古の砦


【導入】

 プレイヤー・キャラクター(以下PC)はクトゥルフを崇拝する教団のメンバーです。
 海岸から程近い場所に位置する底州(そこす)村。つい最近あった地震によって海岸線の崖が崩れ、崩落面から謎の遺跡の一部が出現したとの情報が入ります。
 かつてのルルイエの前哨基地の一つであったかもしれないこの遺跡を調査するために教団は一名の調査員を派遣しましたが、連絡が途絶えて行方知れずとなってしまいました。
 PC一行はこの遺跡を調査し、行方不明になった調査員・工藤眞汐を捜索する事となります。



【キーパーへの情報】

 底州村に出現した遺跡はルルイエの一部ではなく、かつてルルイエと覇権を争った「古のもの」の城砦です。城砦には未だに司令官であった古のものが一体眠りに就いています。しかも番人として一体のショゴスが城砦周辺を警護しているのです。
 探索が進むと、PCたちはこれら古代の宿敵と見えることになるでしょう。

 遺跡に関心を持っているのはPCたちだけではありません。深きものとの混血児である雪村鱇輔(後述)が独自の調査によって底州村の遺跡にたどり着いています。雪村は遺跡の建造者が古のものであることに気付いており、遺跡に残された古のものの超テクノロジーを余さず我が物にしようと企んでいます。
 番人のショゴスに手を焼いている雪村は遺跡の上階層へ行くためにPC一行の力を利用するつもりです。実は以前、雪村はPCたちの探している工藤眞汐を囮にしてショゴスの護りを突破しようと試みましたが、あえなく失敗しています。その際、眞汐はショゴスによって殺されてしまいました。
 キーパーは雪村を都合の良い情報源、協力者として利用してください。



【ノンプレイヤー・キャラクター】

雪村 鱇輔 Yukimura Kousuke、男性、43歳、大学の講師(考古学)、深きものとの混血児 雪村鱇輔
STR  8   
CON  11   
SIZ  13   
INT  13   
POW  9
DEX 10   
APP 9   
EDU 14   
SAN  45   
耐久力 12
ダメージ・ボーナス:なし
武器:こぶし 50%、ダメージ 1D3
 ピッケル 35%、ダメージ 1D6
技能:応急手当 45%、クトゥルフ神話 16%、考古学 80%、写真術 30%、信用 33%、人類学 20%、水泳 60%、生物学 20%、地質学 60%、登攀 58%、図書館 45%、値切り 50%、博物学 30%、物理学 20%、ほかの言語(ラテン語) 60%。
所持品:『ネクロノミコン』(ラテン語版)、『二階堂文書』、ランドローバー、探査道具、他。
 雪村鱇輔は考古学を熱心に研究する学徒です。研究の傍ら、大学の講師として教鞭を振るっています。
 二冊の書物との出会いが雪村の人生を変えました。その一冊がラテン語版のネクロノミコンです。ネクロノミコンを読んだ雪村は、あろう事か崇めるべき大クトゥルフ以外の存在に興味を覚えてしまいます。次いでもう一冊の書物である『二階堂文書』の不確かな記述の中に先行種族・古のものに関する真実を見出し、その研究に没頭するようになりました。
 クトゥルフ神を裏切り、いまや古のものの崇拝者となった雪村は、底州村の遺跡を独り占めにして、その知識・技術を我が物にせんと企てています。目的の達成のためにPCたちを利用し、用が済んだら手に入れた超技術の実験台として、PCたちを亡き者にするつもりでいます。


工藤 眞汐 Kudou Mashio、女性、27歳、派遣された調査員、人間 工藤眞汐
 PCたちの仲間であり、先行して底州村に調査に入った女性です。
 大柄でスタイルが良く、美人でもあるため非常に目立ちます。普段は保険の外交員をしていたやり手のキャリアウーマンでした。
 底州村に入った眞汐はビジネスホテルにベースを構えて遺跡の調査を始めました。その過程で既にバンガローに滞在していた雪村と出会い、彼に騙される形で共同調査を行うことになります。
 眞汐が来る前に遺跡の入り口を発見していた雪村は遺跡の番人であるショゴスの見張りを突破できずに手をこまねいていましたので、眞汐を囮にして遺跡第2階層への侵入を図ります。しかしその作戦はあえなく失敗し、雪村は再び敗走し、眞汐はショゴスによって殺されてしまいました。
 遺跡の第1階層の床で、冷たくなった身体で眞汐はPCたちを待ち続けています。



【底州村】

 人口2,500名程度の村です。過疎傾向に頭を悩ませて入るものの、特別うら寂しい村というわけではありません。海辺の村であるためかつては漁業を営む者も多くいましたが、今は漁業のみで生計を立てる者はほとんどいません。
 村の南東に位置する場所には入り江があります(後述)。東(海側)から西(陸地)に向かって100メートルほど海水が入り込んでおり、南岸は砂浜、北岸は50メートル級の絶壁になっています。砂浜から海を挟んで岸壁を見上げることの出来る絶好のロケーションですが、度重なる海難事故から忌み嫌われ、地元の人間は入り江には近づきません。

 寂れたビジネスホテルがあり、行方不明になるまで調査員の工藤眞汐はここに逗留していました。着替え等の入ったバッグが残されており、フロントでそれを預かっています。ホテル側はバッグの処分に困っており、簡単な交渉(<言いくるめ><説得>)でそれを引き渡してくれます。眞汐は携行品を持って出たらしく、着替えや洗面道具以外に目ぼしい品は残されていません。
 ホテルの従業員によると、南東の入り江の方向へ向かう眞汐の姿を良く見かけたとの事です。ホテルの従業員は入り江の曰くについては語りません。

 悪名高い入り江に関わりあいたくない村人たちは、入り江近くに出現した遺跡についてもあまり話したがりません。そのため、専門的な調査機関(大学の考古学研究室や公的な団体等)にも遺跡出現の報告をしていません。独自の情報網で遺跡の出現をキャッチしたPC一行と、遺跡出現以前からこの地に注目していた雪村鱇輔以外、遺跡の調査に訪れた者はいません。



【入り江】

入り江 底州村から海岸へ向かう途中、一行は道すがら出会った老婆から「人喰い入り江」についての警告を受けます。

 老婆:「あんたら、海岸へ行くのかい? それなら入り江には近付かない事だよ。なぜかって? あの入り江が人を喰うからさ。入り江に流れ込む海流が悪いのか、何年かに一度波にさらわれる者がおる。そして遺体は上がらないのさ。
 (バンガローの屋根を指差して)ホラ、見えるだろう? 入り江の見えるあの場所に別荘を建てた金持ちがいたが、一家揃って人喰い入り江に喰われちまったよ」

 南側のルートから入り江に近づけば緩やかな坂を下って入り江の南岸の砂浜に出られます。砂浜から20メートルほど離れた高台にバンガロー風の別荘が建っています(入り江に来る途中で出会った老婆が指差していたのはこの建物です)。バンガローは若干荒れた様子が見られますが、手入れをすればすぐにでも利用できそうです。バンガローの玄関前には一台のランドローバーが停車しており、最近誰かに使われている様子が伺えます。ランドローバーの持ち主は雪村鱇輔です。
 もしプレイヤーがバンガローを調べた場合、ほとんどの部屋は使われていないことが分かります。めぼしいものはバンガローの一番広い部屋にある調査機材と食料くらいです。工藤眞汐につながる手がかりは、ここにはありません。夕方までバンガローで待っていれば、雪村鱇輔が調査から帰ってきます。

 北側のルートから入り江に近づけば、林を抜けて、切り立った崖の突端にたどり着きます。50メートルはあろうかという絶壁から下を見下ろせば、入り江の全景を臨むことが出来ます。<ナビゲート><物理学><地質学>などに成功すれば、入り江に不自然な海流(離岸流等)が生じる可能性は限りなく少ないことが分かります。この静かな入り江で連続して海難事故が起こるのはどうにも不自然です。
 突端に生える木々に隠されるようにして円錐形の岩があります。これは露出した遺跡の天頂部です(後述)。

 南岸砂浜から見上げても、北岸の崖上から見下ろしても、崖の斜面にはつい最近崩れ落ちたような跡があることが分かります。斜面から滑らかな曲面(円錐形の一部)が顔を覗かせているのです。この曲面を構成の一部とするのが件の遺跡です。
 北岸崖上の林の中には円錐状遺跡の頂点に当たる部分が地表に露出しており、奇石として村人にも知られています。

 北岸の崖に隠された遺跡の極僅かな隙間から、ショゴスが入り江に出てくることがあります。遺跡の主である古のものに催眠支配されているこのショゴスは退屈を紛らわすために主の目を盗んでは入り江に侵入し、不注意な人間を襲っているのです。与えられた番人の使命に支障を来たさないようにするため、ショゴスは襲った人間の痕跡を用心深く消し去ります。僅かに発見される遺留品から、人間たちはいなくなった者が波にさらわれたのだと思い込むようになったのです。この忌まわしき悪戯が、「人喰い入り江」の真相です。海底を注意深く(<目星>などを使って)探索すれば、小魚程度しか通れないような亀裂を見つけられるかもしれません。この程度の亀裂でも、虹色の軟泥ショゴスにしてみれば立派な出入り口となるのです。



【遺跡】

 PC一行は当然入り江から見える遺跡の入り口を探そうとするでしょう。入り口の発見と同時に第2の黒幕である雪村鱇輔教授が登場します。

 遺跡の入り口は北岸絶壁の入り江とは反対側の斜面に見つかります(<目星><隠す>のロールで発見できます)。引き潮の時にアーチ型の入り口が半分くらい海底から露出するのです。引き潮を見計らった上に腰まで海水に浸かれば、遺跡の内部へと入っていくことが出来ます。

 入り口を見つけて、さぁ遺跡探索を始めようか、という時になって、頭上から声がかけられます。

雪村:「君たち、そこで何をしているんだ?…おや、同胞か」

 絶壁にへばりついたような僅かばかりの平坦な岩の上から、PCたちに声をかけてきたのは雪村鱇輔です。
 これから遺跡内に入ると満潮によって中に閉じ込められること、中に入るにはそれなりの装備が必要なこと、近くにバンガローを借りていてそこに十分な装備があるので、それらを持って明日遺跡内部の探索をしようなどと言って、雪村はPCの遺跡侵入を止めます。雪村はPCたちの目的を探って、自分の都合の良いように利用してやるつもりで自分の基地に招待します。
 もしPC一行が雪村の制止を振り切って遺跡内に入るようであれば、雪村は慌てて同行します。その場合、次項を飛ばして【遺跡の内部】へと進んでください。



【雪村鱇輔】

 雪村は勤務する大学で見つけた古文書『二階堂文書』に基づいた調査のためにこの地を訪れています。

『二階堂文書』 二階堂 定篤 著
 『二階堂文書』はアマチュア学者・二階堂定篤が行った底州村周辺の独自調査の記録と考察が書かれた自費出版本です。いわゆる珍書・奇書の類であり、学会からは一笑に付されています。
 『二階堂文書』の中で定篤は、底州村の海底には古代遺跡があり、その古代遺跡の地表に現れた一部分が崖上の林の中に鎮座する奇石であると断じ、この地には先住民族が住んでいたのだと主張しています。『二階堂文書』の記述の大半は間違いですが、極僅かに真実が含まれています。円錐遺跡は古代遺跡の一部ではなく、単独で機能していた「古のものの砦」なのです。そして定篤が語った先住民族とは、すなわち古のものに他なりません。
 『二階堂文書』は日本語で書かれています。難解な言い回しや支離滅裂な箇所があるので、内容を理解するには<母国語>(日本語)ロールが必要です(特に種族が深きもののPCはこの書物が「人間の言葉」で書かれている事に注意が必要です)。読破したキャラクターは<オカルト>の成功率が1%増えます。

 雪村は二階堂の奇天烈な学説に興味を持ち、この珍書の成立経緯を独自に研究しているのだと語ります。

 雪村は入り江南岸のバンガローを借りて活動の拠点としています。バンガローには懐中電灯等の実地調査に必要な装備が一式揃っています。底州村の不動産屋を当たれば、雪村がバンガローを賃貸していることが分かります。
 雪村に眞汐のことを尋ねても、彼は知らないと言って首を横に振ります。眞汐と知り合った雪村は彼女に遺跡の共同探索を持ちかけてショゴスの警備をかいくぐろうと試みましたが、失敗した挙句に眞汐を死なせてしまっています。
 PCが眞汐についてたずねた場合、雪村は彼女の死亡経緯を隠し通そうとするでしょう。眞汐が教団からの調査員であることを知っている雪村は、いつか仲間が眞汐の安否の確認に来るであろうことを予想しています。そのため<心理学>等で雪村の嘘を見抜こうとする場合、使用するロールの成功率は1/3になります(こうした質問を受けることについての心構えができているためです)。また、もしロールに成功したとしても、雪村は「この発見の成果を独り占めにしたくて眞汐とは協力しなかったので、彼女の行方は知らない」と言ってしらを切ります。

 雪村は遺跡の内部に入ったことがありますが、遺跡の第1階層の番人であるショゴスに行く手を阻まれ、奥に進めていないことを明かします。
 また、入り江北岸崖上の林の中に遺跡の一部と思える奇石があることをPCに明かします。PCが奇石を見たいと言い出せば、雪村自身が案内してくれます。雪村は自慢げに奇石の調査結果についてPCに話してくれることでしょう。
 奇石は直径、高さともに150cmほどの円錐形で、黒い石でできています。<地質学>に成功したPCはこの奇石が超古代に作られたものであることを見抜けます。雪村は自分が行った年代測定によって、石は少なくとも2億年前のものであることが判明していると自慢げに語ります。石の表面は苔や土に覆われていますが、それらを削り落とせば滑らかな人工の表面に刻まれた星型の装飾および細かく穿たれた無数の穴が現れます。<クトゥルフ神話>に成功すれば、これらが「古のもの」の表現様式や文字であることが分かります。

 雪村はバンガローにあった装備をPCに貸し与え、一緒に遺跡に入って欲しいと依頼してきます。PCが同行を断っても、雪村はこっそりとPCの後をつけて遺跡に侵入します(雪村は尾行が得意ではないので、すぐにPCに気付かれるでしょう)。



【遺跡の内部】

 円錐形の遺跡の内部は3層に分かれており、上に行くほど面積が狭くなっています。共通の特徴として、遺跡の内壁は見事な浮き彫りの彫刻が施されています。浮き彫りは古のものの生活や対クトゥルフ戦の様子を描いたものです。浮き彫りには放射状の意匠――星型が目立って用いられています。これを見れば誰もがこの遺跡の主が古のものであることに気付きます。彫刻の様子を調査したPCがアイデアロールに成功すると、この遺跡が戦闘に関するもの、城砦のようなものであることが分かります。


第1階層

遺跡の内部 第1階層は直径30メートルほどの円形をしています。この階層は海水に沈んでいる場所が多く、闇に包まれていますので、十分な灯りを用意していなかった場合、ショゴス(後述)の不意打ちを受けるかもしれません。

1-1:遺跡の入り口です。楕円形の通路が奥へと続いています。

1-2:遺跡の外壁が壊れ、浸入した海水に水没してしまっている区域です。第2階層へと続く昇りスロープへたどり着くためにはこの海水区域を縦断しなくてはなりませんが、ここには番人のショゴスが潜んでいます。

1-3:上階・第2階層へ続く昇りスロープです。

1-4:ここには骨片がうず高く積まれています。骨片はこれまでにショゴスに殺された犠牲者たちのものです。骨片には服や鞄の切れ端、片方だけのビーチサンダルなどが混じっています。骨山の天辺には一番新しい犠牲者、つまり工藤眞汐のひしゃげた遺体が横たわっています(SANチェック0/1D6)

1-5:第2階層へのスロープを昇るためには海水の浸水した区域を通らなくてはなりませんが、ここには一体のショゴスが潜んでいます。このショゴスこそが海水の浸水口から忍び出ては戯れに人を襲う「人喰い入り江」の正体です。
 ショゴスは主の許可無く第2階層へ昇ろうとする者全てを攻撃するように命令を受けています。「テケリ・リ! テケリ・リ!」と笛音のような鳴き声を上げるこのショゴスを何とかしない限り、先へ進むことは出来ません。ショゴスはスロープを昇る者を攻撃しません。冷笑的で不実な僕であるショゴスは、命じられた「第1階層の監視」以上の仕事をしようとはしないためです。当然、第2階層まで追って来ることもありません。

ショゴス、城砦の番人、人喰い入り江
  STR  58   CON  49   SIZ  79   INT  10   POW  12
DEX 3 移動 10   耐久力 64  
 ダメージボーナス:+8D6
 武器:押しつぶし 70%、ダメージ 8D6
 装甲:なし。ただし @火と電気の攻撃はダメージ1/2。A物理的な攻撃は1ポイントしかダメージを与えない。B毎ラウンド2ポイントの耐久力を再生。
 正気度喪失:1D6/1D20。

※誰かを囮にしてショゴスの気を引き、その間に他の者がスロープへと走り寄ることは可能ですが、囮は最低でも2人以上必要です。囮が1人以下になると、ショゴスはスロープに駆け寄る者の前に立ちはだかって攻撃を加えます。海水に濡れ、海藻に覆われた滑りやすい昇りスロープを駆け上がるためには<登攀>ロールが必要であることにしても良いでしょう。<登攀>に失敗した場合そのPCは足を滑らせたことになり、囮たちは更に1ラウンド絶望的な戦いを強いられることになります。
 呪文≪クトゥルフのわしづかみ≫によってショゴスの動きを封じることは非常に有効な手段です。キーパーはプレイヤーがキャラクターを作る際、任意のキャラクターにこの呪文を与えても良いでしょう。その他にも有効な呪文・魔術の品があるかもしれません。
 困難ではありますが、戦闘によってショゴスを排除することも手段の一つです。


第2階層

 第2階層は直径20メートルほどの円形で、床の中央に大きな水晶の柱が立っています。このフロアは水晶の放つぼんやりとした光によって照らされているため、照明が無くても活動することが可能です。水晶以外、このフロアに目ぼしい物はありません。

2-1:高さ150cmほどの水晶の柱塊です。数百kgの重さがあるでしょう。この水晶は古のものが開発した装置で、20ポイントのマジックポイントが蓄えられています。水晶に蓄えられたマジックポイントを用いて、古のものたちはショゴスを精神支配していました。
 水晶は持って行くことは出来ませんが、消耗したマジックポイントを20ポイント分回復させることができます。複数のキャラクターが水晶の恩恵を受けられますが、回復するマジックポイントの合計は20ポイントまでです。
 水晶の使用法は<クトゥルフ神話>に成功すれば分かります。形は鉱物ですがこれは高度な機械文明を築いた古のものの装置でもあるので、<機械修理>の1/2ロールでも使用法が分かる事にしても良いでしょう。キーパーが望むなら、水晶の使用法を誰も解明できなかった場合でも、雪村が『ネクロノミコン』に似た記述があったことを思い出した事にしてPCに回復の恩恵を与えても良いでしょう(第3階層にいる古のものは無傷のPCが立ち向かうにしても危険すぎる相手だからです)。

2-2:上階・第3階層へ続く昇りスロープです。


第3階層

 第3階層の直径12メートルほどの円形をした床の上には所狭しと金属製、鉱石製を問わず用途不明の装置がズラリと並べられています。フロアは照明によって程よい明るさが保たれています。フロアの真ん中で待ち受けているものが、PCたちの超古代の仇敵であるこの砦の眠れる司令官・古のものです。

3-1:古のものの超技術の結晶である装置群です。装置の用途はさまざまであり、中には対クトゥルフの星の落とし子用に開発された古代兵器もあるかもしれません。<電子工学>に成功すれば、これらの装置が現代の人間には理解できないテクノロジーの産物であるために使いこなせそうにないことが分かります。
 多様な超技術の装置を見て、雪村は感嘆の呟きをもらします。

 雪村:「凄い…。このテクノロジーすべてが、今まさに我が手の内に入ろうとしている」

3-2:最上階へ続く昇りスロープです。最も近い脱出口でもあります。

3-3:装置に囲まれるようにしてこのフロアの中心にいるのは古のものです。永劫の時を仮眠状態で過ごしてきた砦の主は、PC一行の侵入を感知すると触角を動かして仮眠から急速に目覚めます。
 雪村は活動を始めた古のものに走り寄ると、PC一行に対峙するように向き直ります。雪村はかねてからの計画通り古のものと手を組んでそのテクノロジーを我が物にしようとPCを裏切ります。

 雪村:「さあ、目覚めたまえ造物主よ! 時を経て再び見えた宿敵を皆殺しにするがいい!!」

 笛の吹奏音にも似た雄叫びを上げながらゆっくりと翼を広げた古のものは、円錐形をした第3階層を飛び回りながらPCたちを攻撃してきます。雪村もPCの敵となりますが、古のものは雪村を味方だとは思っていないため、まったく無差別に自分以外の存在を攻撃します。

古のもの、覚醒した城砦の司令官、太古の仇敵
  STR  36   CON  22   SIZ  34   INT  14   POW  13
DEX 16 移動 8/10(飛行)   耐久力 28  
 ダメージボーナス:+3D6
 武器:触肢 40%、ダメージ 締め付けによりdbの1/2
 装甲:7ポイントの皮膚
 正気度喪失:0/1D6。

 古のものが倒れると第1階層の番人であったショゴスが制御を失って暴走を開始し、手当たり次第に遺跡を破壊し始めます。遺跡の崩壊から逃れるため、PC一行には決断が迫られます。最上階に続くスロープを上がると一方通行の扉(ワンウェイ・ドア)があり、入り江北岸崖上の奇石から地表へと出ることが出来ます。地表へ出ても遺跡もろとも崖は崩れ去るので、早急にこの場を離れる必要があるでしょう。スリリングでシビアな状況を演出したいキーパーは、崩落の振動で揺れるスロープを昇るために<登攀>ロールを要求しても構いません。
 遺跡が崩れるまでの時間は各キーパーが自由に決めてください。この時まで雪村が生存していた場合、彼は超技術の装置への未練が断ち切れずにこの場に残り、崩落する遺跡と運命をともにします。

 雪村:「このテクノロジーは全て私のものだぁ! あはははぁ、あはは…」

 戦闘によって第1階層のショゴスを駆逐していた場合、遺跡の崩壊は発生しません。PC一行は超技術の宝庫である古のものの城砦をそっくり手中にした事になります。

 もしも古のものとの戦闘に敗れて遺跡から逃走する場合、(生き残っていれば雪村を始末した後)古のものは第2階層までPCたちを追跡してきます。飛行する古のものを振り切るのは大変困難なことです。第1階層への降りスロープへたどり着くまでに、更なる犠牲者が出ることでしょう。
 古のものは第1階層までは追って来ませんが、忘れてはなりません。戦闘によって駆逐されていない限り、そこにはショゴスが待ち構えています。



【結末】

 崖とともに遺跡は崩れ去り、古のものの極東前線基地は海の藻屑と消えます。犠牲はありましたが、宿敵の拠点を一つ壊滅させたことは功績として称えられるでしょう。
 生き残ったPCには1D8ポイントの正気度が与えられます。
 ショゴスを倒し、遺跡をそっくり手に入れることが出来た場合は1D10ポイントの正気度ポイントが上記とは別に与えられます。



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