
参:初日
キーパー:じゃ、初日。小雨日和ですけど、5時開場、7時開演ということで。結構白凰市の名士が集まっています。有名人も来ます。
村瀬:そこら辺は普通に仕事の絡みで取材とかもしながら回って見ています。
キーパー:実際、色々な人が来てますわ。黒塗りのベンツが乗り付けて、若い衆が「ご苦労様です!!」みたいなのもありつつ。
一同:おうおう。
キーパー:一方、舞台裏では才川が「君たちの出来にかかっているから! リハーサルどおりやってくれれば、最高のものが出来るから!!」という具合に盛り上げて、一人一人に握手して回っています。雰囲気は最高です。
鹿田&千尋:なるほど。
キーパー:では役者のお二方は<目星>を。
千尋:09! OK。
鹿田:…ダメでした。
キーパー:では劇の流れで知っているんですけど、処刑人が持っていく首を切るナイフを才川が持っていることに気が付きます。そしてそれをベルトに差しました。
鹿田:ほう。
千尋:いつもはそんなことしていないんだよね?
キーパー:してません。
千尋:「何でそんなもの持っているんですか?」
キーパー:「ああ、いや、なんだか二つ紛れてしまったみたいでね」。処刑人役の役者は自分用の物を持っています。予備の小道具が紛れてしまったのかもしれない。
千尋:「ふ〜ん、そうなんだ」
鹿田:そういう話は聞こえるのかな?
キーパー:聞こえますね。
鹿田:「え、どうしたの?」と話を聞きつけます。
千尋:「小道具さんが何かミスったみたいですよ」
鹿田:処刑人役の役者に「ちょっと見せてもらっても良い?」
キーパー:「ああ、どうぞ」。ナイフは本物ではなく、いわゆるイミテーション、小道具です。
鹿田:「よくあるじゃん、火サスとかで。実は本物とすり替えられてて、みたいな」
キーパー:「うお、怖ぇぇ!」と変な盛り上がりを見せます(笑)
鹿田:「まぁ、せっかくの初日なんだから、何かあったら困るからさ。ゴメンゴメン」
キーパー:(久川と村瀬を見て)あ、ちなみに日下部明親の姿は見かけません。
一同:ほう。
キーパー:本来来るべきですよね。君らの隣の席が空いている。多分彼が座る所だったんじゃないかなぁ、という場所だね。
久川:ところで俺らの席はどのくらいの位置?
キーパー:君らの席は、そうだね、ちょうど真ん中くらいの位置。
村瀬:名刺交換とかしましたよね? そこの電話番号に連絡してみます。
キーパー:外出中だそうです。ちなみに押川の姿も見えない。
久川:押川は舞台裏にいるだろうね。
キーパー:まぁ、そうとも考えられるね。(千尋&鹿田に向かって)才川は舞台裏を盛り上げていますが、押川の姿は見えませんね。少なくとも役者の控え室にはいない。
村瀬:押川の携帯も知っていると思うので、電話してみます。
キーパー:携帯電話はかかるけど、出ません。
村瀬:ちょっと会場内を探してみます。状況が状況なので姿を確認しておきたい。
久川:私も一緒に探しましょう。
キーパー:開演が7時なのでそれまで探す、と。でも見当たりませんなぁ。ちなみに押川自身は結構顔が知れているはずです。観客は白凰市の市民が大半なんだけど、3ヶ月前から広報や演劇系の雑誌で監督や脚本家のインタビューが写真入りで掲載されたりしているので、見ればすぐ分かるはずですね。
村瀬:目立つはずだし人が集まるでしょうね。
久川:探してもいなかったら「楽屋にでもいるのかな?」って感じだよな。
鹿田:でもいないんだよね。
久川:俺らはそれを知らないですから(笑)
キーパー:それでは皆さん、もう一度台本を読んでみてください。処刑人はちなみに「田中」っていう俳優がやります。
一同:(「サロメ」の台本を読む)
キーパー:OKかな? では皆さん台本を持ってもらって、これから劇をやってもらいます。サロメとヘロデ王は千尋と鹿田さんで。
鹿田:分かりました。
キーパー:で、君ら(久川&村瀬)は手持ち無沙汰だろうから、誰やってもらおうかな…。じゃあ村瀬が…。
鹿田:兵士?(笑)
千尋:早々に暇になっちゃう(笑)
鹿田:じゃあト書き(笑)
一同:(笑)
キーパー:じゃあ、村瀬がヨカナーンで、久川がヘロディアスのところを読んで。
鹿田:(久川を見て)…えぇ〜?(笑)
キーパー:で、やりたいことがあったら、別に演劇の途中で構わないので言ってください。
村瀬:劇の進行にしたがって、何か起きるのをキーパーが描写していくわけですか?
キーパー:そうそう。7時になったら始まりますよ。この演劇は劇場の10周年記念公演なので、支配人の挨拶とか、才川の挨拶もちょっとあります。で、15分くらいに劇は始まります。
村瀬:日下部さんの挨拶は?
キーパー:彼は公演の企画担当なので特に挨拶の予定はないね。
村瀬:席には結局来ないんですよね?
キーパー:来ません。
久川:「彼は忙しそうだからなぁ。遅れてくるのかな」
キーパー:俺は実際に演劇見に行ったことないから良く知らんけど、途中で入ってくるのはかなりのマナー違反ではないのかな?
久川:休憩の時間とかじゃないと入れないからねぇ。
鹿田:しかも前の席だっつーと、なかなか厳しいかもね。
村瀬:「どうしたんだ?」と思いながら、始まってしまうんでしょう。
キーパー:では、演劇の幕が上ります。