#3 天野 信一
(アクション)
1AP目と2AP目を使って村の診療所を訪ねて行き、以下のことを調査します。
・25年周期の大量死の死因
・楢須藤、天野の母親の失明の関連性、及び原因
・現在、村人に失明している人がいるかどうか
そして、
・花嫁の病状に怪しいところはないか
そして3AP目には、失明している人がいた場合訪ねて行きます。
(リアクション)
【診療所を訪ねる】
診療所の医師は50代の男性だった。口髭をたくわえ、眼鏡をしており、いかにも信頼の置けそうな人物に見える。田舎の診療所らしく、待合室には年寄りの患者が溢れている。もっとも、この内のほとんどは病気や怪我などではなく、雑談を楽しむために診療所に足を運んでいる類の人たちなのだろうが。
患者の波が途切れた所で診察室に入り、医師と話をするチャンスを得た。あなたが自分も医者であることを明かすと、医師は是非後継者として村に帰ってきてくれ、と冗談交じりに言って笑った。
お互いの第一印象は良好なものだった。これならスムーズに話が出来る、あなたはそう確信していた。数分後、その考えが全く見込み違いだったことに気が付くまでは。
あなたが25年周期に起こる大量死の死因について尋ねると、医師の顔は明らかに強張り、談笑していた時とは雰囲気が一変した。医師は急にカルテの整理を始め、あなたに背を向ける。出て行け、とまでは言わなかったが、その態度は露骨だった。患者の死因はプライバシーに関わることだから、親族以外の方には教えられない、と言う紋切り型の答えが返ってくる。
話の切り口を変えて、自分や楢須藤竜一の母親の失明の原因について心当たりはないかと尋ねてみるが、自分は眼科は専門じゃないので、と取り付く島もない。こういう類の頑なさを持った同業者を切り崩すのは並大抵のことではない。ましてや、相手は今日が初対面の人物だ。さすがに難攻不落か。
最後に付け加えるように、この村人に失明している者がいないか確認してみた。答えるか答えまいか逡巡した後、村人に失明している者はいない、との答えが医師から返ってきた。これは真実なのだろう。それゆえ隠す必要がないという訳だ。
医師が次の患者を呼び入れた。本格的に帰ってくれ、という態度に出た事になる。あなたは一言礼を言って、診察室から出ようとする。机の上に広げたカルテから目を逸らさずに、医師は小さな声で言った。
「要らん事に首を突っ込まぬ事だ。どうせ明日にも全ての謎が解きほぐされる事になるだろうから」
振り向いたあなたの横を、患者がすり抜けていく。医師は診察を始め、二度とあなたに目を向けることはなかった。
【診療所を訪ねる】
診察室を出たあなたは、待合室でたむろする患者(?)たちに話を聞くことにする。
先ほどの医師の時の失敗を繰り返さぬよう、違う話題から入ることにする。香住沙奈枝の病状についてだ。
「病状といってもなぁ・・・」
患者たちは一様に顔を見合わせる。
「沙奈枝お嬢さんは生まれつき目と心を持っていなかったから。治療手段のあるものを病気と呼ぶのなら、沙奈枝お嬢さんは病気とは言えんよ。今の状態が、沙奈枝お嬢さんの普通なのだから」
比較的若い、手に包帯を巻いた男性患者(ホンモノの患者だ)がそう話してくれた。患者たちの様子からすると、沙奈枝の“状態”は特に隠されることもなく、村に知れ渡っている当たり前の事らしい。御三家の息女であり、嫁神様でもある沙奈枝は、当然の如く村では大切に扱われるべき存在だ。本心はどうあれ、声高に彼女を誹謗する者はいないのだろう。
「あの娘は厨子耶様に眼と心を喰われちまってたのさ、生まれる前からな」
話の輪から外れるようにして座っていた老婆の口から漏れた、小さな呟き。それはすぐに待合室の喧騒に掻き消されてしまった。
何とか話の輪に加われたと思ったあなたは、先ほど医師にした質問を、今度は患者たちにぶつけてみる。しかし、患者たちの反応は、医師と全く変わらないものであった。特に年寄りの患者ほど態度が硬化する傾向にあり、何人かは待合室から出て行ったほどであった。
喧騒を忘れ、静まり返った診療所の待合室。雰囲気に耐えられなくなったあなたは診療所を後にする。背中に、およそ好意的ではない視線を、多数感じながら。
【失明者を訪ねる】
あなたは医師から聞き出した話が真実なのか、村を見て回ることにする。規模の小さい村だ。少し歩けば失明者の有無くらいは分かるだろう。
村は明日に控えた厨子夜婚の儀の準備で沸き返っている。
準備と言っても篝火を焚く台を設置するくらいなのだが、その数が尋常ではない。村の通りと言う通りに数メートル間隔で台が置かれており、祁堂邸から厨子神社へ至る経路には特にその数が多い。当然火を点けるための薪の量も膨大で、民家の軒先にうずたかく積まれている始末だ。篝火台の設置は、厨子神社の宮司の指示の下、村の男衆たちがやっている。女衆たちは薪の小分けや料理等、雑務を手伝っている者がほとんどだ。
忙しなく人が行き来する中に、あなたは芦鷹巧美の姿を見つける。服装はセーラー服だが、鞄を持っていないところを見ると、これから通学という訳でもなさそうだ。厨子夜婚の儀に備えて、学校は休んだのかもしれない。女衆に声をかけられては挨拶を返している。
「次の花嫁さんは巧美ちゃんだね」
井戸端会議のように集まっていた女性の内の一人がからかうように声をかけると、巧美は恥ずかしいのか、顔を俯かせて走り去ってしまう。
初々しい巧美の反応に笑いが起こるかと思ったが、それはなかった。むしろ、声をかけた女性に非難がましい視線が集まる。
「あ・・・」
しまったという表情を浮かべると、今度は巧美に声をかけた女性が俯いてしまう。誤魔化すように薪を抱えると、足早にその場を立ち去る。
「次の嫁神様を産むのは、やっぱり巧美ちゃんかねぇ」
「可哀想にねぇ。一生村から出られないよ」
「大人しいけど良い子なのに。でも芦鷹の直系だしね・・・」
残った女性たちの口から次々と漏れる同情の声。
厨子夜婚の儀の夜に向けて、村の準備は進められる。
結局、失明者を見かけることはなかった。医師は真実を述べた事になる。夕暮れの村道をたどって、あなたは帰途に就く。
(※ロールに1回成功しています)
(補記・同盟)
【同盟】
香住薫からの連絡内容はこうだった。“午後×時に村はずれの水車小屋まで来られたし”。
時計を確認すると、まだ指定の時間までは余裕がある。予定した通りの行動を終えてからでも十分間に合いそうだ。
あなたは厨子村を見て回った後、水車小屋へと向かう事にする。
小川べりの水車小屋はもう何年も前に廃棄され、水車も回っていない。しかし、小屋の中からは人の気配がする。どうやら、既に先客がいるようだ。
決して広いとは言えない水車小屋の中に、5名の人間が集った。
玉木司、香住薫、楢須藤竜一、そして天野信一。互いに見知った顔はこの4人だ。既に互いに知り得た情報を交換しあっている。そして最後の一人は―――
ポニーテールにまとめられた髪の毛は金色に染め上げられており、この寒村には不釣合いで、突出して異質だ。胸に青色のアルファベットのロゴが大きくプリントされた白のTシャツと、色褪せしたスリムジーンズ、ラメの入った紫のミュール。厨子村に入り込んだ雑音(ノイズ)。
容貌は沙奈枝と瓜二つだが、纏う雰囲気が決定的に違う。沙奈枝を「静寂」と言い表すならば、目の前の女性に似合う言葉は「苛烈」。
香住夕貴。沙奈枝の双子の妹。
「香住夕貴です。よろしく」
あなたたちの顔を見渡してから、夕貴は小さく頭を下げた。あなたたちが自己紹介をすると、口の中で名前を反芻しては、頷いている。一通り自己紹介を終えると、思い思いに水車小屋の中で楽な姿勢をとる。夕貴が金糸で飾られた表紙の書物を取り出し、それを回し読みするように促す。書物の題目は『ゐをどノ書 輝ノ巻』。所々に付箋が貼られており、そこを拾い読みすれば概要が掴めるようになっているようだった。
古文書曰く、かつてこの地には“暗く静かなるもの”厨子耶恨という怪神が住み着いており、災厄を撒き散らしていた。暴れる怪神に頭を悩ませていた時の天皇は、ある時、術者に厨子耶恨を封じ込めるよう勅令を出す。術者は旧き神・降来主(おりくす)を招来し、厨子耶恨に対抗させる。二柱の神格は666日に渡って争い、ついには降来主が勝利を収める。降来主は厨子耶恨を封印し、その地に封印の監視者を置いた。その監視者たちの末裔によって作られたのが厨子村である。
しかし、厨子耶恨は完全に沈黙したわけではなく、25年に一度その禍々しい力を振るって暴れ回る。それを鎮めるために執り行われるのが奉贄の儀式「厨子耶恨の儀(=厨子夜婚の儀)」である。この祭儀が婚礼の儀の体裁を取るのは、“ずしゃこん”に「厨子夜婚」の字を当てて血生臭さを覆い隠そうとした、後付けの解釈に過ぎない。
次の付箋部に読み進む。
降来主を招来した術者は、厨子耶恨から己が身を護るために、一つの策を講じていた。それが「四神の護符」である。青龍、白虎、朱雀、玄武の四枚の護符があり、これを持つ者が厨子耶恨の災厄から逃れられるという効力を持っている。
最後の付箋部を開く。
降来主を招来するために用いられるのが「白と紫の魔方陣」である。魔方陣と言っても数字の配列や図形の配置によって力を発揮する類のものとは違い、色(白と紫)によって力を活性化させる特殊なものだ。<降来主招来>の呪文を詠唱する術者が白と紫の服や装飾品を身につけているだけで良い。その色に反応して、呪力が増幅される。
『ゐをどノ書 輝ノ巻』を読み終えたあなたは、一つフーッと息を吐く。どれもがにわかに信じられない話だが、宮司の態度や命日の一致から察すると、作り事ばかりではないらしい。何かの仄めかしが怪神譚となって伝わっているのかもしれない。
書物から夕貴に目を移すと、彼女の白いTシャツと紫のミュールが目に入る。「白と紫の魔方陣」―――。少なくとも夕貴は何らかの真実がこの書物に含まれていると考えているようだ。
回された書物を手に取った時、あなたの身体に震えが走った。『ゐをどノ書 輝ノ巻』―――計り知れない価値のある魔道書。しかし『輝ノ巻』とは・・・? 『イオドの書』が分冊されていると言う話は聞いた事がないので、邦訳の過程で何巻かに分けられた可能性が高い。『輝ノ巻』以外の分冊があるという事だろうか?
「信じるも信じないも、あなたたちの自由です。でも、私はこの書物に記された事が真実だと確信しています」
薄暗い小屋の中に、幾分低められた夕貴の声が響く。「特に―――」と前置きして夕貴が示したのは、「四神の護符」の件(くだり)。この護符の入手が、明日の厨子夜婚の儀に臨むに当たって最重要事項であると彼女は語った。夕貴の見立てでは、四神の護符は神社の御神体である厨子に収納されているとの事。
「明日の早朝、見張りが手薄な隙を突いて、四神の護符を奪取します。それに協力して欲しいのです」
(※香住夕貴と同盟関係になりました)
(※『ゐをどノ書 輝ノ巻』を読んだ事により、【正気】が1ポイント減少します)
【出題】
明日の早朝、夕貴は四神の護符奪取の計画を実行します。その計画に加担するかどうかを決めておいてください。この計画には隠密性が必要とされますので、多人数で当たれば良いというものではありません。適正人数を考えることが重要です。尚、厨子の見張りは3人です。
もしこの計画が失敗した場合、加担したキャラクターは不利な立場に追い込まれる可能性があります。
当然、この計画に加担しなくても構いません。加担しないからといって、同盟を抜けなければならない事もありません。
このアクションは第四話・1AP目にて発生しますので、その時に参加か否かの申請をしてもらいます。