神話的ガソリン


グリーン・後

車【襲来】
キーパー:午前二時頃、皆さんはもの凄い音で叩き起こされます。ロールを振らなくても起きてしまうような大音量です。
チェお!?
西崎んん!?
キーパー:ドンガラガッシャーーーーーン! という何かの衝突音と同時にホテルの建物がぐらぐらっと揺れます。万理村君も「な、何だ、何だぁ!?」という感じです。
チェすぐに下りて行きます。
キーパー:下りて行くと一階と二階の間の階段にホテルの支配人さんがいて、「危ないから下には降りないでください!」と言ってあなたたちを止めようとします。
西崎「え!? どうしたんですか!?」
キーパー:(支配人)「車が暴走しています!」
チェ「!? ……良く分からない! 誰の車が!?」
キーパー:(支配人)「分かりません! 何十台も!!」
二人:!!
キーパー:階段の踊り場にある窓から海岸沿いの目抜き通りがチラッと見えますが、そこはピンクのヘッドライトで煌々と照らされていて、支配人の言うとおり何十台もの車が凄いスピードで走っています。その内の数台が民家や商店に突っ込んでドカーーーンという破砕音を上げています。
チェ「……ヤバイ」
キーパー:民家に突っ込んだ車は何事もなかったかのようにバックすると、隣の民家に突っ込んでいったり、通りを行く仲間の車に合流して走り去ったりしています。
西崎「マジヤバイ」
キーパー:呆然としていると、ホテルの館内ラジオが独りでに点いて「ガガガガガッッ」と雑音を拾い始めます。その後に鮮明な声で「良いぞ! やれ、やれ!」と聞こえてきます。「ラジオがそうしろって僕に言ったんだ! それをやって、それをやり続けるんだ、至る所で!」
チェ「もしかしてこの声は、緑野か?」
西崎「う〜む」
チェ「……どうする?」
西崎「どうするか……」ステーションワゴンらしき車は見える?
チェ上からだったら見えるんじゃない?
キーパー:高い所へ行く、と。このホテルは三階建てなので、一番高い所というとその上の屋上ですね。そこへ上がって見下ろしてみると、この廻間町の至る所にピンクのヘッドライトがチラチラと見え隠れしています。海岸通りだけではなく、内部の民家の路地にまで入り込んでいます。その数は正確ではありませんが、支配人が言ったとおり何十台も走っています。赤色灯も見えるので、おそらく警察も出動しているのでしょうが、パトカーも正面から車に突っ込まれているので有効に機能していない状態です。
西崎う〜ん。
キーパー:ホテルの電話はどれも鳴りっぱなしで、しかも支配人もどこかへ電話をしているので、ホテル内だけでも大混乱です。
チェなるほど。
キーパー:一台の車がホテルの駐車場に入ってくると、あなたたちが乗ってきたミラに勢い良く突っ込んでいきました。
二人:え!?
キーパー:それからバックすると、今度はホテルの入り口に突っ込んで行きます。建物が再び揺れます。車は正面玄関に頭だけ突っ込んだ挙句、それでも前進しようとして後輪を空回りさせています。轟音を立てて吹かされるアクセルは、まるでホテルの階段を車が登ってこようとしているかのように聞こえます。
西崎……俺たちを狙っているような感じなのかねぇ、ミラに突っ込んだ上にホテルに突っ込んできているってことは?
チェ……屋上にいるしかないな。
キーパー:ホテルの玄関では相変わらず車のアクセル音が響いていますが……ここで<アイデア>ロールを。(二人とも成功)ヘッドライトの流れを見ていると、車の大群が意志を統一して何かを狙い始めた事が分かります。最初は町中に混乱を引き起こすかのように様々な場所に突っ込んだりしていたのですが、現在集中的に狙われているのは警察署、町役場、あとはこのホテルです。
チェ警察と町役場は分かるけど、何でこのホテルが?
西崎やっぱり狙われているんじゃないの?
キーパー:ホテルの支配人は「何でこのホテルが狙われているんだ!? お客さんはあの三人しかいないのに!? しかもあのお客さんの軽自動車が狙われたかのように壊されるなんて!! なぜだ! 分からない!!」とヒントめかした事を叫んでいます。
二人:(笑)
チェこのホテルの前には車が集まってきているの?
キーパー:そうですね、三台くらい集まってきて、周囲をぐるぐると回っています。その他にも玄関に突っ込んだ車がいまだに唸りを上げています。
チェ他の車に乗って脱出できる様子ではないってこと?
キーパー:少なくとも乗ってきたミラは壊されていますが、まだホテル所有のライトバンなら駐車場にあります。後はどれだけコッソリと車に近づけるかの問題ですね。
西崎う〜む。
チェ車による脱出を図るか、ホテルに立てこもるか?
西崎屋上から見ていても、主犯がどこにいるか分からない?
キーパー:では電話をしている支配人の大声が聞こえてきます。「一体どうなっているんですか!? え!? 立てこもった!? 誰が、どこに!? 町役場!? は!?」
西崎町役場のようですな。なぜかは不明ですが。車で突破しますか?
チェホテルに立てこもるのは、まあ建物は丈夫でしょうから屋上まで車が来られるとは思えない。でも、時間が経つにつれて車がここに集結してきたら、より脱出できなくなる可能性が高まる。それならば、まだ可能性があるうちに。朝になるまで立てこもった所で、それで何が解決するわけでもなさそうだし。
西崎確かに。
チェとなれば、もう自力で脱出するしかないですね。
西崎う〜ん、確かにジリ貧はジリ貧なんだけど、行くにしてもこの<自動車運転>25%でどうにかなるものなのかと(笑)
チェフロントに行って一番丈夫そうな車の鍵を探します。
キーパー:フロントの壁に車のキーが掛かっていて、ホテル所有のライトバンのキーがあります。
チェこれで行きましょう。
西崎問題はコッソリ乗り込めるかだよ。
チェ夜陰に紛れれば。
キーパー:そうですね……では<隠れる>の2倍ロールをしてください。
チェ(コロコロ)……7倍ロールなら成功しています。
西崎(コロコロ)……4倍ロールに失敗しました。
キーパー:(笑)。あとはこちらの車が気がつくかですね……(コロコロ……失敗)。とりあえずコッソリとライトバンに乗り込むことができました。ホテルの周辺を周回しているピンクのヘッドライトの車を突破してホテルの駐車場から通りに出るには、<自動車運転>の2倍ロールでお願いします。
西崎運転手は誰ですか?(笑)
チェここまでのロールの成功率からすると、俺はやめておいたほうが良いような気がするんだけど(笑)
西崎いや、後半にダイス目が好転するかもしれませんから、ここはこれまで良いところがない千重本君に。見せ場を作るためにも(笑)
チェ今まで見せ場がなかったって事かよ(笑)。分かりました。「みんなの命、俺が預かったぜ!」ブゥーーーン! <自動車運転>25%の2倍で50%!! (コロコロ)……52。
西崎(爆笑)
キーパー:しかたないので、<幸運>ロールのオマケをあげましょう(笑)
チェ2%オーバーはおまけしてくれても良いと思うんだよね(笑)。<幸運>ロールは成功。
キーパー:ではピンクのヘッドライトの車に行く手を阻まれましたが、ガンガンとぶつかりつつも、どうにか駐車場からは出られた事にします。ただし、衝突によるダメージを受けます。車に乗っている人が一律1D6ダメージを受けることにしましょう。(コロコロ)……1。
二人:よしよし!
キーパー:ちなみに、ピンクのヘッドライトの車には誰も乗っていませんでした。
二人:え!?
キーパー:運転手がいない車が走っていたことに気付いた皆さんは正気度ロールを(二人とも成功して喪失なし)。さて、駐車場から出て、どうしますか?
チェこの町から逃げる! か、町役場に誰かが立てこもっているんでしたっけ? 町役場に何があるんだ? 無線とか?
西崎町役場には何台も車が集結しているんだよね? そこまで行けるのかね?
キーパー:……突破です。
二人:(苦笑)
西崎でも選択肢はなさそうだよね。ピンクのヘッドライトの車を突っ切って町役場の入り口へ突入!
チェあるいはこのまま逃げるか。でも、ここで逃げたら内定は……。
キーパー:内定も逃げていくでしょうな(笑)
チェでも、町役場に行くと命が逃げていくという可能性が(笑)
西崎う〜ん(笑)
チェ町役場へ車を乗りつけるには、具体的にどうすれば良いですか?
キーパー:アクセルを踏みます。
西崎町役場を取り巻いている車の中へ突っ込んで、その立てこもっている奴をどうにかするしかないんじゃない?
チェ突っ込んじゃったら、もうこの事件を解決するしか生きて帰れる手段はないよ?
西崎まぁ、そのために来ているわけですから(笑)
キーパー:まさに「命懸けで仕事しています!」って感じですね。文字通りに(笑)
チェ「……えい、ままよ!」と言って町役場にハンドルを切ります。
西崎良いでしょう。
キーパー:「ままよ!」まで言っちゃったわけですね。了解です(笑)



車【突入、町役場】
キーパー:町役場は高台の方にあるのですが、その周辺はピンクのヘッドライトがいくつも周回していて、エンジンを吹かす轟音が鳴り響いています。この包囲網を突破しようとするなら、体当たりで阻止してくるでしょう。それをかいくぐって町役場に乗り付けるには……ロールです。
チェ……何ロールですか?
キーパー:もちろん<自動車運転>です(笑)
チェ……よし、突っ込みましょう。ヒラリとかわしながら横付けしますよ!
キーパー:そうですね、最後くらいカッコ良く決めてください(笑)
チェ「みんな、掴まれ!」(コロコロ)……98!
全員:(爆笑)
キーパー:何台も車が突っ込んできて、ライトバンはベコベコになりますが、ここも<幸運>ロールでギリギリ切り抜けられる事にしましょう。
チェ(コロコロ)27。成功。
キーパー:では、今度は台数も多いので1D10ダメージです。(コロコロ)……2ダメージです。ダメージダイス、振るわんなぁ。
西崎(笑)
チェよし、生き残った!
キーパー:ではフロントガラスを粉々にしながらも突破できました。町役場の正面玄関に、例の銀色のステーションワゴンが停まっています。その中に誰かが乗っているようです。立てこもっていると言っても、役場の中ではなくて、ここで役場を占拠していると言う方が正しいでしょう。さて、どうしますか? 1アクションでどうするかです。このままライトバンをぶつけるか、車を停めて何かをするかです。車を停めれば、当然向こうの車が発車する可能性はあります。
チェもうぶつけるしかないよね?
西崎うん。
キーパー:包囲網を突き破って現れたホテルの車に驚いて、向こうはこのラウンドは何もできません。不意打ちを食らった状態ですね。車をぶつけるならば<自動車運転>の2倍ロールです。失敗すると町役場の正面玄関の柱にぶつかって自損事故です。対物保険に入っていないと大変な事になります。
チェ歯を食いしばって(コロコロ)……17! ついにキタ!
西崎おお!
キーパー:ガシャーーーーーン! でも当然ダメージを受けます。ただし、今回は自発的に突っ込んだので、1D3で良いでしょう。(コロコロ)……3ダメ(笑)
チェえ!? 今まで1とかだったのに……。
西崎(笑)
チェあれ!? 俺、意識不明じゃん!
西崎始西崎おいおいおい!(爆笑)
キーパー:ステーションワゴンの横っ腹に突っ込んだので、既に割れているフロントガラスを越えて行けば、向こうの車の助手席に入れます。そこで緑野と戦闘できます。
チェ(意識不明):ちょっと待ってよ。ここで、俺が意識不明とか、どうよ?
西崎ちょっと、ちょっと……俺?
キーパー:ステーションワゴンの運転席に座っている緑野は青白く、膨れて、痩せ衰えて、目は充血して唇はボロボロ、灰色の歯をした、背を丸めたハゲタカのような姿勢をしています。奇妙な悪臭を放つ、言うなればガソリン・ヴァンパイアです。西崎さんは正気度ロールを。
西崎(コロコロ)それは成功。
キーパー:1ポイント喪失で済みます。では、ここから西崎対緑野の戦いが始まります。
チェ最後まで見せ場なしですよ……。

 緑野は持っていた包丁で、西崎は不慣れなこぶしで戦闘開始。10ラウンド後に体勢を整えた緑野のコントロールするピンクのヘッドライトの車がいっせいに突っ込んでくる事とします。
 戦闘には不慣れな者同士が空振りを連発する冴えない戦いでしたが、最後の第10ラウンドで西崎のこぶしがついに緑野を無力化! タッチの差で軍配は探索者側に上がりました(緑野の包丁の攻撃は一発も命中しませんでした……)。


キーパー:タイヤを軋らせて車が殺到してきましたが、緑野が倒れるとコントロールを失って、互いに衝突し合って、すんでの所でガシャーーーンと停まります。「プーーーーー……」と壊れて止まらなくなったクラクションが鳴り響きます。
二人:ふぅ。
キーパー:ピンク色のヘッドライトがあなたたちを眩しく照らしますが、しばらくするとライトの色は白に戻ります。
西崎「とりあえず、何かで緑野を拘束しようぜ」と言って、手近なもので彼を縛ります。
キーパー:では万理村君が再びブースターケーブルを持ち出して緑野を縛り上げます。ステーションワゴンの車載ラジオから「起きろ! まだお前にはやる事があるはずだ! 起きて戦え!」と声が聞こえていましたが、それもしばらくすると「チッ」と舌を鳴らしてぷっつりと聞こえなくなりました。
西崎緑野の脈はある?
キーパー:脈はありますが、どうなんですかね、要するにもう人間ではなくなっている感じです。ボコスカに殴ったはずですが、一滴も血を流していないのはどうにも不自然です。
西崎「生きる屍みたいだ……」
キーパー:(万理村)「そうだね」

 やがて機能を回復した警察の車両が何台も乗りつけてきて、隣町から派遣された救急車が廻間町内を走り回り、意識不明の重傷を負った千重本も搬送されます。
 小さな町である廻間町は、記録にある限り最も混乱した朝を迎えることになりました。




車【瀬武課長の面接】
キーパー:まず緑野ですが、公式には行方不明のままです。少なくとも緑野兼斗という「人間」は発見されませんでした。瀬武課長から遠回しにそのような事を報告されます。
二人:ああ〜。
キーパー:なぜ車が暴走したのかは原因不明ですので、山の上にある発電施設から出た電波が自動車の電気系統に何らかの影響を及ぼした、ということになるようです。
チェその方が説得力はあるね。
キーパー:新聞には事件自体は掲載されますが、その原因などの続報は入ってきません。「大学生お手柄」という記事で「お手柄の西崎君と万理村君」という写真が載ります。
チェいやいやいや!
西崎(笑)
キーパー:(瀬武課長)「この原油は危険だという事が分かったので、もう少し研究をしてから実用化することにしよう」
西崎まだ諦めないのね(笑)

−後日談−
キーパー:(鷲羽)「よ〜、何か大変だったみたいだな」
西崎「いや〜、本当に大変でしたよ」
チェ「銃で撃たれましたよ」
キーパー:(鷲羽)「そうか。ところで、これが筆記試験の日程だってよ」
二人:「えーーーーー!?」
(了)



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