#3 香住 薫




(アクション・1)

1AP目:厨子神社に行く(厨子神社)
 (もし会えたら)宮司に、25年周期の大量死と、夜婚の儀の目的について質問する。

2AP目:夕貴に会う(香住家)
 もし、夕貴がいなかった場合、須美子に25年周期の大量死についてどう思っているか質問する。

3AP目:沙奈枝に会う(香住家)
 自分の気持ちが祁堂礼一と同じく、同情や憐憫から成っているのか確かめる。



(同盟申請)

 このたび、私、香住薫は、楢須藤竜一、玉木司、天野信一、の3人と同盟を結成することと相成りました。

 以後、このメンバーで情報交換することになりますのでよろしくです。



(リアクション・1)

【厨子神社に行く】
 厨子神社の境内には10名以上の村の男衆が集まり、厨子夜婚の儀の準備に奔走していた。男衆の真ん中で次々と指示を出しているのは宮司・芦鷹真輔である。
 本殿の正面入り口が開け放たれ、中に祭壇が組んであるのが見える。祭壇の中央には神社の御神体「厨子」が置かれており、祭壇の前には、見張り役といった役どころか、神主装束の男たちが数名いて酒を酌み交わしながら何やら雑談中だ。
 境内は整然と篝火台が並べられ、注連縄や紙垂、幕によって厳かに飾り立てられている。そんな祭儀の仕様の中にあって一際違和感を醸し出しているのが、本来鈴が取り付けられている場所に吊るされた「鐘」だ。鐘と言っても寺社で用いられる釣鐘型のものではなく、どちらかと言うと西洋教会の尖塔に吊るされる「ベル」に近い。

 あなたは真輔に詰め寄り、墓誌に刻まれた命日の一致について、厨子夜婚の儀の目的について質問する。あなたの言葉によって、境内を包んでいた喧騒がピタリと止む。村の男衆たちが息を潜め、あなたと真輔の対峙を見守った。何らかの禁忌が犯されている・・・そんな雰囲気が厨子神社の境内に漂い、あなたを落ち着かなくさせる。
 対して、真輔はまるで動じた様子もない。あなたと真正面から向き合い、こう言い放った。
「それを知って、どうするというのだ?」
 思わぬ答えが返ってきて、あなたはうろたえる。真輔は憤りと言うよりは、憐憫が浮かんだ目であなたを見つめている。声音はあくまで静かだが、それには明らかな拒絶が含まれていた。
「お前の言うことが真実だったとして、どうするつもりなのだ? 厨子夜婚の儀を止めさせると言うのか? どうやって? このわしを殺すか? どうやって?」
 真輔はあなたを見つめたまま首を横に振った。そこには諦めが混じったような、あなたを諭すような雰囲気が感じられた。
「厨子夜婚の儀は止まらんよ。連綿と続けられてきた事には意味がある。50年前を繰り返さぬ事が、わしら今代の厨子村の民の義務なれば」
 謎めいた言葉を吐くと、真輔はクルリと背を向ける。食い下がろうとしたあなたの声が届いていないかのように再び男衆たちに指示を出し、祭儀の準備を進めていく。その態度に崩せない頑なさを感じたあなたは、厨子神社を後にする。
 去り際、境内に玉木司と朝倉圭の姿を認めたが、話をする気分ではなかったので、気付かない振りをした。


【夕貴に会う】
 あなたは香住夕貴に会うために香住邸へ向かった。
 まるで来訪を予知していたかのように、香住邸の門柱に腕を組んで寄りかかりながら、金色の髪の従妹はあなたを出迎えた。
「その様子だと命日の一致には気付いたようだね」
 少し意外そうで、それでも感心したような夕貴の表情。説明を求めるあなたの言葉を黙って聞き終えると、夕貴はあなたの目をじっと見つめ返して話し出す。

 厨子夜婚の儀が執行されると、大量の死者が出るのはほぼ間違いない。そのような危険な祭儀がなぜ連綿と受け継がれているかは知る由もないが、恐らくそれと分かっていながら厨子夜婚の儀は村の総意として執り行われている。彼女の調べた所では、厨子夜婚の儀で嫁神に任命された花嫁は、確実に祭儀当日に亡くなっている。つまり、沙奈枝にもその危険性が高いと推測できる。

「ここからは少し馬鹿げた内容の話になるよ」
 一度話を切ってから、夕貴はそう前置きをして言葉を継いだ。

 厨子夜婚の儀とは、“厨子耶恨(ズシャコン)”と呼ばれる怪神(もしくは神格化された自然現象か?)によって起こされる災厄を鎮めるための儀式であるらしい。嫁神は厨子耶恨に捧げられる人身御供であり、その死は確実に免れないとされている。嫁神の命だけで満足できない厨子耶恨によって村人が多数道連れにされるため、厨子夜婚の儀の際には大量の死者が出るのだ。

「信じる信じないは薫の勝手だよ。でも、私はおめおめと沙奈枝を人身御供になんか差し出すつもりはないの。例えそれが母さんや、香住家や、厨子村全部を敵に回す行為だとしても」
 夕貴はあなたを睨むように見つめながら、そこで言葉を切った。確かに非科学的な馬鹿げた話だ。しかし、目の前の夕貴にあなたをからかったり、騙そうとする意図は感じられない。何か信念以外のものに裏打ちされた、確信を持った様子が伺える。
「沙奈枝を、殺させなんかしない」
 夕貴は最後にそう言って口を噤んだ。

【出題】
 夕貴の言葉を受けての、あなたの反応を決定して申請してください。



(アクション・2)

「沙奈枝を、殺させなんかしない」

 夕貴のその言葉を聞いて、薫は目を閉じ、静かに考えた。
 帰郷する前なら、馬鹿馬鹿しいと一笑に付しただろう。
 今まで薫は、どちらかといえば周りに流される生き方をしてきた。
 だが、薫は沙奈枝に再会し、祁堂礼一に見え、村の異質さを見聞きした。
 そのせいだろうか、夕貴の話すことを何故か受け入れている自分がいる。
(僕も厨子村の雰囲気に当てられておかしくなっちゃったのかな)
 そんな風に考え、苦笑する。
(そう、僕がやるべきこと、やりたいことは・・・)

「で、沙奈枝ちゃんを助けるのに、僕はどうすればいいのかな。夕貴?」

 そう、沙奈枝を殺させたりしない。それは薫にとっても共通の想いだった。


 というわけで、夕貴の行動に同意し、手伝うことにします。
「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。」
 なお、知り得た情報については、夕貴と交換します。
 夕貴の方が多くを知っているでしょうが。



(リアクション・2)

【夕貴に協力する】
 あなたの言葉に、あなたの決意に、夕貴は小さく頷いた。腕組みを解いて、右手を差し出す。逡巡せず、あなたは夕貴の手を握った。柔らかく握り返してくる、従妹の右手。
「頼りにしてるよ、薫」
 夕貴が微笑んだ。それは厨子村に帰ってきてから初めて見せた、彼女の素直な気持ちが花開いた瞬間だった。

 真顔に戻った夕貴は、彼女の収集した情報の残りの部分を語り出す。嫁神の家(今回の祭儀では香住家)には『ゐをどノ書 輝ノ巻』という古文書が受け継がれる。夕貴が厨子耶恨について知ったのは、この書物を読んだ事によるものらしい。
「まぁ、これがその『輝ノ巻』なんだけど」
 事も無げに金糸で飾られた表紙の冊子を取り出す夕貴。どうやらコッソリ(?)持ち出しているらしい。夕貴は『ゐをどノ書 輝ノ巻』をあなたに手渡すと、読むように促す。所々に付箋が貼られており、どうやらその箇所を拾い読みすれば概要は掴めるようになっているらしい。

 古文書曰く、かつてこの地には“暗く静かなるもの”厨子耶恨という怪神が住み着いており、災厄を撒き散らしていた。暴れる怪神に頭を悩ませていた時の天皇は、ある時、術者に厨子耶恨を封じ込めるよう勅令を出す。術者は旧き神・降来主(おりくす)を招来し、厨子耶恨に対抗させる。二柱の神格は666日に渡って争い、ついには降来主が勝利を収める。降来主は厨子耶恨を封印し、その地に封印の監視者を置いた。その監視者たちの末裔によって作られたのが厨子村である。
 しかし、厨子耶恨は完全に沈黙したわけではなく、25年に一度その禍々しい力を振るって暴れ回る。それを鎮めるために執り行われるのが奉贄の儀式「厨子耶恨の儀(=厨子夜婚の儀)」である。この祭儀が婚礼の儀の体裁を取るのは、“ずしゃこん”に「厨子夜婚」の字を当てて血生臭さを覆い隠そうとした、後付けの解釈に過ぎない。

 次の付箋部に読み進む。
 降来主を招来した術者は、厨子耶恨から己が身を護るために、一つの策を講じていた。それが「四神の護符」である。青龍、白虎、朱雀、玄武の四枚の護符があり、これを持つ者が厨子耶恨の災厄から逃れられるという効力を持っている。

 最後の付箋部を開く。
 降来主を招来するために用いられるのが「白と紫の魔方陣」である。魔方陣と言っても数字の配列や図形の配置によって力を発揮する類のものとは違い、色(白と紫)によって力を活性化させる特殊なものだ。<降来主招来>の呪文を詠唱する術者が白と紫の服や装飾品を身につけているだけで良い。その色に反応して、呪力が増幅される。

 『ゐをどノ書 輝ノ巻』を読み終えたあなたは、一つフーッと息を吐く。どれもがにわかに信じられない話だが、宮司の態度や命日の一致から察すると、作り事ばかりではないらしい。何かの仄めかしが怪神譚となって伝わっているのかもしれない。
 書物から夕貴に目を移すと、彼女の白いTシャツと紫のミュールが目に入る。「白と紫の魔方陣」―――。少なくとも夕貴は何らかの真実がこの書物に含まれていると考えているようだ。
(※香住夕貴と同盟関係になりました。今後、夕貴はあなたと行動をともにします)
(※『ゐをどノ書 輝ノ巻』を入手しました)
(※『ゐをどノ書 輝ノ巻』を読んだ事により、【正気】が1ポイント減少します)

 夕貴は今後の計画について、あなたに話す。
 まず、四神の護符の奪取が最重要事項となる。夕貴は護符が厨子神社の御神体・厨子に保管されていると睨んでおり、明日の早朝、監視の目が緩んだ隙に厨子に近付くつもりでいる。この奪取作戦に荷担してくれる協力者を、夕貴は探している。
 第一候補は祁堂礼一。訳を話して、もしそれを信じてもらえたら、礼一の人柄から協力は惜しまないと考えられる。ただし、礼一が御三家縁の者である事は紛れもない事実であり、拒否された場合、あなたと夕貴の身に危険が及ぶかもしれない。
 第二候補は蒼戸空也。胡散臭い人物ではあるが、その口ぶりから厨子村の情報に通じているのは間違いない。村人の反応から察するに、厨子村では歓迎されていない人物だと推測されるので、宮司や御三家と内通している可能性は低い。ただし、全面的に信頼できる人柄であるとは言えない。

【出題】
 同盟後のあなたと夕貴の行動を決定して申請してください。
・祁堂礼一と接触する
・蒼戸空也と接触する
 の行動が可能です。上記二人の他に協力者の心当たりがあるなら、その人物と接触しても構いません。また、協力者を探さずに、予定通りの行動(【香住沙奈枝に会う】)を遂行しても構いません。どの場合も、夕貴はあなたの決定に従います。
 また、香住夕貴との同盟を、あなたの他の同盟者に明かすかどうかも合わせて申請してください。



(アクション・3)

 夕貴の申し出を受けた以上、行動は迅速に起こさねばならない。それには、どうしても協力者が必要だ。だが・・・。
 祁堂礼一。彼の誠実な人柄は、実際に会って確かめたところだ。しかし、薫には彼の諦観したような雰囲気が気になった。あの諦観が自分たちに災いを及ぼすような、そんな気がする。
 蒼戸空也。なるほど、彼は厨子村の事情に通じているようだ。しかし、彼のような人物は、自分の利益のみで動くのではないか。ならば、薫と夕貴の目的を達成する上で必ずしも良き協力者になるとは考えられない。
 ならばどうする。
 そう考えたとき、薫の脳裏にある名前が浮かんだ。
 「玉木 司」「楢須藤 竜一」「天野 信一」。
 彼らはそれぞれ、厨子夜婚の儀に興味をもっているか、その影響を少なからず受けている人物らしい。それならばひょっとして・・・。

「夕貴、これからちょっと付き合ってくれないか」


行動変更:【楢須藤竜一、玉木司、天野信一、の3人に会いに行く】

 行動としては、上記同盟メンバーに夕貴との同盟を明かし、護符の奪取に協力してもらうことにします。



(リアクション・3)

【司、竜一、信一に連絡を取る】
 祁堂礼一、蒼戸空也の両名を信用できないと判断し、自分の協力者たちと夕貴を引き合わせる事にする。夕貴は戸惑った顔をしたが、提案には従った。
 村はずれの廃棄された水車小屋(既に水車は回っていない)を集合場所と決め、司、竜一、信一に連絡を取る。それぞれの用事が済み次第、水車小屋に集まる段取りとし、了承を取り付けた。
 小川べりの水車小屋は廃棄されてから時が経ち、木組みが歪んで隙間だらけの状態だ。その隙間から夕日とともにそよ風が通り抜けるため、小屋内は存外すごしやすかった。椅子代わりとなりそうな木箱を見つけ、あなたと夕貴は腰掛けて協力者たちを待つ。
 膝を抱えるようにして木箱に腰掛けた夕貴が、壁の隙間から外に目を遣りつつポツリポツリと語りだす。

 香住家に女児が誕生した時は、御三家を挙げて嫁神誕生の祝賀の儀が執り行われたのだという。盲目で産まれた沙奈枝は“徴(しるし)”を持つ者として歓迎され、嫁神様として特に大事に育てられる事になる。
 夕貴は嫁神に選ばれなかったおかげで、自由奔放に成長した。物言わぬ沙奈枝に感謝する点と言えば、おかげで家に縛られずに済んだ、その一点に尽きる。長じて夕貴は家を出て東京の大学に入学し、そしてそのまま厨子村には戻らないつもりだった。半年前、沙奈枝の婚約を知らされるまでは。
 沙奈枝婚約の報を受けて夕貴は厨子村に帰郷し、母・須美子が進める結納の準備の手伝いに携わる。大学進学で香住の本宅を出るまでは沙奈枝の世話をしていたので、勝手を知る夕貴を須美子が呼び戻したのだ。
 古式ゆかしい結納の準備をする過程で、夕貴は香住邸の庭の隅に建つ土蔵に入る機会を得る。そして、そこで金糸に飾られた古文書『ゐをどノ書 輝ノ巻』を発見する。
 幼い頃から会話すら出来なかった双子の姉。自分の運命を呪う言葉を吐く事なく、祭儀に則って死んでいく姉。いや、それを呪う心すらない姉。ただ、死んでいくために20年間生かされた姉。
 逆の立場であったなら、正気でいられるはずがない。しかし、幸か不幸か沙奈枝には狂気に至る心がなかった。つまり、夕貴が自由に生きてこられたのは、沙奈枝の犠牲あってこそという事になる―――。

「全てが終わって、沙奈枝も私も生きていたら、その時に言うんだ。“今まで夕貴を守ってくれて、ありがとう”って。その一瞬のためだけに―――命だって張れる」
 膝を抱えたまま、微動だにせずに。
 壁の隙間より忍び込む夜闇の向こうを見つめたまま、夕貴はそう宣言したのだった。



(補記・同盟)

【同盟】
 決して広いとは言えない水車小屋の中に、5名の人間が集った。
 玉木司、香住薫、楢須藤竜一、そして天野信一。互いに見知った顔はこの4人だ。既に互いに知り得た情報を交換しあっている。そして香住夕貴。新しく同盟に加わった、あなたの従妹。

「香住夕貴です。よろしく」
 あなたたちの顔を見渡してから、夕貴は小さく頭を下げた。あなたたちが自己紹介をすると、口の中で名前を反芻しては、頷いている。一通り自己紹介を終えると、思い思いに水車小屋の中で楽な姿勢をとる。夕貴が金糸で飾られた表紙の書物を取り出し、それを回し読みするように促す。書物の題目は『ゐをどノ書 輝ノ巻』。先ほどあなたも目を通した古文書だ。
 しばし、水車小屋の中を静寂が支配する。時には「おぉ」という小声、時には思わず息を呑む気配を残しながら、古文書は次々と協力者たちの手を渡っていく。全員が読み終えたのを確認して、夕貴は口を開く。

「信じるも信じないも、あなたたちの自由です。でも、私はこの書物に記された事が真実だと確信しています」
 薄暗い小屋の中に、幾分低められた夕貴の声が響く。「特に―――」と前置きして夕貴が示したのは、「四神の護符」の件(くだり)。この護符の入手が、明日の厨子夜婚の儀に臨むに当たって最重要事項であると彼女は語った。夕貴の見立てでは、四神の護符は神社の御神体である厨子に収納されているとの事。
「明日の早朝、見張りが手薄な隙を突いて、四神の護符を奪取します。それに協力して欲しいのです」

【出題】
 明日の早朝、夕貴は四神の護符奪取の計画を実行します。その計画に加担するかどうかを決めておいてください。この計画には隠密性が必要とされますので、多人数で当たれば良いというものではありません。適正人数を考えることが重要です。尚、厨子の見張りは3人です。
 もしこの計画が失敗した場合、加担したキャラクターは不利な立場に追い込まれる可能性があります。
 当然、この計画に加担しなくても構いません。加担しないからといって、同盟を抜けなければならない事もありません。
 このアクションは第四話・1AP目にて発生しますので、その時に参加か否かの申請をしてもらいます。