嗜好の曲線

「こんにちは。」

 返事は無い。

「ん、どうした? 聞こえなかったかな。」

 嫌悪感を露わにした黒目がちの瞳で、俺のことを真っ直ぐに見つめ返す。

「良い態度だ。そうでなくては。」

 鎖がカチャリと音を立てる。頭上の鎖に革枷で拘束した両手が、かすかに動いたようだ。
 俺が彼女に向けて、一歩、足を踏み出すと、途端に彼女が身をすくめる。
 既にスカートは吊るした時に脱がしてあるので、今は、その長い両足を太股から足首まで完全に見渡すことが出来る。
 両膝を合わせてぴっちりと閉じた太股。すらっと伸びた、スベスベとした両足。細い足首を包み込む白のソックス。赤いランニングタイプのスニーカー。
 両足が作り出す曲線と、薄暗い背景とのコントラストが実に素晴らしい。

「この眺め、たまらないね。」

 冷ややかな目線で、軽蔑した態度を見せているが、内心の不安は隠せるはずも無い。今は好きなだけ強がるが良い。これから起こる仕打ちにどこまで耐えられるのか、見ものだな。
 あらためて、彼女の姿を見つめ直す。これからメチャクチャに汚してしまうのが惜しいくらいの、最高の肢体だ。

 いよいよ彼女のショーツに手をかける。彼女も覚悟していたのか、身を固くして、その屈辱に耐えている。
 両手をショーツの横に引っ掛けて、ゆっくりと引き下げる。指先から彼女の体温が感じられ、また同時に、極度の緊張感で分泌された彼女の汗や体臭が、さらに強く感じられるようになった気がした。
 やがて、彼女の秘部が姿を現すと、そこで手を止めた。薄くかげる陰毛、その下で僅かに隆起している陰唇、そして、早くも湿り気を帯び始めている陰裂。

「見られるだけで、感じてるのか?」

 我ながら陳腐な言葉だが、これが一番彼女の羞恥心を刺激したようだ。
 今まで、無言を貫いていた彼女が、つぶやくような小さな声を搾り出した。

「・・・見ないで・・・ください」

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