海神の神殿



3:調査開始


 國史院大学海洋研究所から戻った探索者たちは、詳しく“底州湾の竜宮伝説”を調査することにします。
・『鵷鶵文書』をさらに読み進めて、追加情報の有無を調査。
・祠から見つかった頭像の年代測定。國史院大学考古学部に依頼。
・“杯戻しの岬”に関する、さらに詳細な資料の発見。
 ただし、泰野教授をはじめ全員に本業があるため、“竜宮伝説”の調査にかかりきりになることはできません。各人ができる範囲で、ゆるゆると調査を進めることになります。


キーパー:さて、そのようなことをしている間にも須堂は海中にいる夢を見続け、一週間ほどすると夢の中に神殿が現れるようになります。夢は日毎に異常な現実味を帯びて、強烈なものとなっていきます。凍りつくように冷たい深海の水の感触を肌に感じるし、海水の塩辛い味も感じられるようになります。夢が進むにつれて水圧がどんどん強く感じられるようになり、自分が海の底へ、“海神の迎え火”に向かって沈んでいくように感じられます。
須堂建次須堂:良くない。良くない展開だ。
キーパー:最初はひどい寝汗をかいて目覚めていたと思っていた須堂でしたが、最近になって、これは自分の寝汗ではなく、海水に浸かったことで濡れそぼったのだと理解します。
一同:ハハハ……。
須堂:磯浦さんに連絡を入れて、「最近、夢がひどくなってきていないか?」と聞いてみます。
キーパー:美和子は同意して、「なんだか、竜宮を訪問して、伝説を成就させなくてはならないんじゃないかって思えてきました」
須堂:伝説?
キーパー:“戻された杯で霊酒を飲み、記憶を取り戻すことを海神は今も求めている”の部分ですね。
須堂:いやいやいや……ねぇ?


ライン


キーパー:さて一週間経って、磯浦美和子を含む皆さんは協会の事務所に集合します。
泰野教授:「とりあえず、みんな、分かったことを教えて」
キーパー:まず磯浦美和子と須堂は夢を見ることで、竜宮への訪問と、杯を発見しなければならないという強い欲求に駆り立てられています。
新城:杯は返されたわけではなく、ただ海に投げ入れられただけってことですかね。
泰野教授:海の中に転がっているかもしれないだけで、海神に戻されたわけではないのか。
キーパー:杯に関しては、いまだに『鵷鶵文書』の中には出てきていません。当然、“杯戻しの岬”についても同様です。皆さん、INTロールをしてください(全員成功)。“サカズキ“の記述が“盃”ではなく“杯”なので、持ち手のある酒杯を示しているのではないかと思い至ります。
泰野教授:いわゆるゴブレットなわけね。
キーパー:本邦の神話・伝承でいうと“盃”の方が適当な気がしますが、“杯”を当てているところを見ると、どうやら探すべき物の形は見えてきた気がします。
新城:「それもまた変ですよね。色々混じっちゃっている感じというか」
泰野教授:「それも含めて、興味深いといえば興味深いわね」
新城:頭像の年代測定の結果は出ていますか?
キーパー:すごく古いものです。ギリシャの古代彫刻と同じ年代のものだそうです。測定担当者からは「ギリシャの遺物ですか?」と聞かれます。
泰野教授:「すごい大発見じゃん!」
新城:頭像だけだったら“何らかのルートで日本に渡来した”という話になるんですけど、それにまつわる他のものも、ちょこちょこ出てきていますよね。ゴブレットとか。「先生、これは文化人類学の分野になるのでは……」
泰野教授:「う、うん……そうよね」ところで、“杯戻しの岬”に関する近代の資料はありましたか?
キーパー〈図書館〉技能ロールをしてください(コロコロ……成功)。資料を発見できました。『鬼別郡郷土史』みたいな文献や、地元の小学生の「地名研究」的な発表記事の中にその名が見られることもありますが、内容は三谷努が言っていたのとまったく同じです。
泰野教授:なるほど。土地の人には普通に伝わっている話なのか。こうなったら杯を見つけるために海に潜ってみるか?
須堂:海洋研究所に海中の調査を担っている実働部隊みたいな人たちはいないですか?
キーパー:海洋研究所は底州湾の海底地形の調査なども行なっているので、三谷努に聞いてみれば相談には乗ってくれるはず。
須堂:「共同所有の頭像の件で、海洋研究所の方で海に潜って杯を探せるような人の協力を仰げませんか」とお願いをしたいのですが。
キーパー:じゃあ、〈信用〉ロールかな。大学関係者である泰野先生と新城にはボーナス・ダイスを1個あげましょう。
新城三郎新城:幸運ポイントを21消費して強引に成功です(泣)
キーパー:(三谷)「残念ながら、海洋研究所に割ける人手はありません。ただ、ご自身で行ってみるというのはどうでしょう? 懇意にしているダイビング・ショップがあるので、そこを紹介しますから、練習して潜れるようになってください。機材は海洋研究所のものを貸します」
一同:ありがたい!
泰野教授:もう、それしかないと思う。
キーパー:ダイビング・ショップ「CB」という店を紹介してくれますので、そこで〈ダイビング〉〈水泳〉技能を伸ばしてください。全員が海底調査可能なレベルにまで達したら、三谷が調査隊を率いてくれるそうです。三谷は〈ダイビング〉技能を60%持っていますからね。
新城:それはありがたい!
キーパー:当然、磯浦美和子も訓練に参加します。ちなみに講習費用は協会持ちですので安心してください。
須堂:早速行ってみましょう。


ライン


蔦橋迸キーパー:三谷努と落ち合って「CB」に行くと、男女2人組が皆さんを出迎えます。彼らは「蔦橋です」と自己紹介します。
安坂:蔦橋ご夫妻ですか?
キーパー:そう聞くと、兄妹だと笑って答えます。顔は似ていませんが、兄妹だそうです。兄が蔦橋迸(つたはし・はしる)で、必ず「スンッ」と鼻を啜ってから話し始める癖があります。妹の蔦橋海霞(つたはし・うみか)は愛想よく「初めまして、よろしくお願いします」と挨拶をします。彼女がインストラクターをやってくれます。

 三谷努が「探索者たちが海底調査をできるまでに訓練をしてほしい」というと、迸は「(スンッ)さすがにそれは無理だよ」と笑いました。しかし、ある程度まで訓練を終えたら、三谷が調査隊のリーダーとして探索者たちを率いるというと、とりあえず蔦橋兄妹は納得します。
 ゲーム的には、探索者たちは最低でも〈ダイビング〉技能が20%、〈水泳〉技能が40%になるまで特訓を行なうことになります。一日の訓練でどちらかの技能の成長チェックをすることができ、チェックに成功すると1D6%技能値が上昇するというルーチンです。
 機材等の準備もありますので、特訓は一週間後から始めることになりました。


蔦橋海霞キーパー:これで今日のところはとりあえず解散となりますが、何か確認しておくことはありますか?
須堂:夢の中で見た景色に合致するような地形がないか、三谷さんに聞いてみます。
キーパー:(三谷)「う~む。底州湾で言えば沖合へ15キロほど行ったところでしょうかね? そこで海はガクンと深くなりますので」
新城:底州湾にはサメとかいないでしょうね?(笑)
キーパー:サメは、きっといるでしょうが、獰猛な人食いザメみたいなのはいないでしょう。
泰野教授:『鵷鶵文書』をできるだけ読み進めたいのですが。
キーパー〈母国語〉ロールをどうぞ(泰野教授はレギュラー成功。しかし古文書解読にはハード成功が必要)。「……う~ん、チョットムズカシイ」
一同:(笑)


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キーパー:解散後、須堂はいったん事務所に戻って施錠などを行ないます。そして資料保管室の鍵を閉めようとすると、また「カタッ」と音がしたように思います。不気味に思いながら帰宅して眠りに就くと、例によって海底の夢を見てうなされて目を覚ますのですが、暗闇の中で、枕の横に何か虫のようなものが蠢いているのに気づきます。
須堂:!? 電気をつけます。
キーパー:そこには小エビがピチピチと跳ねています。
一同:(爆笑)
キーパー正気度ロールを(須堂は00で失敗)。1D3ポイントの正気度を喪失します(1ポイント喪失しました)。「なぜ、こんなところに小エビが……」と思いながらベッド横のナイトテーブルを見ると、その上にあの頭像が置かれています。
須堂:「……は!?」
安坂:近づいてきていますねぇ(笑)
キーパー:須堂は小エビをシンクに捨てると、翌日、資料保管室に頭像を戻して、CBへ向かいます。