地底の侵略者09:呉家

キーパー:ではそちらの住所の方へ行ってみると、ものすごく巨大な廃墟があります。木造家屋の家なんですが、あまりにも大きすぎてこれを取り壊すにもどうしたもんだい? っていう。厳重に門戸は閉じられています。外から見ると明らかに人は住んでねぇな、という事が分かります。屋根から草がペンペン生えちゃったりとか。
村瀬(弟)塀に焼け焦げた跡があったりとか、ここで火事があったとかいう形跡はない?
キーパー:それは全然無いですね。外構えは全然、どこも壊れてたりはしません。
鷲羽「えー? 確か爆発事故だっていう話じゃん?」って言う事だろ、つまり。では思うところあって持ってきていたスコップで(※都合良いな!)鍵を壊して中に入ります。
キーパー:錆付いているんで、これは簡単に壊れますよ。
チェ入りましょう。
織本入って庭を見たら、「あの夢の光景をぶっ壊したらこうなるかな」っていう感じなの?
キーパー:荒れ放題ですね。あれと思しき池はあるんですが、干上がっています。障子とかは全部なくなっちゃって、畳とかは波打っちゃっている状況です。で、ど真ん中にドカーンと穴が開いています。
鷲羽あ、開いているんだ。行ってみましょー。
キーパー:屋根は丈夫に残っているので座敷の中は薄暗い感じなんですが、開いている穴からぼんやりとした光が漏れています。
相原見覚えある光ですか?
チェ「ヤバイんじゃねーのー?(裏声)」
キーパー:夢の中で見たのと一緒ですね。見覚えがある光です。
鷲羽「どうやら呉はこの下には凄く恐ろしい物があると思っているらしい」
チェ行ってみましょう。
鷲羽蓋みたいなものはあるんですか?
キーパー:…あります。
鷲羽それは(夢で見たのと)そっくりそのまま?
キーパー:そっくりそのまま。ただし、横に同じようなものが転がっています。
一同:同じようなもの?
村瀬(弟)新しい蓋だ…。
キーパー:まったく同じようなものです。ただしそれは光っていません。
相原上で蓋をしている奴は光っているんだ。
鷲羽誰かがまた新しい物を乗せたのか。
キーパー:まったく同じ「眼」が描かれています。
村瀬(弟)この眼には<オカルト>とかで何か分かる事はある?
キーパー:ああ、どうぞ。(鷲羽が成功)所謂旧き印と似たような効果をもたらす「光の眼」。異界のものの力を弱める、その力を封じるといわれている物です。
織本「誰かがもう一回封印したんでしょうね、この状況だと」
鷲羽「それが誰なんだ、っていう事だろ」
織本「でも、こんな石版とかってひょひょいっと持ってこられるのかっていう話も…」
鷲羽「簡単に作れるのか?」
チェ「この事件をガス爆発だと警察に処理させた人っていうのは誰なの?」
キーパー:(鷲羽を見て)あなたなら分かります。要するにこの「呉家」っていうのはそのくらいの事が出来る家だと。少なくとも地方新聞に対してはそれくらいの事が出来ますよ、と。
一同:ああ。
チェこんな事件だったら実は全国紙に載ったっておかしくない事件ではあるよね。ガス爆発だとしても。
キーパー:かなりの数の人間が死んでますんで。
織本それを潰せるくらいの力はある。
鷲羽我々(護封)と同じような事が出来る、ないしは担っている家柄ではある、と。
キーパー:(鷲羽に向かって)<アイデア>ロールを。(成功)さっきの「光の眼」っていうのはエルダー・サインほどメジャーじゃないんですけど、どうも大陸から伝わったと言われているんですね。中国大陸から伝わったと。で、確か九州辺りにそれを扱うのに長けた一族がいたという話を聞いた事があったような気がします。
チェだとしたら、この「呉家」ってどれだけ大きいのか分からないけど、再封印した人たちがいるっていう事は、一族の内の何人か死んでも再封印できる人がいて、それだけの実力のある家なんだから、呉君の事はその誰かに…。
村瀬(弟)それならばこちらから連絡を取った時に向こうからまったくアプローチが無いのは不思議ですよね。
チェあそこしかないの? 呉家の生き残りって、本当に?
織本いや、分からん。
相原引き取ったのはあそことしか聞いていないから、それ以上の事は分からないですねぇ。
村瀬(弟)それは調べてみれば良いんじゃないですか?
鷲羽でも実際問題としてさ、封印されているんだからそれはそれで良いんじゃねぇの?
チェこっちはこっちでね。
相原何があったのかね? 今回の事に直接関係があるのかどうかもねぇ。
織本誰かが封印したって事は、その封印したのは?
相原あの夢の事が引き金になっているのだとしたら、あの黴臭い連中は呉が解き放った物に興味があるわけ? そんなの関係ない?
チェあの、俺たちの目的を確認しておきたいんだけど、呉君を何とかしたいんだよね? でも俺たちにはどうしようもない?
鷲羽どうしようもないね。
チェだったら、こういう不可思議な事件なんだから、そういった事を何とかできる人たちにお願いをするか託すかしなきゃいけないんだけど。現状この状態だと呉家がそういう家柄なんだとしたら、そこの家の人に何とか事情を話して「呉君を何とかしてください」って頼むしかない。
村瀬(弟)でも、あの家のあの呉家ではダメなんだという気がする。

キーパー:全員<アイデア>ロール。(全員成功)はっと気が付くと、外にそれなりの数の人の気配がします。
相原それなりの数!
チェ何人くらいいそう?
キーパー:ざっと見た限り10人くらいなんですけど、まるで鵠井家の関係者のような、いかにも柄の悪そうな人たちです。
村瀬(弟)「…呉正秀君の縁者の方々ですか?」
キーパー:すると、後ろの方から声がします。「あなた方ですか? 私の家を昨日訪ねていただいたというのは?」
相原「はい。我々です」
キーパー:あなた方よりちょっと年上くらい、まだ全然若い感じの男性が一人、前に進み出てきます。そこにいた連中は、彼が登場するとササッと道を開けます。それだけの威厳は持っていますね。
鷲羽「何の御用で?」
キーパー:「わざわざここを訪ねて来るという事は正秀の関係で来られた方々だとは思いますが、一体どういった御用件ですか? ここはまだ我々呉家の所有となっていますので、不法侵入という事で警察へ突き出すという事も出来ますが…警察の方で有る事無い事仰って頂くのも結構ですが、どちらから来られたかは知りませんが、お帰りになって頂くという事になります」
相原事情はどこまで話していいものやら…。
鷲羽えー、全部話します。「信じてもらえるかはともかくとして…」と前置きしてから。
キーパー:「あなたも夢見の力をお持ちという事で解釈してもよろしいですか?」
鷲羽「今回ばかりは、どうやら」
キーパー:「お聞きになっている方もいらっしゃるかもしれませんが、正秀は我々の一族にとってまさしく“鬼子”です。状況から見ても明らかにアレのせいでこの惨劇は起こったといっても差し支えないでしょう。しかもアレには無意識の内に夢見の力を発現させてしまうという、本来我々の一族には無かった、あるいは今日に至るまでの間に捨ててきた力が、どういう訳か生まれつき備わっております。おかげでいくつか不都合な事も生じてきましたので、アレには余所の場所へ移ってもらったような次第でして。我々の目の届く範囲にいない限りは、アレがこれ以上何をしでかそうと関知しない。出来れば昨日の段階で大人しく帰って頂きたかったのですが…」
鷲羽「…実際、この下には何が?」
キーパー:「この地域に古くから伝えられております所謂“地下の世界”に繋がっているといわれています。炭鉱労働者がかなりの数犠牲にもなっているんですが、そこにはまったく我々とは相容れないモノを信奉する、まったく我々とは異なる存在が棲みついています。時としてそこと繋がってしまうと、それが地上(うえ)へ出てくる事になってしまう、“無貌の落とし子”と呼ばれている生き物が」
一同:あー…。
キーパー:「そういう間違って繋がってしまった場所を封印し続けているのが、我々一族の役目になる」
織本「それを彼がうっかりと開いてしまったという事ですね…」
キーパー:「そう。それが所謂15年前の事件の真相という事になります」
織本「という事は、これをまた封印したのもあなたという事ですね?」
キーパー:「我々が新たな封印を施しました」
村瀬(弟)「今回我々が話した事件と、ここで起きた事件に因果関係は見出せないですか?」
キーパー:「話を伺っておりますと、相当怪奇な事件にあなた方も遭遇されたようですが、正秀がそれに絡んでいるとなると、アレの脳が持ち去られたのがどういう影響をもたらすかは、正直我々にも分かりません」
村瀬(弟)「夢見の脳、という事ですか」
キーパー:「せっかくここまで来てくださったわけですから、話しておきましょう。正秀が“鬼子”と呼ばれる訳は、アレが自分の見た夢の一部を具現化させる事が出来るという事です」
織本「一部を?」
鷲羽まさか、それを利用したいのかな?
チェだから脳を持ち去った…。
村瀬(弟)ある意味予言というか、現実を引っ張る力があると言えるかもしれない。
織本それが素っ頓狂な現実になっちゃうかもしれないって事か。その力が欲しくて脳を盗んだって事か。
キーパー:「アレにはここで起こった事件の印象が深く深く刻まれておりますので、幾度と無くあの夢を見ているはずです。で、毎回ではないんですが、時折アレがその夢の中から物を持ち帰る事がありました。その能力を、我々は恐れたのです。何しろ夢見の力はこの呉家から既に失われた力、ないしは本来無かった力です。だから、誰も止める事が出来ない」
チェ対抗しようが無いわけか。
キーパー:「まだ物を持ってくる程度であったら構わないのですが、もし万一、ここから出て来たモノを持ち帰るような事があれば、我々にはそれを止める手立てが無いのです。ですから、本人の希望もありましたので、アレは余所へ行かせました」
千重本 満チェ「自分たちさえ良ければ良いという厄介払いか!?」
村瀬(弟)ただ、まぁ、土地を離れたらここまで強力なリンクは無くなるかも知れないという事かもしれません。
キーパー:「今の呉家の宗家は私ですから、アレはあくまでも傍系の人に過ぎません。養子であるとはいえ、私にはちゃんとした跡継ぎがいますので、余所で何をしでかそうと私の知った事ではありません」
相原「でも、そもそも彼はなぜ無事だったんですか? 地下から出て来たモノに対して」
キーパー:「幸い、それが出て来る時の衝撃で気を失ったようです」
チェ偶然なのかは分からないけど、生き残っちゃった。
キーパー:「本人の話によれば、目が覚めた時には全てが終わっていたとの事です」
チェ夢の中で開けちゃった、とかね。
村瀬(弟)そうなると最も良い解決法は呉君を殺す事?
鷲羽実はそうなんだよね。
織本そうなっちゃうよね。
相原安全という意味で考えれば。
チェ脳の機能を止めるんだったら、肉体を殺しちゃうとか。
織本でもそれで脳の機能が止まるの?
村瀬(弟)分かんない。分かんないけど、脳の機能が今生きているんだとすると、逆の可能性もある。普通液体が満ちているだけでは自発呼吸すらなくなるので。
鷲羽そうとも限らない。
織本そうとも限らない気がするな〜。
相原脳だけ生かす事が出来るような気もする。単に今は体を生かしておいているというだけかもしれないし。
鷲羽何のために脳が持ち出されたかだよね。本当にこの力を使うために持ち出されたのか?
相原彼だけ特別だもんね、扱いが。
キーパー:あの時、彼(=チェ)も建物の中に連れ込まれそうになっていましたよね?
相原…(催眠術に)抵抗したから?
村瀬(弟)抵抗したのはPOWの高い良い脳だ?
キーパー:そういう推測も成り立ちますよね。
村瀬(弟)それは後で悩むとして、この状況はこのまま平和裏に別れられそうなら、とりあえずどうします?
チェ呉家の人は正秀を助けるつもりは無いようだから…。
織本殺すなら殺せば? って感じだからね、彼の事は。

 呉家の宗主との衝突は回避され、一行は福岡を後にして白凰市へ戻ります。



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