神話的ガソリン


パープル

キーパー:翌日からパープルの捜査開始です。資料を渡されます。

紫垣良介(しがき・りょうすけ)
 36歳。FOST常勤の地質学者。独身。紫垣は実際にボーリング現場へ行ったり、サンプルの調査に従事している。住所は元白凰区の山近くで、そこで異常な地質学の研究を専門に扱う定期刊行物『岩』を発行している。愛車は中古のビュイック。独自にチューニングを施しているようだ。

キーパー:彼のビュイックは二件の死亡ひき逃げ事故を起こしています。
二人:え!?
キーパー:白昼に、横断歩道を渡っている歩行者が、猛スピードで撥ねられたそうです。事故の目撃者によると、過失で当ててしまったというよりも、明らかに速度を上げて、ハンドルを切って突っ込んできたそうなので、彼は殺人の容疑で指名手配されています。ブレーキ痕はまったくついていませんでした。現場で回収された破損したバンパーの破片などから、間違いなくこれが紫垣の車のものであるということが分かっています。なお、事件の担当は流石刑事です。
二人:ダメだろ(笑)
キーパー:彼は元白凰区で死亡ひき逃げ事件を起こして、広域手配されています。
チェ広域手配されているということは検問に引っかかるはずなので、それに引っかかっていないということはまだ元白凰区内に潜んでいるってことだよね。
西崎うん。
キーパー:また、これは報道されていない事実ですが、このガソリンの検査試験に当たって、紫垣は中城知樹という名前の、個人的な知人を外部協力者として申請しています。車のチューニングをしてくれている人物のようですね。「中城モータース」という工場の経営者で、燃料テストの助手として紫垣が個人的に雇っていた形態です。必要経費の一部として、FOSTも許可を出しています。
チェふ〜む。FOSTは中城さんから話を聞いたの?
キーパー:(瀬武課長)「いや、まだそこに手が回せていないので、そこも頼みたい。まずは、この中城知樹という人物を訪ねてみてはどうだろうか? おそらく警察は中城氏の事をまだ掴んでいないと思われるので、先回りできるかもしれない」
西崎「そうですね」
チェそういう経緯ならFOSTが関わっていることも中城さんは知っていそうだから、話は簡単で良いね。



車【中城モータース】
キーパー:中城モータースは市街地から少しはなれた場所の鉄工所跡地を居抜きで使って営業しています。あなたたちが車で敷地へ入っていくと、三十歳代の男性が「お客さん?」と言いながら出てきますよ。
チェ「実は紫垣さんについて聞きたいことがあるのですが」
キーパー:(中城)「え!? ……いや、最近彼とは会っていないよ」
チェ「我々はFOSTから来た者です。彼からどのようなチューニングの依頼を受けていたか、お聞かせ願いたいのですが」
キーパー:(中城)「なるほど、FOSTから。分かりました、ぜひとも聞いてもらいたい話があります。私のほうから協力をお願いしたいほどです」彼はそう言って、皆さんを工場内にある応接まで案内します。
西崎例のガソリンの悪臭はどうですか?
キーパー:ロールをするまでもなく、悪臭がします。
チェ「もしかして、ガソリンを預かっていますか?」
キーパー:(中城)「実は……」と言うと、「火気厳禁」という赤いラベルが貼られたコンクリートブロックで作られた貯蔵庫の方を指差します。オレンジよりも悪臭が強い印象を受けます。
二人:ああ〜。
キーパー:中城は「あのガソリンは何かオカシイ……」という事を悟っているのか、近づかないようにしているそうです。
チェ「この臭いはかなり問題だと思われますので、ガソリンはFOSTで回収しますので」
キーパー:(中城)「そうしていただけると、ありがたい」
チェ「では、彼の車に関してお聞かせ願えますか?」
キーパー:紫垣と中城はビュイックの改造を通じて知り合いとなりました。ある日、彼はガソリンを大量に持ってきました。紫垣は中城に「試作のガソリン」であると説明して、彼にガソリンの検査の手伝いをしてほしいと頼んだそうです。最初は運転を紫垣が、燃費とかエンジンへの影響とかの数値的な計測を中城がしていました。しかし日が経つにつれて、紫垣の様子がおかしくなってきました。ますます自分の自動車にのめりこんで行って、毎日車を持ってくると、それをいじくって、調整して、中城に最高に細かなレベルまでエンジンをチェックさせて、何時間も燃料の効果に注視することに時間を費やしました。紫垣は中城がチェックする以外の項目に目を向けて、「凄い効果だ」と呟いていたそうです。
チェ「? それは具体的にどんな点に?」
キーパー:(中城)「それは彼にしか分かりません。私は恐ろしい。このガソリンと排気ガスの放つ悪臭は耐え難い。このガソリンのせいなのかは分かりませんが、彼のビュイックのエンジンは急速に磨耗し始めていました。ほとんど溶けているかのように見える部品もあったし、逆に膨張しているように見える部品もあった」
西崎ふ〜む。
キーパー:(中城)「停まっている時でも完全には冷却されないかのように、ボンネットを開けると悪臭のする蒸気が上がった。まるで新しく使い始めた燃料が原因で、ビュイック自体に変化が生じているかのようだった。ただ、燃費は素晴らしい」
西崎うむ。リッター60キロ以上でしたっけ?
キーパー:車のチェック時に、当然、中城はビュイックの走行メーターもチェックしていたそうです。その記録によると、毎日ものすごいキロ数を走っていることが分かりました。ここ数日は紫垣はここへ姿を見せていませんが、最後にここに立ち寄った時の走行距離から換算すると、ほぼ24時間運転しっぱなしだったことが判明しています。
二人:なるほど。ヤバイな。
キーパー:顔を見合わせている皆さんを見て、中城は「あれを見てくれ」と工場の作業スペースを指差します。ガレージの床に紫垣の車が残していった油層があります――不潔で暗緑色をした悪臭を放つネバネバは、何度洗浄しても落ちる様子がありません。それはまるで大きく開いた歯のない口が悪臭を渦巻かせているかのようです。
二人:……。
キーパー:(中城)「これは関係があるかは分からないのだが、彼がここに最後に立ち寄った時、エンジンをチェックしながら、ガレージ内でも聞けるように車載ラジオを調整していたんだ。その時紫垣はバスルームでシャワーを浴びていた。しかし、ラジオで拾えたのは甲高い奇妙な雑音だけだった。聞いていると、一瞬、雑音の後ろでブツブツというぼんやりとした声――不気味で恐ろしい小声――が、繰り返し何度も短いフレーズを繰り返しているかのように聞こえた。すると紫垣が猛然と走ってきて、ラジオを消すと、私を凄い目つきで睨みつけた。まるで殺人犯のようだった――そして彼は二度とラジオに触るなと言ったんだ。しばらくすると落ち着いて、壊れているから使えないんだと言ったよ……しかしその前に私には分かった、激昂と沈着の狭間で――これは嘘じゃないんだが――彼は恐怖していた。完全なる恐怖を感じていたんだ」
二人:……。
キーパー:(中城)「ラジオが切られる直前に、雑音に混じる声の一つが、繰り返し繰り返しこういっているのが聞こえた。“緑ヶ峠”と」
西崎緑ヶ峠?
キーパー:近くにある峠の事です。
チェ今でもずっと峠を走っているのかな? とりあえず手掛かりは手に入ったので、FOSTに連絡して残ったガソリンを回収してもらって、我々は紫垣さんの身柄を確保しましょう。
西崎そこまでやるのが我らの仕事ですからな。

チェさて、どうやって捕まえようか?
西崎う〜ん、どうしようかねぇ。我らはペーパードライバー(※<自動車運転>25%)なので、カーチェイスはどうかと……。紫垣が死亡事故を起こしたのは峠の道なの?
キーパー:そうですね。緑ヶ峠の道沿いであると考えてください。
チェ横断歩道を行ったり来たりして囮になるっていう手もあるけど……。
キーパー:下手をすると三件目の死亡ひき逃げ事件発生ということになりますね。
西崎(笑)
チェ公道だからバリケードを築いて待ち伏せるっていうわけにもいかないしなぁ。
西崎まずは峠をひとっ走りして、いるかどうかを確認してみましょうか。トイレ休憩くらいはしているかもしれないし。
キーパー:(……鋭い!)
チェじゃあ、それで行ってみますか。
キーパー:ではFOSTから借りたミラで峠を走ってみるということで。ブブーン。では<幸運>ロールをしてください。
チェ16、成功。超幸運。
西崎66、成功。
キーパー:ではその日の夕方くらいまで峠を走っていると、路肩にビュイックが停まっていて、それに乗り込もうとする人影を見つけます。ビュイックなんて珍しい車だから見間違えようもありません。紫垣の車です。ちょうど発車するところだったらしく、ギュギュギュギュギュッとタイヤを鳴らして、猛スピードであなたたちの車とすれ違い、遠ざかって行きます。
チェくっ、Uターンしないと追えないか。何のために車から降りていたんだろう?
キーパー:紫垣が車を停めていた場所には、公衆トイレがあります。
西崎お!
チェトイレには行くのか。トイレで張っているか? トイレは何ヶ所ある?
キーパー:五ヶ所くらいあります。
チェそうか……。でもトイレで張るしかないな。トイレ休憩で降りてきた所を……。
西崎確保、と。カーチェイスができない以上、それしかないですな。
キーパー:で、トイレ休憩を待ち伏せるとして、どうするんですか?
チェ車から降りるのを待つ。車から降りていれば、負けるはずはない(※<マーシャルアーツ>80%)。車から降りてきた所を押さえ込んでしまえば、何の問題もないはず。
キーパー:ははぁ、なるほど。まぁ、しょせん彼は科学者ですからな。



車【公衆トイレ前での攻防】
キーパー:翌日になります。彼がどのトイレを利用するかは分からないので、<幸運>ロールを振ってください。成功すれば、タイミングよく居合わせた事にしましょう。
二人:成功。
キーパー:では何回か空振りした後の夕方頃、皆さんが待ち伏せていたトイレの脇にビュイックが停まりました。
二人:来た!
キーパー:エンジンをかけたまま車から降りると、紫垣が降りてきてトイレに入って行きます。
千重本満チェ用を足している時は人間は無防備になりますからな。そこを<組み付き>ます。西崎さんはエンジンを切っちゃってください。
西崎分かりました。
キーパー:(紫垣の<目星>は43%……コロコロ……成功)彼はトイレに入っていきました。
チェトイレの出入り口は一ヶ所だよね? 紫垣の後からトイレに入って行きます。
キーパー:紫垣は個室の方へ入っていったみたいです。
チェ待ちましょう。
キーパー:ガチャッと扉が開いて人が出てきました。間違いありません、紫垣良介です。
チェ「……紫垣さんですね?」
キーパー:(紫垣)「……あ゛?」
チェ「……会社に戻ってもらえませんかねぇ?」
キーパー:(紫垣)「うるせぇ!」 チャキッ(※←銃を構える仕草)バン!
西崎え!?
チェマジ!?
キーパー:紫垣は隠し持っていた銃をぶっ放します。
チェとっさに<回避>します。成功。
キーパー:了解です。一発目はトイレの手洗い場の鏡に当たって、それを粉々に砕きました。西崎は銃声が聞こえたか<聞き耳>を。
西崎(コロコロ)失敗。車のエンジン音で聞こえませんでした。
キーパー:万理村君も(コロコロ)失敗。「これで紫垣も袋のネズミだぜ〜!」と独り言を大きな声で言っていました。
二人:(笑)
キーパー:紫垣は銃口を向けたまま「どけ!」と言います。
チェどきます。
キーパー:西崎さんと万理村君がトイレから誰かが出てきたと思って目を向けると、チェが出てきたのではなく、銃を手にした紫垣が出てきました。
チェ隙をうかがって、何とか紫垣に組みつこうとします。
キーパー:拳銃持った相手に勇気あるな(笑)。了解です。しかし紫垣の車のラジオから大音響で、このような声が飛んできます。「隙を見せるな! 狙われているぞ!!」
二人:はあっ!?
キーパー:その声を聞いて、紫垣は油断なく目を走らせ、銃の狙いを定めます。
西崎私は拳銃を見たら相手を刺激しないように乗ってきたミラの陰に隠れます。

 千重本は紫垣の隙を突いて<組み付き>を試みますが、ロールに失敗。逆上した紫垣の拳銃の弾丸が三発命中しますが(一発は<回避>しました)、ダメージが2、1、1という悪運の良さ(笑)。かすり傷で済みます。紫垣は西崎に向かっても拳銃を撃ちますが、ここは西崎の<回避>が冴えて命中せず。天の配剤か、紫垣の切り札である拳銃は大きな効果を上げることなくその弾倉を空にしました。
 接近戦になればアスリート特化した千重本の独壇場です。紫垣は千重本の巨体に押さえつけられ、動きを封じられてしまいました。


キーパー:(紫垣)「放せ! 放しやがれ!」
チェど、どうしよう(笑)
西崎とりあえずFOSTに連絡をしましょう。あと、紫垣の車のキーを抜いてエンジンを止めます。
キーパー:エンジンを止めてもラジオは「戦え! 抵抗するんだ!」と言い続けています。
西崎キーを抜いたのに!?
チェマジ!?
キーパー:ということで正気度ロールを(万理村を含め、三人とも成功して喪失なし)。
チェ「何か縛るものを持ってきてくれ!」
西崎それは万理村君にお願いします。
キーパー:(笑)。では万理村君がブースターケーブルを持ってきてくれました。これで手首と足首くらいは拘束できます。
二人:「ふーーー」

 狂気に陥って話を聞ける状態ではない紫垣をどうする事もできず、内定者三人はFOSTが来るまでただ待ちます。FOSTの回収班が到着して、紫垣と車を確保すると、制圧された事を悟ったのか、車載ラジオは黙りました。
 死亡ひき逃げ事件を起こしている紫垣を隠匿しておくわけには行かないので、紫垣は警察に引き渡されます。しかし、彼は事情を聞ける状態ではないため、責任能力なしと判断されるのかもしれません。
 凶器となった車も当然警察に押収されるでしょうが、その前にFOSTはできる限りの調査をするつもりです。




車【瀬武課長の面接】
キーパー:(瀬武課長)「どうやら、何か大変な事になっているようだな……」
チェ「何で銃なんか持っているんですか!?」
キーパー:(瀬武課長)「それに関しては私には分からない。大変だったな。これをあげよう」と言って、「FOST」とロゴが入った絆創膏をもらえます。
西崎(笑)
チェ「しかし、明らかにオレンジよりも症状が重いですよね」
西崎「我々の命の危険も……」
チェ「グリーンがどうなっているのか……想像するのも恐い」
キーパー:(瀬武課長)「しかしそれを解決しない事には……」
二人:「内定が出ない」(笑)



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