『Call of Deep Ones』の初プレイとなるシナリオ「聖地奪還」のプレイ・レポートです。



1.キーパー最初の言い訳

 実はCoD完成時のテストプレイ用として「スキュラの目醒め」というシナリオがありまして、4月末に公開予定だったのですが、諸事情(HPの公開準備、シナリオの数値部分の作成まで手が回らなかった、CoDのデータ整備自体不完全だった、等)により公開が見送られました。
 よって『聖地奪還』などという変化球的シナリオをぶっつけ本番で試す羽目になるわけですが、まぁ気心の知れたプレイヤー諸氏相手なので何とかなるでしょう、と甘い考えでいました。



2.プレイヤー・キャラクター

ルングドゥーレールー、ディープワン、?才、部族戦士 (プレイヤー:ずずず)
「ふんぐるい? ふんぐる、ふんぐる。ふんぐる!? げきょーーー! げきょげきょーーーーーっ!!」
 教団の司祭を務めたディープワン。編集長氏曰く「海軍海兵隊所属ディープワン」。戦闘に特化したキャラクター。プレイヤーのずずず君は私のキーパリング時に戦闘特化型のキャラクターを頻繁に作ってきますが、そろそろそれが無駄であることを悟るべきです。今回のような場合は例外ですが。
得意技:サメに命令する、『悶絶・美人母子』

李 東海(リー・トンハイ)、ディープワンとの混血児、30才、港で働く苦力 (プレイヤー:へむれん)
「うおぉ・・・かぶりつきじゃあ」
 聖なる執行者を務めた混血児キャラクター。技能は戦闘系に偏っていますが、実は教団の参謀的存在。『クトゥルフの呼び声』というゲームを知り尽くしているへむれん氏だけに、安心してネタ振りができます。
得意技:青竜刀、濡れ場に悶々とする

ジム・ダイバー、ディープワンとの混血児、19才、漁師 (プレイヤー:でじこの父)
「来るべき栄光の日々を、我々とともに迎えようではありませんか!」
 精力的に行動をするのだが、大局的に見てみると大した働きはしていないことの多いでじ父君のキャラクター。今回も良く喋った割にはパシリ的な事をしていたような気がしますね。
得意技:ロブスターの魅了、地道なアジテーション

ウォルター・フィッシュ、ディープワンとの混血児、30才、魚市場勤務 (プレイヤー:junnkie)
「ほら、フラニー。猿どもがあんな惨めに(邪笑)」
 常に戦闘局面よりも交渉シーンで力を発揮するjunnkie氏のキャラクター。今回も染み付いた営業スマイルをフル稼動させて斬り込んでいきました。もしかしたら今回一番オイシイところを持って行ったキャラかもしれません。
得意技:混血児界のヨン様(目が離れている)、海辺のソナタ

ロバート・スミス、人間、28才、タクシー運転手 (プレイヤー:若旦那)
「早くディープワンになりたぁーい(切実)」
 APP4という事実に世を儚んでクトゥルフ復活を目指している、笑えるキャラ。一行のまとめ役として遺憾なく力を発揮。ダーク・サイドのキャラクターと割り切ってのプレイは、さすが若旦那氏。実力者です。
得意技:APP4、「いや、ボク人間ですよ?」

ジョン・エリック、人間、26才、警官 (プレイヤー:編集長)
「俺はFBIの捜査官だ。任務の内容は言えない」
 根がローフルなだけに邪悪に徹し切れなかった編集長氏のキャラクター。キーパーが思うほど、プレイヤーにモラルを捨てさせるのは容易な事ではないのかもしれません。この辺、本ヴァリアントの課題です。まぁ、どうしようもないんですが。
得意技:ヴールの印、牢名主



3.プレイ開始

 シュミントン村制圧計画の根幹としてプレイヤー諸氏が考え出した作戦は、
 @漁場を荒らして魚を取れなくし、網元エドワードの信頼を失墜させる
 Aピアの<魚を呼び寄せる>呪文によってペリーにだけ漁獲させ、ペリーとピアの影響力を上げる
 というものでした。漁場荒らしにはルングドゥー(以下略)司祭の使う<サメに命令する>を活用、これを半月ほど継続して行います。同時進行で人間組(ロバート&ジョン)がパブにて「ペリーとピアに従っていれば村は安泰だ」と吹いて回り、二人の影響力の増大を画策します。

 ジムは早々にフローク夫妻と接触し、熱弁を振るった末に協力を取り付けます。その後はドノバン・フロークの口利きで漁船へと乗り込み(ジムの職業はもともと漁師です)、漁師間でペリーの評判が上がるようにと地道な活動を続けました。インスマス面というハンデのため最初は効果を表さなかったジムのアジテーション活動でしたが、上記の漁場荒らし作戦が功を奏するにつれて純朴な漁師の間に小さな不安を植えつけて行く事になります。

 パブでヒステリックに騒ぎ立てていたフランチェスカ(村長家の長女)には李のアシストを受けたウォルターが接近します。数度の接触を経て寝技に持ち込み、懇ろな仲になって村長家切り崩しの足がかりを手に入れます。その後、ウォルターは頻繁にフランチェスカとの逢瀬を重ね、ついにこの言葉を引き出します。
あの女ガブリエラあの娘ジャクリーンを酷い目に遭わせて」
 美人母子を貶める事を約束して、ウォルターはフランチェスカの心と身体をわしづかみです。
 ちなみにウォルターがフランチェスカとお楽しみの間、李は近くに隠れて悶々とします。“目の離れたヨン様”ウォルターとAPP11(混血児の最高値)のフランチェスカの美男美女の寝技に大興奮です

 漁場荒らし作戦を続ける一行でしたが、残念ながら網元派に対する決定的な一撃とはなりません。フランチェスカやフローク夫妻は村民を動かすには明らかに役不足です。
 プレイヤー諸氏は普段のプレイでも慎重に事を運ぶ傾向があり、今回もあまりにも隠密性を重んじるがため、大胆な行動を取ろうとはしませんでした。
 仕方がないのでNPC“赤鱗の”グァオンの口から以下のセリフを伝えます。

「お前ら、やり方がぬるいんじゃないか、ギョ?」

 この一言で一行の大多数がモラルを捨て去りました。

 新作戦が立案されます。グァオンの<忘却の波>の魔術によってエドワードを船とともに海の藻屑にしてしまおうという作戦です。利用価値のあるペリーに死なれては困るので、「漁に出ると事故が起こる」というピアの予言で彼を船に乗せないように工作します。エドワードの乗る船にのみ照準を絞った<忘却の波>によって、エドワードと6人の船員が亡き者にされます。
 続いてエドワードの死去によってショックを受けたペリーを懐柔にかかります。キーパーとしてはもっと早いタイミングでペリーを懐柔するかと思っていたのですが、やはり慎重派揃いです。ピアに「」を使ってペリーを慰めさせ、ピアに依存し始めた彼にエドワードの事故の真相を明かします。驚愕するペリーに畳み掛けるようにルングドゥ(以下略)司祭がその姿を見せ、「お前の祖先が犯した罪を償わせた」といって彼を追い込みます。

 何かを吹っ切った一行は、次の獲物を村長と定めて電撃的に作戦を立案・遂行します。フランチェスカの手引きでジャクリーンを拉致して、村長に脅しを掛けました。愛娘の命には代えられないと、村長は協力を約束。村長家陥落です。

 さて、ロン・アレンなのですが。
 シュミントン村到着初日に一行は海岸でアレンとの初遭遇を済ませます。その際、悪乗りしたキーパーによって「脱糞癖のあるボケ老人」としてアレンはロールプレイされ、その結果ウォルターによって「あのジジイとまともな交渉が出来るとは思えない」と事実上の死刑判決を受けてしまいます。50年前の騒動を知る危険人物として認定されたうんこたれ(アレン)は、哀れエドワードが波に飲まれる前夜に溺死させられました。

 その後、アレン同様50年前の騒動を知っていそうなNPCを亡き者にした一行は、ペリーと村長に煽動させて村民を禁忌の小島へと集めます。「次は大規模な津波が村を襲う」という嘘の予言をピアにさせ、「津波から助かるには祈りを捧げるしかない」と広めたのです。エドワードやアレンの不可解な死と、度重なるピアの予言、村長の呼びかけ等によって33人の村民が漁船を利用して小島へと上陸します。

 エドワードの孫娘ローラを生贄に見定めていた一行は、強硬に抵抗するローラの両親を亡き者にしつつ彼女を生贄の祭壇に縛り付けます。
 盛大な「ふんぐるいコール」の中、儀式は最高潮に達しますが、ここで懐柔したと思われたフランチェスカが騒ぎ始めます。「約束が違う」というのです。確かに、「ガブリエラとジャクリーンを酷い目に遭わせる」という彼女の望みは果たされていません。ここでピンチに陥るかと思いましたが、ルング(以下略)司祭の機転の利いた一言で、フランチェスカは大人しくなります。

「あの二人(ガブリエラ&ジャクリーン)はオレの妻にするから」

 司祭の言葉に大いなる満足を得たフランチェスカは、先頭に立って大ふんぐるいコールを盛り上げていきます。


      \∧_ヘ     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ,,、,、,,, / \〇ノゝ∩ < ダゴン招来、逝くぞゴルァ!!       ,,、,、,,,
    /三√ ゚Д゚) /   \____________  ,,、,、,,,
     /三/| ゚U゚|\      ,,、,、,,,                       ,,、,、,,,
 ,,、,、,,, U (:::::::::::)  ,,、,、,,, \ふんぐるいっ!! ふんぐるいっ!!/
      //三/|三|\     ∧_∧∧_∧ ∧_∧∧_∧∧_∧∧_∧
      ∪  ∪       (    )    (     )   (    )    )
 ,,、,、,,,       ,,、,、,,,  ∧_∧∧_∧∧_∧ ∧_∧∧_∧∧_∧∧_∧
      ,,、,、,,,       (    )    (    )    (    )    (    )


 やがて李の手によってローラが生贄に捧げられ、ダゴンが招来されます。諸々の要素を加えて97%まで跳ね上がった呪文成功率によって、難なく儀式は成功。忌の洞穴から海上へと移動した一行と村民の前にいよいよダゴンが出現です。
 プロレス・ラブのポーズで勢い良く海中から出現したダゴンは一行の働きに満足し、シュミントン村が聖地として復活した事を宣言します。

「お前ら、良く聖地を取り戻したな! オラびっくりしたぞ!!」

 ありがたいダゴン神のお言葉。

「これでクトゥルフ様復活の日にまた一歩近づいたぞ! オラなんだかワクワクしてきたぞ!!」

 なぜか某悟空に似た口調で一行を褒め称えたダゴンは、バタフライで沖へと泳ぎ去りました。



4:事後処理

 ダゴン神の神々しすぎる御姿に一部の村民が“おばかさん”になってしまったものの、聖地は奪還されました。

 村に戻ってきた村長は「妻と娘を返してくれ」と縋ってきましたが、二人とも司祭(忘れているかもしれませんが、ディープワンです)の妻になると告げられ、絶望して手近のテトラポットに頭をぶつけて憤死します。

 美人母子を侍らせてルン(以下略)司祭は教団のトップとして君臨、李がナンバー2、ピアがナンバー3として村を支配します。

 空席となった村長席には、村一番の美女となったフランチェスカの愛人であるウォルターが座ります。ウォルターとフランチェスカはル(以下略)司祭がガブリエラ&ジャクリーンを愛する現場を見て悦に入るという、倒錯した世界に生きていくようです。

 同じく空席となった網元席にはジムが座ります。本来ならペリーが座る場所ですが、目的を果たしたピアに三行半を叩きつけられたペリーは廃人と化してしまったため、若輩ながらもジムが残った2隻の漁船のオーナーに収まります。

 ロバートはタクシードライバーからバスの運転手へと転職しました。最寄の鉄道駅とシュミントン村を結ぶ交通手段として、独占企業状態です。でも、おそらくあまり儲からないでしょう。「早くディープワンにしてくれ。人間オレには時間がない」と生き急いでます。

 ただ一人、ジョンだけは人間の住む町へと帰って行きます。彼は未だに自分の中の人間的な部分を捨てきれずにいたのです。いつか探索者の一人として、シュミントン村の教団と対峙する時が来るのかもしれません。

 やがて、各地から混血児がバスに乗って村へと集い、世界中の海からディープワンの同胞が集まってきます。
 禁忌の小島で毎夜邪宴が執り行われるようになる日も、そう遠くないのかもしれません。

『海辺のソナタ』(ウォルター・フィッシュ 作)

おいで、フランチェスカ。

この村で一番上等なベッドで、
今日も2人で奴らが泣き叫ぶのを見物しよう。

美しい君を貶め続けた人間共が、
僕たちに平伏し、許しを請うのを嘲笑おう。

僕たちの司祭様の落とし子を、
震え戦きながら産み落とすのを祝福しよう。

ここは我等が聖地、
暗く澱んだ深海の故郷から、
偉大なる存在をお迎えするための場所。

おいで、フランチェスカ。

僕たちと君の手で奪い返した海辺のこの村で、
今日も……



5:キーパー最後の言い訳

 シュミントン村制圧に要した時間は4時間です。
 一行のペリー懐柔が予想よりかなり遅かったため、ローラ&ジャクリーンのイベントは起こせませんでした。また、ニナはまったく登場機会がありませんでした。逆にアレンに対しては「トチ狂って網元の所に駆け込まれたら大変だ」と、必要以上に警戒させてしまいました。
 普段「違法行為はしない」プレイに慣れているプレイヤー諸氏がモラルを捨て去るのに、予想以上に時間がかかったようです。
 プレイ後に編集長氏に聞いた所、「儀式の最中に村民の誰かが抵抗行動を取ったら、それを助けるために司祭を銃撃しようと考えていた」そうです。残念ながらCoDは完全に「邪悪を楽しむ」ヴァリアントであるため、そのプレイ姿勢は邪道です。割り切って悪ノリしてもらうように、事前にプレイヤーに言い含めておく必要があるのかもしれません。
 それでも「面白かった」「堪能した」と言ってくれるプレイヤーもいたので、キーパー冥利に尽きます。
 参加していただいた6名のプレイヤー諸氏に感謝です。ありがとうございました。