赤い闇をさまようもの

V:“タケ”

キーパー:スマホの調査から行ってみますか。雅也の部屋に行けば潔はいます。(荒井潔)「どうぞ、どうぞ、調べてみてください」
須堂:「どうも」
キーパー:通話ですが、結構頻繁です。一日に何度もかけている時もあれば、間が一週間以上開く場合もあります。通話履歴はかなり遡れます。つまり、雅也と“タケ”は三ヶ月以上前からずっと知り合いだったのでしょう。
泰野教授:“タケ”が会社に在籍中からずっと知り合いだったってことか。
須堂:メールの類はどうですか?
キーパー:メールもありますが、どれもごく短いもので、「集合は○○で」とか「明日は×時に」とかの事務的なやり取りです。どうやら彼らは頻繁に会っていたようですね。
須堂:荒井雅也がdoor.mp3を作成していたと思われる失踪一週間前の履歴はどんなもんですか?
キーパー:“タケ”以外からの着信がいくつかありますが、どれも不在着信で通話はされていません。最後の発信は荒井雅也から武ノ内猛へのもので、武ノ内猛が電話に出なかったために通話はされませんでした。
泰野教授:「完成したよ」コールかな?
須堂:そうですね。そしてそれ以降は着信拒否になったんだ。

キーパー:次は宝石か。〈図書館〉ロールをどうぞ。
白田:(コロコロ……)33、成功。
キーパー:「サングイス・クリスティ」ですが、まぁ、一般名詞です。赤い、おそらくはルビーとかの宝石にはその名がつけられた物が多々あるでしょう。「サングイス・クリスティ」というユニークな宝石があるわけではありません。
新城:聖遺物ですからな。
泰野教授:ナンボでもあるわな。
キーパー:「キリストの鼻」とかならユニークは考えられますが、「キリストの血」はありがちと言えばありがちです。
白田:儀式に使われた「サングイス・クリスティ」とかの記述はありませんか?
キーパー:あるよ、たくさんある。聖遺物を儀式に使うのはむしろ普通じゃないかな。とりあえず、少なくとも調べた書物の図像の中に荒井雅也の部屋で見つかったものと似た物はないね。

キーパー:次は内山設備工業ですね。
泰野教授:では名刺に書いてある住所へ行ってみます。
キーパー:場所はすぐに分かります。事務所の入り口を入ると受付があって、そこに座っていたお姉ちゃんが顔を上げます。(受付)「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
泰野教授:“タケ”の名刺を見せながら、「以前、こちらにいらっしゃったこの方が、今、どちらにいらっしゃるのか教えていただきたくて。どうしても連絡を取りたいのです」
キーパー:(受付)「武ノ内君は一身上の都合で退職しました」どうやら、彼は電話で退職の意思を伝えてきて、そのまま出社しなくなったとのことです。「最近の若い子は……!」などと文句を垂れています。
新城:彼の知り合いで行方不明になっている人(※荒井雅也)がいる、と。家族の人に携帯を見せてもらったりして、最後の履歴に武ノ内さんの番号が残っていました。行方不明になった人の部屋からこの名刺も出て来たので、どうにか武ノ内さんからお話を聞きたいのです、と話します。
泰野教授:「本来こういうことは難しいとは分かっているのですが、どうしても話を聞きたいので、彼がどこに住んでいるのかを知りたいのです」
キーパー:ということで〈説得〉ロールですね。
泰野教授:(コロコロ……14)OK。
キーパー:(受付)「そういうことでしたら……」ということで、住所を教えてもらえます。万座区にある「ヴィラ・ソレイユⅢ」808号室とのことです。「何かあっても、うちが教えたということは、どうかご内密に」
泰野教授:「それは絶対に口外いたしませんので」重々お礼を言って立ち去ります。そんなに遠くないよね? 早速行ってみようか?
新城:行ってみましょう。


キーパー:「ヴィラ・ソレイユⅢ」808号室の前に来ました。
泰野教授:まずはインターホンを押してみましょう。ピンポーン、ピンポーン。
武ノ内猛キーパー:中からの反応はないですね。まぁ早い話、武ノ内猛が中にいると仮定した場合、説き伏せて扉を開けてもらうには〈説得〉です。何か条件を提示して譲歩を引き出すなら〈値切り〉です。さもなくば〈鍵開け〉です。
泰野教授:中にいると想定して〈説得〉で外から呼びかけます。「いきなりで申し訳ありませんが、荒井雅也さんのことについて少しでもお話を聞かせてくれませんか? もし困っていることがあれば、何か力になりたいのです」 (コロコロ……)成功。
キーパー:ではしばらくするとガチャっと扉が開いて、髪の毛を金色に染めた若い男が顔を出します。かなり憔悴している様子が見られます。(武ノ内猛)「……どちらさん?」
泰野教授:「荒井雅也さんの知り合いで、こういう者です」と名刺を差し出します。「実は雅也さんのお父さんから相談を受けて、彼を探しているのですけど」
キーパー:(武ノ内猛)「……もう、俺、カンケーないけど。とりあえず、入って」と言って武ノ内は二人をカーテンが閉め切られた部屋の中に入れてくれます。
泰野教授:「荒井雅也さんとはお知り合いだったんですよね?」
キーパー:(武ノ内猛)「俺と雅也クンは廃墟マニア同士で、良くつるんでいたんだ……」

 武ノ内猛は以下の事実を語りました。
 彼と荒井雅也は廃墟マニアで、連れ立って廃墟めぐりなどをしていました。三ヶ月前に二人は白凰市と鬼別郡の境の山中にある、白凰市ではそれなりに有名な廃墟「赤衣聖母教会施設跡」へ行きました。そこで「扉、開かば」の台本、八ミリフィルム、赤い宝石を見つけ、それを持ち帰りました。
 雅也の部屋で、二人は八ミリフィルムを見てみました。フィルムにはオペラ「扉、開かば」を演じる数名の男女が映っていましたが、オペラのクライマックスで赤いライトが点けられると、突然、演者たち全員が消え失せてしまったのでした。

キーパー:(武ノ内猛)「それを見て、俺、ビビっちまってさ。でも雅也クンは逆にスゲーもの見つけたって盛り上がってた。俺は台本と宝石とフィルムを雅也クンに渡したよ。それらの品とフィルムの映像について警告したけど、雅也クンは何か確かめたいことがあるって言って聞く耳持たなかった」
新城:「……ふむ」
キーパー:(武ノ内猛)「マジでブルっちまった俺は外に出るのも億劫になっちまって、会社を辞めて、引きこもりみたいになっちまってるって話さ。三ヶ月くらい前かな、一度だけ雅也クンから電話があったけど、あまりに恐ろしくて、その電話には出られなかった。あの日以来、雅也クンからの電話は着拒にしてる」
新城:「実は荒井雅也さんは……」ということで彼が行方不明であることを話して、部屋の中の状況を説明します。「確かめたいことがあると言っていたとのことですが、それが何なのかまではご存じないですか?」
キーパー:(武ノ内猛)「もしかしたら、フィルムの再現を試したのかもしれない……。それがどんなことを意味するのかは知らないし、知りたくもないね」
泰野教授:「よく話してくれましたね、ありがとう」と礼を言って部屋を出ます。


泰野教授:赤衣聖母教会って、どこにあるの?
キーパー:白凰市中心街から、車で半日くらいの場所です。
泰野教授:……八ミリフィルムを探すか、教会へ行くか。先に八ミリフィルムかな?
新城:雅也の部屋にあるはずですからね。教会までは半日かかるってことですから、距離的に今日の調査はできないでしょう。
キーパー:色々やってもう夜です。次のアクションは翌日になるでしょう。
白田:じゃあ、また焼き肉「獣汁(※ジュージュー。店名決定)」に集合ですか。
泰野教授:肉を焼きながら情報交換をして、「とりあえず、明日になったら八ミリフィルムを探しましょう」


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