姉妹との約束

「これで本当に、妹は逃がしてくれるんですね。」

 見上げる瞳に疑いの色を隠せない。
 それは当然だろう。今まで彼女たちが受けてきた苦痛と恐怖、そして、屈辱的な仕打ちを考えれば、そう簡単に信じられないのも無理はない。
 しかし、この地獄から妹だけでも解放されるならば、という淡い期待が、彼女の判断力を鈍らせた。

「約束してください。二度と、妹には手を出さないと。」

 姉は縛られた体で、妹の前に立ちはだかるように身を乗り出した。
 その悲壮な決意を覚悟した心境を考えると、同情を禁じえない。

「ああ、約束しよう。但し、君が逆らったらどうなるか、分かってるね。」

 彼女は真剣な眼差しのまま、ゆっくりとうなづいた。

 今まで散々裏切られてきたのに、それをこの期に及んでまた騙されてしまうとは、つくづく可哀想な子だ。

「交渉は成立だ。」

 寄り添うようにしていた姉妹は、部屋の両隅に引き離された。
 やがて、妹の拘束が解かれる。両手首は背中で縛られたままだが、両足と両胸を縛っていた縄が解かれた。ただ、長時間無理な姿勢で縛られていたせいで、すぐに立ち上がれないようだ。

 よろよろとしながら妹が立ち上がると、涙を一杯に溜めた目で姉を見つめた。その小さな体には、縛られていた縄の模様がくっきりと残り、虐待された青痣が見るからに痛々しかった。

 この傷が癒えるまでどれほどの時間がかかるのか。いや、それどころか、ここで負った心の傷は永遠に消えないだろう。だが、これ以上悪夢が続くことはない、これ以上酷い目にあうことはない。姉はそう思い込むしか無かった。

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