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キーパー:二日目です。ホテルで朝食を終えて、伊武が来ると言っていた10時頃からロビーで待っていましたが、約束の時間になっても彼は姿を見せません。 新城:? 表に出てキョロキョロと。 ![]() 佐村:「昨日はどうもありがとうよ」 キーパー:(盛屋)「いえいえ。どうされたのですか、何かをお探しで?」 新城:「実は10時にここで伊武さんと待ち合わせをしていたんですけど、来ないのでどうしたのだろうと……」 キーパー:(盛屋)「そうですか。電話はしてみました?」 新城:「電話は調子が悪いと聞いていまして」 佐村:「伊武の家に行こうにも足がなくてよ」 キーパー:(盛屋)「そうですか……。実はこれから奥宮へ行こうと思っていまして、伊武さんの家は道すがらになりますから車で送りますよ」 新城:「え!? よろしいんですか?」 キーパー:(盛屋)「車を回してきますね」しばらくすると新車の真っ赤なヴェルファイアがホテルの前に横付けします。 一同:(爆笑) キーパー:(盛屋)「どうぞ~」と言うと、自動スライドドアがウィーンと開きます。皆さんを乗せると車は滑るように静かに発車します。昨日の伊武のハイエースとは大違いですね。 新城:「これから奥宮へお掃除にでも?」 キーパー:(盛屋)「ええ」 佐村:「そんなに汚れるもんなのかい?」 キーパー:(盛屋)「いいえ、汚れは大したことはないのですが。宮司が神様の所へ行くのに理由が必要ですか?」軽くキレてます(笑) 一同:(笑) キーパー:やがて舗装された道を逸れて、真っ赤なヴェルファイアは伊武邸へ続く未舗装の道をたどります。伊武邸の前には舗装されていない駐車スペースがあるのですが、昨日皆さんが乗った中古の白いハイエースは駐車スペースに停まっています。(盛屋)「ハイエース、ありますね」 新城:「……ありますねぇ」 キーパー:(盛屋)「伊武さん、いるんじゃないですかねぇ。とりあえず、奥宮からの帰りにもう一度寄りますよ。もし伊武さんと話がついて出かけるようなら、別に私のことは待たなくても良いので。どうせ帰り道ですから」 新城:「お気遣いありがとうございます」 キーパー:真っ赤なヴェルファイアは切り返して車の向きを変えると走り去ろうとしますが、運転席側の窓が開いて盛屋が顔を出してこう言います。(盛屋)「もし家の中にいなかったら、裏庭とかも探してみてください!」 新城:「裏庭!? はあ、分かりました!」 キーパー:改めて、赤いヴェルファイアは深緑の中に走り去りました。 新城:「……目立つなぁ」 須堂:(笑) 新城:「すいませ~ん」と表から声を掛けてみますが。 キーパー:あの建付けの悪い玄関の引き戸は開けっ放しになっています。 新城:開いている? 中を覗きながら「伊武さ~ん?」 キーパー:伊武の靴はないですね。 須堂:では裏庭か、屋外で作業をしているか。昨日、山菜も採れると言っていたし。 キーパー:昨日みんなで座ってコーヒーを飲んだ土間に置かれたテーブルの上に、『観察日誌』と書かれたノートが置かれています。 佐村:「んん~? 奴の研究成果かな? ちょっと見てみるか」 新城:パラっと。 ![]() 新城:「おお? デケェな」 須堂:「凄いな」 キーパー:現実にはもっとデカい種も存在するようですが、日本でこの大きさのものはなかなかないですね。何かの樹木の種だろうと伊武は記しています。植物学者の伊武でも、正確な種類は分からなかったようで、外見はイチジクに似ていると書いています。 新城:その辺りは専門家らしい所見ですな。 キーパー:植えて、ほんの数日で芽が出て、3月の初めには「椰子の実に似た実が生った」と書いています。 佐村:「……早くね?」 須堂:「……早いね」 キーパー:「実の下部から肉趾のようなものが生えてきた。なんだか不気味だ」と続いています。 一同:「……」 キーパー:4月の記述によると「その実は女性の身体のような形をしている。それは、成実の身体の特徴を具えている」 一同:ほほう……。 キーパー:5月になると「実は髪の毛で樹からぶら下がった。その顔は間違いなく成実のものだ。成実が帰ってきた。さぁ、 早く目を開けておくれ」と書かれて、それが最後です。 新城:今から一ヶ月くらい前ってことですね。「須堂さん、コレって……」 須堂:「……ガチ案件だね、きっと」 佐村:「本人がそれで救われているなら……」 新城:「佐村さんは(クトゥルフ神話のこと)知らないんですよね……」ニヤニヤ。 須堂:ニヤリ。 佐村:「ん~?」 新城:日誌をそっと閉じます。やはり、伊武さんは屋内にはいないんですよね? 裏庭に行ってみましょうか。 須堂:行ってみましょう。
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