赤い闇をさまようもの

IX:真の赤い闇の領域にて

新城:よしゃ。それじゃ、やってみましょうか。
キーパー:翌日、新井雅也のマンションに行くと、荒井潔が皆さんを迎えてくれます。(荒井潔)「ああ、皆さんお揃いで。どうされたのですか?」
泰野教授:ではマリア役用のセクシーな衣裳を着た私が進み出て「これからオペラを演じます」
一同:(笑)
キーパー:(荒井潔)「え、えーと? 皆さん何をされるのですか?」
泰野教授:「もしかしたら、これで息子さんを救えるかもしれません。手がかりが得られるかもしれないんです」
キーパー:そう言われれば、荒井潔は怪訝そうに首をかしげながらも、ダイニングの隅に立って皆さんのやることを傍観します。
須堂:リビングルームの照明を赤い電球に代えます。後はmp3プレーヤーと宝石サングイス・クリスティを持ち込みます。
新城:我々4人はリビングルームの中に入って、内側から目張りをします。赤い照明を点けて、準備完了。


キーパー:オペラの配役はどのように?
新城:(投げやりに)「じゃー、先生がーマリア役でー」
泰野教授:「……何が不満なのよ?」 結構、気合を入れたコスプレをしています(笑)
新城:ではここは一つ、私がアルマンド王役を。
須堂:私は台詞の少ない賢者役で。白田君がピエトロ役をお願いします。mp3再生開始。

新城:(アルマンド王)「何故に、そなたらの血は穢れてしまったのか。我らは同じラファエルの裔であったはずなのに」
白田:(ピエトロ)「王よ、退かれませ。その扉を抜け、篝火を焚かねばなりませぬ故に」
泰野教授:(マリア)「把手なくして闇を抜けること叶わじ」
須堂:(賢者)「王よ、退かれませ。神(アズトウト)に道を示さねばなりませぬ故に」
新城:(アルマンド王)「民も、我らも、もう神を必要とせぬ」
泰野教授:(マリア)「求めよ、さらば与えられん」
キーパー:といった感じで、オペラは進んでいき、アルマンド王はピエトロに殺害され、篝火が灯されます。ふと気づくと、皆さんは自分たちが荒井雅也の部屋ではない、別の場所にいることに気づきます。

 そこは全き赤の空間であった。
 不恰好に目張りされたリビングルームの光景は消え、天井も床も壁も、電球もテーブルも宝石も、何もない。自分が立っている意識はあるが、足下に床があるのかは定かではなく、あるのは、ただ、赤だけだった。「扉、開かば」の音声はもう聞こえない。
 そこには二人の人物がいた。一組の男女で、互いに身体を密着させて抱き合っている。そのように見えた。
 男の方は荒井雅也に違いない。彼はうっとりと目を閉じ、かき抱いた女に頬擦りしている。汗と、排泄物と、精液の臭いが混ざった汚臭が夢見心地の荒井から放たれている。
 赤い服を着た女の方はやや顔を俯かせ、立ち尽くして荒井のしたいようにさせている。その様子は、狂人がマネキンにすがり付いているかのように見える。荒井の体液にまみれてはいるが、女が絶世の美女であることはすぐに分かった。その顔をはっきり見たのは初めてだが、この女が赤衣聖母教会の赤木マリアに違いない。そう確信できた。

赤木マリアキーパー:真の赤い闇の領域に入ったので、正気度ロールをしてください(新城が2ポイント、その他の探索者は1ポイントずつ喪失)。赤木マリアはこんな感じの女性ですが(イラストを見せる)、彼女は見る探索者によって容姿が違うので、どのように見えるかこのアンケート用紙に書いてください(アンケート用紙を配る)。自分のキャラクターが理想とする女性の姿を、彼女は取ります。

 後日、赤木マリアについて探索者が話し合った際に判明することですが、各探索者には彼女が以下のように見えていました(結構、似通った結果になりましたね)。

泰野 加代子 新城 三郎 須堂 建次 白田 学
年齢 25歳くらい 23歳くらい 25歳くらい 20歳くらい
髪の長さ 普通
髪の色
髪形 ストレート ストレート ストレート
体形 グラマー スレンダー 普通 普通
身長

キーパー:さて、どうしますか?
白田:じゃあ、赤木マリアから荒井雅也を引き剥がす?
新城:違う、違う! 取っ手を使って百扉回廊に入る!!
白田:あ、そうか。
泰野教授:ガチャっと。
キーパー:右手の取っ手を掴んで、入り口を開ける。では1D100をロールしてください。どこか別の次元へ迷い込んでしまう可能性があります(コロコロ……誰も迷い込みませんでした……クソッ)。右手の取っ手を掴んで入り口をくぐると、光源不明の赤い光に照らされた、緩くカーブして先が見通せない廊下に入りました。廊下の両側には無数の扉がついています。それらはドアだけではなく、障子や襖、シャッターなどもあります。
新城:考えられる限り、あらゆる“扉”といえるものがある感じでしょうね。
キーパー:廊下に立っているのはあなた一人で、仲間の探索者たちの姿はありません。おそらく、この“扉”の内のどれかが自分専用の出口なのでしょう。百扉回廊に入り込んだことにより、全員1ポイント正気度を失います。皆さん、どのような“扉”を開けますか?
百扉回廊からの帰還泰野教授:普通の取っ手がついた、所謂ドア。
白田:障子をスーッと。
新城:バスルームについている中折れの折り畳み戸。
須堂:昔の勤務先の、銀行の金庫扉。
キーパー:それぞれの扉を開けると、そうですね、先生は荒井雅也の部屋のトイレの扉からダイニングルームに出てきました。白田は浴室の洗濯室の扉から、新城は玄関扉からダイニングルームへと入ってきたところです。須堂は浴室の扉から出てきて、洗濯室を出て行く白田の背中が見えます。
一同:おおっ!
キーパー:全員がダイニングルームに現れたのを見て、荒井潔が「あ、あれ!? 皆さん、リビングルームにいたんじゃなかったんですか!?」と驚いています。百扉回廊からの出口を使ったことにより、正気度をさらに1ポイント失います。
新城:お父さんの脇をすり抜けて、リビングへ通じる扉を力づくで開けます!
キーパー:内側から目張りをされているので若干抵抗がありますが、STRロールが必要なほどではありません。バリバリっと目張りを引き剥がしながら扉を開ければ、ダイニングルームの蛍光灯の白い光が、赤く照らされたリビングルームへと射し込んでいきます。リビングルームの中には赤木マリアと荒井雅也がいます。サーっと赤い光が浸食されていって、赤い闇の虚無空間は消えていき、テーブルや目張りといった部屋の中にあるものが見えてきます。
新城:よしよし!
キーパー:マーテル・ルブルム(=赤木マリア)は存在が薄くなっていき、消えつつあります。彼女は最後にこのように言います。

 ヘイ、アア=シャンタ、ナイグ。立ち去るがよい。二度と再び千なる異形の我に出会わぬ事を宇宙に祈るが良い。さらばだ、泰野加代子、白田学、新城三郎、須堂建次よ。このことは忘れるでないぞ。我こそは這い寄る混沌、ニャルラトテップなれば。

一同:「……」
キーパー:後には裸電球の赤い光に照らされながらも、半ばダイニングの蛍光灯の白い光に浸食されたリビングルームが残ります。そして荒井雅也は縋りついていた対象を失って、「マリア!!」と絶叫してリビングルームを這い回り、剥がされた目張りを元に戻そうとします。
泰野教授:皆で取り押さえましょう。
キーパー:取り押さえられると、雅也はすぐに気を失ってしまいます。「え!? 雅也!? どこから!?」と荒井潔は驚愕しながら雅也を取り押さえるのに力を貸してくれました。
新城:とりあえず汚れた身体を清めたら、病院へ連れて行きますか。


前へ 表紙へ 次へ