シャードリー・ホールの謎


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ムシムシ山の黒い石

 冒険者たちはジョシュアたちが登っていったと思われる踏み分け道を見つけて、ムシムシ山の頂上を目指します。
 頂上近くはらせんを描くように小高くなっており、そのてっぺんには高さ4メートルはあろうかという大きな黒い石が立っています。


エドガー・シャードリー卿GM:黒い石にがっくりとうな垂れたウィリアムが縛りつけられています。そしてウィリアムに正対するように立っているのは、館にあった肖像画から出てきたかのようなエドガー・シャードリー卿です。
エドワード:おお、ついに登場!
GM:シャードリーの背後にはド・マンカスターとラドリーが立って、儀式を見守っています。黒い石から少し下った場所の平らな場所には大きな火が焚かれていて、そこに全裸のジョシュアが胡坐をかいて小さな太鼓をリズミカルに叩いており、その音に混じって、何やら口笛のようなか細い音も聞こえます。その発生源は分かりませんが、どうやらこの場にいる人間たちから発せられるものではないようです。焚き火の周りでは5人の全裸の男女が環を描くように踊っています。それはレベッカ、リゼット、中年の女(エリザベス)、中年の男(ハリー)、ガストンです。
シュブ=ニグラスの黒い仔山羊エドガー:下から見えた人影は彼らなのかな?
GM:エリザベスの下半身は黒い毛に覆われた山羊の足になっています。また、ジョシュアの臀部からは尾が生えていて、太鼓のリズムに合わせてくねくねと動いています。おそらく、この2人は取り替え子なのでしょう。それを見た皆さんは正気度判定です(全員成功で正気度ポイント喪失なし)
エドガー:「この村の人間はシュブ=ニグラスに仕える邪悪な者たちなのだな……」
ジョン:「きっと、代々そのようなモノだったのでしょう」
GM〈知覚〉ロールをしてください(エドガーとジョンが成功)。では2人には、森の端の暗がりに、こんなやつ(※“シュブ=ニグラスの黒い仔山羊”のイラストを見せる)が潜んでいるのに気づきます。口笛のような音を出しているのはコイツです。
一同:う~ん(笑)
GM:エドガーとジョンは-30%で正気度判定をしてください(※エドガーが失敗して10ポイント喪失。重度の狂気レベルを超えるポイントを一度に失ったので“一時的狂気”発症の可能性がありましたが、〈忍耐力〉ロールに成功したので狂気の発症は免れました)
エドガー:前日に負った傷も癒えていないので、これから戦闘だっていうのに、もう心身ともに満身創痍ですよ(笑)
GM:黒い仔山羊に対する正気度判定は気づいた時点で発生するので、エドワードとヴァレリィはご注意ください。

 らせんを描く地形を登りながらの戦闘が始まります。〈運動〉ロールに成功すると段差をよじ登って移動(ショートカット)できるため、それを利用して電撃的に頂上へ迫る作戦は有効となります。
 冒険者たちは身を隠して(〈隠密〉技能を使って)自分たちに有利な位置から戦闘を始めようとしますが、そもそも隠密行動が得意ではないので(ド・マンカスターによって)気づかれてしまいます。シャードリー一味は冒険者たちが牢屋を脱出してくるとは思っていなかったため迎撃態勢は整っていませんが、らせん状に大回りしながら登らなければならない地形に助けられて、それぞれ武器を持って邪魔者に当たるだけの時間を確保できます。

 ちなみに、ジョンはシュブ=ニグラスの崇拝者一党に対する戦いとなりますので、全編にわたって”新たなる使命”派閥の正義アクションとなります。

 実は戦闘が始まってから数ラウンドもすると「段差を挟んで、上下に密集する」状態に陥ってしまったので(笑)、以下戦闘はダイジェストにてお送りいたします。

第1戦闘ラウンド
 焚き火の前で踊っていた全裸の使用人たち(ジョシュア含む)はダガーをその手に持ちます。
 エドワードは自分のサーベルに《刃を鋭くするために》の錬金術呪文をかけます(※命中率+10%、ダメージ+1。なお、このラウンドのエドワードは武器ではなく錬金術を使っているため、行動順が早くなっています)。
 ド・マンカスターとラドリーは「神よ、野ウサギの如き速さを与えたまえ」と唱え、《野ウサギのごとく疾走するために》の呪術を発動します(※等級6の護符のため、移動力が+30メートルされます)。
 エドガーはシャードリーに向かってマスケットを撃ちますが、丘の上に向かって撃つため遮蔽扱いとなり(※命中率-40%)、外れます。
 シャードリーは「神よ、我を守りたまえ!」と唱え、《武器から身を守るために》の呪術を発動します。


GM:(シャードリー)「貴様らごときに、我が野望の邪魔はさせんぞ!」

第2戦闘ラウンド
 ジョンは段差をよじ登ってシャードリーと同じレベルに達します。


ジョン:銃を撃ちます。(コロコロ)命中です。ダメージは10ポイント。
GM:弾丸はカキーンと弾かれます(《武器から身を守るために》の呪文効果により、シャードリーには38ポイントという法外な防御ポイントがあります)
エドガー:10ポイントで!? マジですか?

 戦闘が始まったことを感知して、黒い仔山羊が動き始めます(※エドワードとヴァレリィが正気度判定を強いられますが、両名とも成功)。長いストライドを活かして一気に戦場に到達しますが、エドガーに対する踏みつけ攻撃は失敗。


GM:ジョンは〈知識(クトゥルー神話)〉ロールをしてください。
ジョン:(コロコロ)正義アクション中のおかげで成功。
GM:黒い仔山羊は火に弱いことを知っています。
ジョン:「コイツは火に弱いぞ!」
エドガー:「……で?」(笑)
GM:エドワードに有効な火の錬金術が残っていたら良かったかもしれないですね。あとは、焚き火の火を使えるかどうかでしょうか。
エドガー:そうですね。

第3戦闘ラウンド
 ジョンは黒い仔山羊対策の松明を入手するために、焚き火へと向かいます。
 ド・マンカスターのピストル射撃がジョンに命中して3ポイント、シャードリーのピストル射撃がエドガーに命中して7ポイントのダメージを与えます。

第4戦闘ラウンド
 ド・マンカスターとラドリーは乱戦となってきた戦場から離れて高みの見物モードに入ります(※《野ウサギのごとく疾走するために》の呪文効果で彼らは安全かつ素早い移動が可能になっています)。


エドガー“一撃必殺”(※そのラウンドのリアクションを失うが、攻撃の命中率+20%、ダメージは最大になる)でシャードリーを攻撃します。(コロコロ……)クリティカル! 防御ポイント無視の22ポイント!
GM:おお! 即死はしませんでしたけど(「大怪我表」を参照して)シャードリーは右腕を切断されました!

 段差をよじ登ることはできないと判断したエドワードは地道に目の前の敵を倒していくことにします。エドワードのサーベルはエリザベスに右腕切断の致命傷を負わせました。

第5戦闘ラウンド
 シャードリーの右腕切断により敗色濃厚と見て、ド・マンカスターとラドリーは《空を飛ぶために》の呪術を使って戦場を離脱します。


GM:(ド・マンカスター)「ここまでのようですな、エドガー卿。冒険者ども、借りは次の機会に返すことにするぞ。さらばだ! ワーーーハッハッハ!」2人はムシムシ山の上空で旋回した後、いずこともなく消え去ります。
エドガー:ということは、また出てくるかもしれないのか。
GM:彼らとの決着は先送りですね。アーサー王物語のブルース・サン・ピティ卿のごとく、彼らは超常の逃走手段を豊富に持っているのです(笑)

 前ラウンドで致命傷を負っていたエリザベスは失血により気絶(※マイナーNPCなので失血死扱い)。エドワードはジョシュアに致命傷を負わせます。

第6戦闘ラウンド
 ジョンは松明で黒い仔山羊に4ダメージを与えます。
 シャードリーは大魔導師ですが、肉体的には常人に過ぎないため(※そのために新たな肉体=ウィリアムを必要としていました)、失血により意識を失います(〈回復力〉ロールの失敗)。


GM:シャードリーは自らの血だまりの中に倒れ、失血死します。「おお、我が野望が……シャードリー家の伝統が……」とつぶやいた後、こと切れます。それを見ると生き残っていた一味は「お館様!」と絶望の声を上げた後、散り散りになって逃げていきます。黒い仔山羊も盟約主(=シャードリー)が倒れると、森の端へ退いていって、そのまま樹々の影にスーッと姿を消します。
ジョン:追いかけたいけれど、追いかけるほどの余力はないです(笑)
エドガー:ウィリアムを助けないと!
GM:黒い石に縛られていたウィリアムを拘束から解き放つと、息も絶え絶えですが、生きています。
エドガー:良かった!
エドワード:私は全裸のカルティストを1人(=エリザベス)倒しただけで無傷なので、辺りを警戒しています。
GM:なるほど。エドワードには丘の上からシャードリーの敷地が見下ろせるのですが、館から火の手が上がっているのが分かります。
一同:ああっ!

 冒険者たちはウィリアムに肩を貸しながら、来た道を戻ります。戦闘で負傷した者もいるため、ムシムシ山を下りるのにはかなりの時間を要しました。
 白々と夜が明ける中、冒険者たちは燃え落ちたシャードリー・ホールの前にたどり着きます。書斎にあった貴重な魔道書も、塔にあった望遠鏡も火と煙の中に消えてしまいました(なお、地下牢の中に転がしておいたトムも行方知れずになりました)。
 呆然と立っていると、立ち昇る煙に気づいたリディエートからの早馬がやってきます。苦しい息の下、ウィリアムは早馬の使者にシャードリー・ホールとシャードリー村の壊滅を説明し、後始末の人員手配を依頼します。その依頼を携えて、使者はリディエートへと戻って行きました。


ライン

ウィリアム・カートライトGM:ウィリアムは救われましたが、今回の事件で完全に精神が打ち砕かれてしまいました。ゲーム的に言うと、POWが1になっちゃいました。正気度ポイントも、0ではないものの、かなり低くなっています。再起不能ではありませんが、回復には非常に長い時間を要するでしょう。
エドガー:領地の運営はどうなるの?
GM:村人もいなくなってしまいましたので、彼1人で領地を運営していくのはどう考えても無理です。リディエートに売っちゃったりするのかもしれません。
エドガー:そうなるか……エドワードが後見人になったら良いんじゃないの?(笑)
GM:ウィリアムが弱々しく「ランカスターに大叔母がいるので、申し訳ないが、そこまで連れて行ってくれないか?」と頼みます。
エドワード:「もちろんだよ」
ジョン:「乗りかかった船ですから」

 幸い、ウィリアムの愛馬は火事の被害を受けていなかったため(※厩舎は館とは別棟)、彼をそれに乗せて、冒険者たちはランカスターを目指すことに決めます。リディエートで2晩休息した後、彼らは北へ向かって出発しました。


GM:ランカスターには無事に到着します。ここでウィリアムからは1人につき40シリングの報酬が支払われます。
エドワード:私はそのようなはした金は受け取りませんよ。
GM:さすがです。貴族は変動制の“貸し借り”で結ばれていますからね。(ウィリアム)「世話になった。僕は足が不自由だし、しばらくは安静にして過ごさなくてはならないだろうから、馬は君が使ってくれ」ということで、ウィリアムは葦毛の見事な馬をエドワードに譲ります。
エドワード:おお!
GM:エドワードは乗用馬2頭持ちになりますが、誰かに下賜することも可能です。
エドワード:下賜しましょう!(笑)
GM:そういうことなら「ぜひヴァレリィたんに!」とヴァレリィが立候補します。ローリングサンダー号という名前まで考えてあるそうです(笑)
エドガー:私も立候補しますよ! 馬がもらえたら、ジョンにラバを譲ってあげるよ。

馬 エドガーとヴァレリィはジャンケン(実際にはダイス・ロール)をして、乗用馬はローリングサンダー号としてヴァレリィのものとなりました。なお、ヴァレリィのラバはジョンに下賜されました。


GM:ヴァレリィはローリングサンダー号の鞍上から「ずいぶん低い乗り物に乗っているんだねぇwww」とエドガーを見下してきます(笑)
エドガー:クソー!!(笑)

【素材提供】
 シュブ=ニグラスの黒い仔山羊 illust:脳痛男