赤のQ


5

日下部 麻希

堂本: 考えてもはじまらん、威力偵察だっ
史乃: そうだね。とりあえず、話を聞いていない副会長の所へ行ってみますか?
キーパー: 麻希は良く屋上にいるそうです
史乃: 急ぎましょう
堂本: 走れー
美緒: はい
キーパー: では屋上。錠は美影が開けてくれます
史乃: そーっと、様子を覗いてみましょう
美緒: 同じく様子を窺います
堂本: どれどれ……
キーパー: フェンスに寄りかかっている麻希がいますね
堂本: 様子は?
キーパー: 景色を眺めている感じです。飛び降りる気配とかはありません
堂本: ほっ
史乃: 行くか。「今日は」
堂本: 「何が見えるの?」
キーパー: 麻希「あら? 入り口には鍵をかけておいたはずだけど」
美緒: 「よくここに来られるんですか?」
キーパー: 麻希「屋上からは下が良く見えるからね」
堂本: 「下の……なにを?」
キーパー: 麻希「"常に高い場所から俯瞰すべし"というのが日下部の教えよ」
堂本: やなねえちゃん
史乃: 「何でまた鍵なんてかけたの?」
キーパー: 麻希「屋上は施錠すると学院長がお決めになったでしょう? 私はその決まりごとを破ってここにいるだけ」
美緒: 「何故あなたが決まりを破ってここに?」
キーパー: 麻希「決まり事を破ることもあるわ。それがくだらないものであれば尚更」
史乃: 「ふーん、意外ね」
美緒: 「ちょっと驚きです」
堂本: ……どうやって鍵を開けた?……
美緒: そういえば……
史乃〈鍵開け〉100%
堂本: やなねえちゃん
キーパー: 麻希「生徒会ならスペアキーの一つや二つ持ってて当然でしょう?」(チャラチャラ)
堂本: くっ
美緒: あ、そうでした
史乃: 特権!
堂本: ということは、生徒会の人間にとっては、ここは安全地帯か……?
史乃: 「今日は、垣間さんを弔いに来たの?」
キーパー: 麻希「垣間さんは……悲しいことね。私の考えの良き賛同者だったもの」
史乃: 「そう? 会長の手腕を褒めてた、って聞いたけど?」(反応を見ます)
キーパー: 麻希「確かに垣間さんは結城さんの手腕を褒めていたわね」
史乃: 悔しそう?
キーパー: そんな様子は見えません
美緒: ふむむ……
史乃: 「甲斐さんのことは、ご存じですよね?」
日下部 麻希キーパー: 麻希「ええ、もちろん。何度か予算計画の練り直しを進言したけど、最後まで決定事項を曲げようとはしなかった。頑固者だったけど、それがあの子の良い所であったのでしょうね」
史乃: 「甲斐さんは、亡くなる前、あなたの案を褒めていたそうですよ」
キーパー: 麻希「褒めていたのではなく、少し弱音を吐いただけのこと。結局、甲斐さんは計画通りに予算を遣り繰りしたもの」
堂本: よーく観察。動揺はなしですか?
美緒: 同じく様子見
キーパー〈心理学〉をどうぞ>ALL(堂本だけ成功)。人生経験の長さで堂本には分かりました。麻希は言葉で取り繕ったりはしていません
堂本: くっ
史乃: 「生徒会の要職を占める人間が2人も立て続けに死んで、おかしいとは思いませんか?」
キーパー: 麻希「良くあることとは思わないけど。何が言いたいのかしら?」
史乃: 「これ以上何か起こって欲しくないんです。どんな些細なことでも、何か知っていることが有れば教えて下さい」
美緒: 「赤のQの怪談も何らかの事実を仄めかしているのは確かです。真実にしろ、それを模倣した事件にしろ……」
堂本: 「なんにせよ、怪談の範疇から逸脱しているのは確かなことなんだ」
キーパー: 麻希「犯人探しでもするつもりかしら? 甲斐さんを事故に合わせ、垣間さんを突き落とした犯人がいるとでも?」
史乃: 「いるかもしれないと、思っています」
堂本: 「原因をまず知りたいんだ」
美緒: 「少しでも気になった事を教えて下さい」
堂本: うーむ、こういう場合は交渉役は少ない方がいい、様子見に徹します
キーパー: 麻希「それなら力になれそうにないわ。私は甲斐さんとはそれほど親しくなかったし、垣間さんの時にはあなたたちと一緒にいたもの。アリバイはあるみたいよ?」
堂本: ふーむ、確かに。普通の手段なら
史乃: 「あなたを犯人にしたい訳じゃないですよ。2人には何か共通点がありませんでしたか?」
キーパー: 麻希「生徒会の役員、ていうことかしら?」
史乃: 「そうですか……」
美緒: 今までの情報と同じですね……
史乃: 「でも、あなたは何故そんなに冷静なんですか? それもクサカベの教えですか? 友人が死んだのでしょう?」
キーパー: 麻希「事故と自殺にどれほど動揺しろって言うの? 浮かれた気分ではないけれど、ベッドにもぐって目を瞑るほどショックではないわ」
史乃: 気丈な……
美緒: 出来た人ですね……
堂本: 「ひとつ忠告させてくれるかな? 制御できないものには手を出さない方がいい……、細菌兵器みたいにね」(※この時点で堂本は麻希を黒幕と睨んでいます)
史乃: 「あなたは、会長のことをどう思って居るんですか?」
キーパー: 麻希「私とは意見を異にする事が多いけど、信念を持ってやり通す頑固さと、他者の意見の良所を取り入れて計画を修正する柔軟さを併せ持つ所は評価に値するわね」
史乃: 「意外ですね。会長のことをそんな風に考えてたなんて」
キーパー: 麻希「この三星祭の成功も、結城さんの力が大きかったのでしょう。私の出した意見が間違っていたとは思わないけど、これはこれで記憶に残る素晴らしい記念祭ね」
堂本: かまかけたつもりが、だめだめか……
史乃: 悔しそう?
キーパー: まったくその様子はありません
史乃: 鉄の女だ
堂本: 私はだめだめ
美緒: ますますしっかりものの副会長です
キーパー: 麻希「誤解しないで欲しいのだけれど……」
史乃: 「何をですか」
キーパー: 麻希「私は結城さんのことが嫌いではないわ。非常に優れた生徒会長よ。私が劣っているとは決して思わないけど、彼女は彼女なりに懸命に努力している。それは尊敬すべきところよ」
史乃: 「本当に意外です。会長とあなたとは、感情的な対立では無いんですね」
キーパー: 麻希「クサカベは力の世界です。能力のある者には最大限の敬意を払って当然でしょう?」
堂本: むー
史乃: 「凄いですね、あなたは」
美緒: 「私もそう思います」
史乃: 全然、理性的なんですね?
キーパー: そうですね
堂本: 「立派だね」
史乃: 「ところで甲斐さんが亡くなってから、会長や生徒会は何か変わられましたか?」
キーパー: 麻希「結城さんは心労が増えた様子ね。甲斐さんは結城さんの良き相談相手だったようだし、それが原因かしら?」
史乃: 「心労が? しんどそうなんですか?」
美緒: 「澄香さんもあんな事になってしまいましたし……だからあんなに憔悴していらっしゃったんですね」
堂本: してみると心当たりがあるか、次の犠牲者候補か……?
キーパー: 麻希「甲斐さんの仕事を兼務しているのは結城さんですし、苦労もあるでしょう」
史乃: 「何か、おっしゃっておられたんですか?」
キーパー: 麻希「いいえ。結城さんは私を好いていないようだから」
史乃: 「そうですか? 会長は特に敵対心を持っているように見えませんが?」
堂本: その理由は……?
キーパー: 麻希「反対意見を述べる人を、好きになる事が出来るかしら?」
美緒: 「たとえ意見が対立しても嫌いになる人ばかりじゃないと思います……」
史乃: 「それは、そうですけど。目的は同じなのだし、嫌うこともないと思うんですけどね」
堂本: 押せ押せ
キーパー: 麻希「理屈は正しいけれど、感情まで制御できるかしら? 例えばあなたたちが結城さんの立場だとして、私を嫌いにならないでいられるかしら?」
史乃: 「それはそうですね。あんまり相手が優秀だと、プレッシャーですね」
美緒: 「……です」
堂本: 微笑み
キーパー: 麻希「もし孤立無援の状態だとしたら尚更そうでしょう? 結城さんと甲斐さんは三星祭の予算の件では必ずしも意見を同じくしていたわけではないようだし」