらを持つ人型モンスターです。おっと、まずは正気度判定です。
エドワード:成功!
エドガー:失敗!(1D10をロールして3正気度ポイントを喪失)
GM:ヴァレリィも正気度判定は失敗しましたが、「神よ!」ということで喪失は免れました(※ヴァレリィの所属する派閥“ピューリタン”は正気度喪失に対する“精神的防御”を提供します。1D10をロールして1正気度ポイントを失うところでしたが、彼女には8ポイントの精神的防御があるので喪失は0でした)。「大して怖くないね!」と彼女は言っています(笑)
エドガー:マジかよ!?
GM:ザンスカール帝国の例を上げるまでもなく、宗教は強いのです。
一同:確かに(笑)
GM:本当に怖くなるのはここからですよ。3体の食屍鬼との戦闘です。ヴァレリィは簀巻きの牧師を引きずって後方に下がりますので、頑張ってください。
食屍鬼3体との戦闘。行動順:エドガー→エドワード→食屍鬼×3。
第1戦闘ラウンド
エドガーは食屍鬼のいる方へ移動しながらグレート・ソードを抜いて終了。
既に牧師戦でサーベルを抜いていたエドワードは移動して攻撃するものの、食屍鬼は〈回避〉ロールに成功。
食屍鬼は攻撃の際に血も凍るような咆哮を上げて、相手を恐怖させることができます。食屍鬼の〈忍耐力〉と冒険者たちの〈回復力〉で対抗判定をしたところ、食屍鬼が勝利したため、次のラウンドからすべての戦闘技能が半減します。
第2戦闘ラウンド
エドガーは接近戦アクション“一撃必殺”(※リアクション(受け流しや回避)を失う代わりに攻撃に+20%を得て、命中した場合には最大ダメージを与える)で大ダメージを狙いますが、食屍鬼は華麗に回避。
エドワードのサーベル攻撃は失敗。
食屍鬼Bの攻撃がエドワードに命中しましたが、サーベルによって受け流されます。残りの食屍鬼の攻撃は失敗。
第3戦闘ラウンド
エドガーのグレート・ソードが命中して食屍鬼が1体倒れます。
エドワードの攻撃は失敗。
1体の仲間が倒れたのを見ると、残りの2体の食屍鬼たちはその死体を(後で食べてしまうために)引きずって退却していきます。
GM:食屍鬼たちは墓場のどこかにある地下への入口を通って姿を消しました。
エドガー:この様子なら牧師も気が変になるよな。
GM:エドガーが失った正気度ポイントは〈応急手当〉で回復できますよ(※そういうルールです)。
エドワード:私がやりましょう。(コロコロ……)成功、3ポイント回復です。
エドガー:MAXまで回復しました!
GM:さて、やっと墓あばきの時間です。作業には1時間を要します。貴族は力仕事をしないので、穴掘りは下男の仕事ですね。
エドワード:「では、やってくれ」
エドガー:当然です(笑)
GM:ヴァレリィは「じゃ、穴が掘り終わったら呼びに来て」と言って教会の中に入っていって、会衆席の長椅子に横になって仮眠します(笑)
エドガー:「お前は手伝えよ!」(笑)
GM:(ヴァレリィ)「ぐぅぐぅ……zzz」
エドワード:牧師にも教会の中で大人しくしていてもらいましょう。
GM:1時間掘り進めるとスコップの先が何かにガッと当たります。
エドガー:「見つかったよ~!」
エドワード:では行きましょう。
GM:(ヴァレリィ)「う~ん、ムニャムニャ」(眠たげに目をこする)
エドガー:土を払って、全員が来たら棺の蓋を開けます。
GM:蓋を外すと、棺から恐ろしい悪臭が立ち上ってきます。中に人間の姿はありません。ピンク色の膨れ上がった胴体には、あまりに多くの足があり、巨大なコウモリのような翼がマントのように巻きついています。頭があるべき場所には首の切断面があり、外科手術のように正確に切り落とされているのが分かります。空気が死体に当たると、それは目の前で溶けてなくなり、棺の底に小さなピンクの染みが残るだけです。-20%で正気度判定をお願いします。失敗すると1D10正気度ポイントを失います。
エドワード:成功!
エドガー:ダメだ……失敗。3ポイント失います。
GM:ヴァレリィも失敗で3ポイント失うところでしたが、「神よ!(※精神的防御)」ということで平気でした(笑)
エドガー:ムカつく(笑)
エドワード:〈応急手当〉しましょう。(コロコロ……)成功で3ポイント回復です。
エドガー:なかったことに!(笑)
エドワード:(棺の中を見ながら)「……ナニコレ?」
エドガー:少なくともニコルソンの死体ではないってことだよね?
GM:翼を持つナニモノかの首なし死体でしたね。しかも溶けて消えちゃいました。
エドワード:わざわざ何でこんなことをしているんだろう?
エドガー:う~ん。とにかく、ニコルソンが歩き回っているという目撃証言に信憑性が出てきたぞ。
その後、ライルズワース師に(〈影響力〉ロールを使って)自分たちが食屍鬼を撃退したことを納得させた冒険者たちは、キングズ・アームズ亭へと戻ります。明け方までの短い時間、冒険者たちはベッドに横になりますが、教会墓地でのおぞましい真実は彼らの安眠を妨げたことでしょう。
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