地下室の玩具

 階段室に、足音が響く。
 鉄のステップを一段ずつ、ゆっくりとゆっくりと。
 やがて足音が止まり、鍵束を繰るジャラジャラという音が鳴ると、錠前のシリンダーがカチリと回り、鉄製の扉が軋みながら開いた。

 扉が開いた瞬間、機械の音がうっすらと室外に響いたが、扉が閉まるとすぐに何も聞こえなくなった。

 ここは地下3階。ビル施設維持用の設備などが設置され、その防音のために気密性が高い構造となっている。

 男がドア横のスイッチを押すと、チチチッと音がして、蛍光灯が点った。
 その灯りに照らし出された室内には、空調設備用の配管類と、そのメンテナンス用の予備部品、そして、壁に鎖でつながれた少女。

 部屋が明かるくなったことに気づいた彼女は、ぐったりとしたままで、頭を少しだけ動かして男の顔を見上げた。
 鎖が配管に当たって、カチャリと音を立てる。

 男は手にしていたビニル袋の中を覗き込むと、ニヤリと笑った。

 床に散らばった道具を靴先で寄り分けながら彼女に近づくと、その前にしゃがみこんだ。

 ガサガサと音を立ててビニル袋から紙箱を取り出し、その外装を乱暴に破り捨てる。中から出てきたのは新品の大人の玩具。

 さらに、ビニル袋を逆さまにして振ると、中から大量の電池がゴトゴトと音を立てて、床にばら撒かれた。

 その様子を少女は無言で見つめている。

 地下室の玩具。彼女もまた、その玩具の中のひとつである。
 この部屋に例外はない。


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