赤い闇をさまようもの

VI:戦りつの映像

八ミリフィルムキーパー:荒井潔に許可を得て雅也の部屋でフィルムを探すと、ダイニングに積み上げられた諸々の中からすぐに見つかります。映写機もありますね。映写機には「レンタルの○○社」みたいなシールが貼られています。
一同:おお!
泰野教授:今頃、滞納の料金がかさんでいるだろうね。さて、上映会ですな。ダイニングの壁に映しますか。
キーパー:ではダイニングルームを暗くして映写機を動かすということで。映写機には説明書も付属していて、操作方法は分かります。荒井潔はタイミングよく「ちょっと買い物に行ってきますので、留守をお願いできますか?」とのことで退場します。
泰野教授:「……じゃ、始めるわよー」 カチッ(※電源ON)
キーパー:カタカタカタ……という八ミリフィルムの回る音が聞こえてきます。折よく(?)ゴロゴロと雷の音がして、空模様も崩れてきて八ミリ上映にはおあつらえ向きの暗さになります。

八ミリフィルムに記録されていた映像

 どこか礼拝堂のような場所。その片隅にカメラが据えられ、この映像は撮られている。
 画面の奥には大きな、赤く塗られた聖母像が見える。その聖母像の前で、三名の男女がオペラを演じているようだ。ただし、オーケストラの規模は圧倒的に足りておらず、どうやらヴァイオリンや管楽器が5~6種類といったところだろう。二人の男性歌手も見るからに素人で、オペラの発声方法をどうにか真似ている学芸会のようだ。
 聞き取りづらい音声と、大部分が乱れた映像から察するに、どうやらアルマンドという王が、王弟であるピエトロの何らかの行動を叱責している場面らしい。
 やがてピエトロはアルマンド王の首を絞めて殺害し、画面中央にある(小道具の)篝火に火を点ける。すると、照明に赤いパラフィン紙が掛けられたように画面は赤く染まり、それと同時に歌手たちの姿が消え、オーケストラの演奏も聞こえなくなる。
 映像はそのまま赤く染まった無人の礼拝堂と画面奥の聖母像を映し続け、やがてフィルムが切れて録画は終わる。

泰野教授:その消えたって言うのは、本当にフッと? スーッという感じではなく?
キーパー:パッと消えました。忽然と、という感じでしょうか。このような映像を見た皆さんは正気度ロールをしてください。成功すると1D3、失敗すると1D6ポイント正気度を失います。
須堂:(コロコロ……)成功、1ポイント喪失。
泰野教授:成功、2ポイント喪失。
新城:失敗、5ポイント喪失。しかも〈アイデア〉ロールもすごい勢いで成功(泣)
白田:失敗、5ポイント喪失。〈アイデア〉ロールも失敗。
キーパー:では新城はフィルムが終わった後も、白い光だけになった画面を瞬きもせずにジーっと見つめ続けます。新城は〈クトゥルフ神話〉技能1%上昇します。
新城三郎新城:よし! 着実に増えつつあるっていうね。6%になりました。鼻水と涎を垂らしながら、食い入るように見つめ続けています。
キーパー:白田は思わず「なんじゃこりゃあ!!」と大声を上げて、ちょうど帰ってきた荒井潔をビクリとさせます。(荒井潔)「ど、どうしましたか!?」
白田:「なんじゃこりゃあ!?」
キーパー:白田は大いに恐怖はしたけど、理性的に行動することは可能です。〈精神分析〉で狂気に陥った仲間を落ち着かせることができるよ。
白田:(コロコロ)成功。「しっかりしろ!」
新城:「ハッ!?」 助かりました。
キーパー:とりあえず、荒井潔が作り置きしてあった里芋の煮っころがし(※超美味)を振る舞ってくれたので、全員落ち着きを取り戻しました。今後、新城はこの八ミリフィルムに関する技能ロールには必ず失敗するということにしましょう。
新城:なるほど。分かりました。
キーパー:映像は一時間弱のものでしたが、初めの20分くらいオペラが映されていて、その後は無人の礼拝堂らしき場所と聖母像が映されていました。新城以外の探索者はこのフィルムを見たことで、とりあえず〈写真術〉ロールをしてください。
泰野教授:(コロコロ……)成功、取っておいて良かったわ~ん。
キーパー:この映像は起きたことをそのまま記録したもので、何も捏造されていないことが分かります。
泰野教授:「この映像は、合成や特撮ではないわ」
白田:「冗談キツイですよ、先生……」
キーパー:続いて音楽関連の〈芸術〉〈製作〉技能ロールを。
須堂:(コロコロ……)32! 成功!
キーパー:じゃあモブ夫(※=須堂)には、この映像には映っていないにもかかわらず、第四の歌手がいることが分かります。歌声は聞こえませんが、あたかもいるかのように、劇は進行していました。
須堂:映像には三人しか映っていないけど、もう一人、第四の歌手がいる?
キーパー:君は『扉、開かば』を読んでいたよね? それなら分かるけど、おそらく映っていないのは王妹マリア役です。映像は、王妹マリア役がいるかのごとく、演じられていました。それに気づいてしまった君は正気度ロール(※正気度ロールには成功して、喪失なしでした)
新城:マリアのパートでは「シーン」と沈黙があるけど、それを受けてまた誰かが歌い始めるって感じですか。
キーパー:須堂には理解できますが、ピエトロ役は中年の男性です。アルマンド王はピエトロよりも年上の、老年男性が務めています。賢者は20歳にも達していないような若い女性がやっています。
一同:ほほ~。
泰野教授:その全員が消えてしまった、と。
キーパー:残されたのは静寂と赤い聖母像だけでした。つまり、画面には映っていなかったオーケストラの奏者たちも消えてしまったことが推察されます。
泰野教授:「……荒井君は、これを試してみたのね」
新城:この礼拝堂っていうのが、きっとタケの言っていた廃墟のことですよね。行ってみますか、現場へ。
泰野教授:廃墟っていうのは、どういうレベルで廃墟なの?
キーパー:そこは事前調査をすれば判明するでしょう。
須堂:廃墟マニアのサイトに写真とかが上がっているかもしれませんね。
泰野教授:そもそも教会はいつまで使われていたんだろう? 図書館へ行って、その辺から調べます。
新城:廃墟に行くなら何かと準備した方が良いですよね。懐中電灯とか。ホームセンターで装備を整えます。白田君も荷物持ちで連れて行きます。


キーパー:調査をする人は〈図書館〉ロールをしてください。ネット検索も〈図書館〉です(コロコロ……泰野教授&須堂はロールに成功)。

泰野教授が図書館で調べ出した「赤衣聖母教会」に関する情報

 1974年に興ったキリスト教系新興宗教。教義は「神の扉は何人にも開かれている」。
 工務店を経営していた教祖・杉田敏明が、夢のお告げにより全財産をはたいて作りあげた。崇拝者は教会建物で共同生活をしていた(男性4名、女性9名)。
 1982年8月15日(聖母被昇天の祝日)に教祖以下崇拝者全員が忽然と姿を消し、集団失踪事件として新聞報道もされた(未解決)。姿を消した教団員がその後一人も発見されていないことから、集団自殺を図ったとの説もある。教団施設はそのまま放置され、現在に至る。

キーパー:ものの本には失踪した教団員の名簿も載っています(※赤衣聖母教会信者の名簿を渡す)。おそらくオペラのピエトロ役が教祖の杉田敏明、賢者は伊東麗華、アルマンド王は戸崎一志だったのでしょう。
泰野教授:事件に関するその後の記事はないのかね?
キーパー:続報はないですねぇ。

須堂がネットのオカルト掲示板で手に入れた情報

 赤衣聖母教会は心霊スポットとして一部のマニアの間で人気がある。現場に突入したレポートもいくつかあり、「写真を撮ったら無数のオーブが……」や「どこからともなく呻き声が……」といった他愛のない体験談が添えられているが、それらに共通するのが「教団建物を出る際に、何者かに声をかけられる」という怪談である。

新城:その声は、何て言っているんですか?
キーパー:聞き取れないそうです。あるいは、日本語ではないのではないかと。突撃したレポートからは足場の悪さや、内部の暗さが分かるので、準備すれば良いものは分かります。
須堂:それは準備部隊にメールで指示を出します。
泰野教授:なんか、テンション上がってきた (゚∀三゚三∀゚)


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