嗤いゑびす



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キーパー:明けて11月24日になりました。葬儀は昼前ぐらいからやるようです。
村雨:午前中、少し時間がある感じですか……。それなら“下”の藁池家に行ってみませんか?
泰野教授:なるほど。葬儀では会えない感じだしね。
キーパー:「そういうことなら」ということで藁池君も同行してくれます。“下”の藁池家に着くと、今年の神主である当主の男性が、明日の祭の練習を中断して出迎えてくれます。家の他の人たちはゑびす堂の清掃に出かけています。つまり、“下”の藁池家の人たちは祭の準備をしています。
須堂:こちらはこちらで粛々と、って感じですね。特に異常は感じられませんな。

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キーパー:昼前になると漁船に乗って真念寺の住職が港に到着して、葬儀が始まります。葬儀もいたって普通の様式のものですね。
泰野教授:「おおっ!」と目を見張るような特色のあるものではないわけね。
キーパー:お経を上げて、ありがたい法話を聞かせてくれて、軽く酒食を共にして、和尚さんは帰っていきます。そんなこんなで午後になります。
村雨:これでお葬式は解体されるわけですか?
キーパー:まぁ、なんだかんだで夕方くらいまでは飲み食いしたり、片づけしたりで人の出入りはあります。
村雨:今夜、遺体が消えるって現象が発生するって話でしたよね。さすがに遺体のそばにいさせてくれっていうのは無理でしょうから、夜中に起き出して“網”の家をこっそり見張るしかないかな。

 探索者たちは夜中に起き出して“網”の家に向かおうとしますが、なぜか藁池君が目を覚ましません。身体に異変はないようですが、非常に深い睡眠状態に入っているようです。藁池君を無理には起こさずに、探索者たちはこっそりと活動を開始します。


須堂:耳を澄ませてみますが、家の外から何かは聞こえてきませんか?
キーパー:まったくの静寂です。屋内も無音です。
須堂 建次須堂:村全体がこんな感じなんでしょうね……。“水”、かな。藁池君が起きないのは水の総摂取量がトリガーになっているのかもしれない。とりあえず計画通り、我々だけでも“網”の家に行きましょうか。
キーパー:ここで〈聞き耳〉ロールをお願いします(村雨が成功)。屋外へ出ると、水路を流れる水音すらしていないことに気づきます。
村雨:闃とした静寂ですか。
キーパー:水路を見ると、水の流れが止まっています。水が枯れているのではなく、流れが止まっている。
村雨:え? 触ってみますけど。凍っているとかじゃないんですよね?
キーパー:ポチャンと普通に触れます。澱んでしまっている感じなのですが、いかんせん傾斜地なのでどうして? ってことですね。というわけで正気度ロールですね。
一同:ですよねー(泰野教授が失敗して正気度を1ポイント喪失)。
キーパー:さて、集落はまったく無音です。
村雨:二択でしょ。“網”の家か、ゑびす堂か。
須堂:二手に分かれるという選択も(笑)
村雨:なるほど。必殺の手だな。必“殺”というより必“死”だけど(笑)。水源を見てみたいってのはありますよね。
泰野教授:でも、集落全員が寝ているのなら、“網”のところの遺体を見られるチャンスかもしれない。……でもでも、大学教授というキャラクター的にはゑびす祭の調査に重きを置きたいんだよね。う~ん。
村雨:それを言うと、オレは医者なので遺体がどうなるのかが気になりますけどね。
須堂:……二手に分かれますか? それも手だと思いますよ。リスクもありますが、どちらかの真相には確実に近づける。
村雨:メタ的に言えば、遺体がどうなっているのかは分かりませんし、このタイミングで何かが起きるかどうかも確実じゃないんですよね。でも今、水は確実に止まっているので、ゑびす堂に行くのはこのタイミングだと思うんですよ。医者的には遺体に関する真相を知りたいですが、今はゑびす堂に行くのがベターかもしれませんね。
泰野教授:そうだね。「ゑびす堂へ行くわよ」

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キーパー:ゑびす堂に向かって上っていきますが、当然のように水路の水の流れは止まったままです。お堂の裏の崖から出ていた水は止まっていますね。
泰野教授:止まっている? ほう。
キーパー:水が出ていた穴が見えていますが、そこからの水の供給は完全に止まっています。ここで〈聞き耳〉+20%でロールをしてください。闃とした静けさなのでボーナスが付きます。
須堂:04で成功です。
キーパー:すると集落の方からお堂に向かって上って来る足音が聞こえてきます。
一同:お堂の後ろに隠れます。
キーパー:分かりました。お堂の後ろに隠れて見ていると、月光の下、人が1人歩いてきました。皆さん見覚えがあるので分かりますが、“網”の藁池家の喪主ですね。彼は遺体を背負っています。
泰野教授:ああ~。
村雨:「……期せずして、求めていた答えが出たってことか」
須堂:「そうなりますね」
キーパー:喪主、藁池晴夫という名前ですが、その目は虚ろです。皆さんに気づく様子はまったくなく、スタスタと歩いて水が湧き出ていた崖の所まで行きます。すると、突然崖の岩肌にパッと穴が現れます。そしてその中にスッと入っていきます。同時に穴は消えて岩肌に戻ります。ということで諸々含めて正気度ロールです(村雨が正気度を1ポイント喪失)。
村雨:お堂の影から出て、岩肌を調べます。
キーパー:硬い岩肌です。
泰野教授:入れないってことかぁ。
村雨:喪主が帰ってくるのを待って、開いた瞬間に飛び込むっていう手もありますよ。その後、オレらは帰ってこられないかもしれませんが。そもそも、この道を通って帰ってくるって条件付きですが。
泰野教授:う~む。
須堂:ある意味、謎は解けた。そして我々は深入りしたらダメであることを知っている(笑)
村雨 來栖村雨:いやいや、謎なんてぜんぜん解けてないよ。なんで水は止まったんだよ? どうして村人は眠りこんで起きないんだよ? 探索者は傍観者じゃないぜ。
泰野教授:ふ~む。
村雨:なんで穴に入れないのか? 遺体を背負っていないからなのか、水を飲んでいないからなのか?
泰野教授:水ってことなら、島に来てから我々も飲み食いはしているので、摂取はしているよね?
須堂:大量に、ではない。量が問題になるとするのなら。
村雨:期間、とかね。
泰野教授:とりあえず何かが足りていないんだ。……今、目を覚ましている時点で資格を満たしていないのか。
キーパー:小一時間ほど待っていると、同じ場所に穴が開いて、喪主だけが戻ってきて、穴はスッと消えます。喪主は依然として夢うつつの状態で、てくてくと自宅の方へと戻って行きます。同時に、ザーッと水の音が聴こえ、流れも元に戻ります。
村雨:とりあえず、詣り墓、埋め墓について追えるのはここまででしょう。次の死者が出るのを待つっていうのは無理がありますからね。藁池君との約束で、この件について聞き込みをするわけにもいきませんし。
泰野教授:あとはゑびす祭についてか。学問的にはこっちがメインだけど、今回の件と何か関係はしていそうだけどね。
村雨:“角”の家に戻って、何もなかったかのように寝る感じですかね。

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キーパー:11月26日になります。いよいよ、明日がゑびす祭となります。
泰野教授:ゑびす祭の準備に参加しましょう。でも、そんなに大規模じゃないんだろうけど。
大根キーパー:そうですね。まわり神主の“下”の藁池家では料理の準備がされているようですけど、他の家はゑびす堂へ続く道を掃き清めているくらいです。この日は午前中に大根の収穫をして、えびす堂に供えます。
泰野教授:おお! そうだった。
キーパー:ゑびす堂に供えた後、大根料理を開始するようです。「常島に来たからには、是非とも大根料理を味わってもらわなくては!」と強く勧められます。
村雨:何か今日中にしておくことってあります? あと半日。
泰野教授:明日の昼までは、田舎の祭に参加して終わりになる気がするんだよね。我々にとってメインはゑびす祭の夜の部になってからなわけで。
須堂:前日の準備について、写真等を取っておくくらいですね。