
キーパー:さて、沢渡が肉切り包丁の斬撃を間一髪かわすと、錦田は勢い余って体勢を崩します。そして一、二歩たたらを踏んだ錦田の体が、突然バラッと四つに分かれました。
二人:「ええ!?」
キーパー:まるで、初めから四分割であったものが粘着力の弱い糊でくっつけてあったかのように、腰のベルトのラインと、頭のてっぺんから股下までの縦のラインで、もろッと四つのパーツにわかれました。
鈴木:「おおお!?」
キーパー:あとから思い出したかのように、遅れて血や体液がじわっと滲み出してきます。ゴロンという感じで、四分割された錦田が山荘の床に転がりました。では正気度ロールをしてください。
沢渡:39! 成功。
鈴木:64! 成功。
キーパー:成功したら正気度は減りません。そして最後の瞬間、口が真っ二つに分かれる寸前に、錦田はハッと何かに気づいたかのような声で「……沢渡?」と言って息絶えました。
沢渡:……。遺体の切り口はどんな感じですか? ぐちゃぐちゃになっているとか?
キーパー:いえ、すっぱりと切れています。
沢渡:「……最期に正気に戻った?」
鈴木:「……戻ったのかねぇ」
キーパー:肉塊は何も語りませんな。
キーパー:お二方の通報によってダーハマ刑事が警官を連れてやって来ます。縛めを解かれた犠牲者が、錯乱しながらも錦田の惨状はあなたたちの仕業ではないと証言してくれます。
沢渡:「勝手に四つに割けました」
鈴木:信じてくれるのか?(笑)
キーパー:少しは事情を知っているダーハマもあなたたちを弁護してくれます。当然事情聴取は受けますけどね。山荘からは新藤久未、高木栄子、野村由紀、そして今回第四の犠牲者となりかけた三浦美奈の血痕が見つかりますので、ここが犯行現場であると特定されます。そして錦田が連続殺人犯であったと断定されます。
沢渡:「なぜこんなことをしたのだろうか?」
キーパー:(浜田)「それは犯人死亡で分からないところだが、前妻とよりを戻したがっていたのは間違いない。それがこじれて……とかかな。憶測にすぎんが」
鈴木:「色々とこじれすぎましたなぁ」
キーパー:あとでダーハマが漏洩してくれますが、検死の結果、錦田はまったく厚みのない刃物で切られたかのような状態だったそうです。まさに細胞と細胞の隙間をすっぱりと刃物が通ったかのように。
沢渡:どんな刃物であろうとも、細胞を叩いた痕跡が残るはずだけど、それがないってことね。
キーパー:「切った」というよりは「剥がれた」とでもいうしかない状態だったそうです。現在の技術では到底不可能な業なので、正確な凶器は不明です。状況からして連続殺人犯は錦田であり、その犯人は死んだということで決着を図るしかない状態ですね。当然、二人は無罪放免です。
沢渡:でも、報酬が……。
鈴木:踏み倒されてしまいましたな。
キーパー:こうして千夜来川連続殺人事件は幕を下ろしました。
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