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箱詰めの欲望

 私が案内された部屋には、大きな木箱がひとつ。

 部屋の中央に置かれたそれは、ロープで周囲を幾重にも巻かれ、中からは人の動く気配が感じられた。

 思わず、生唾を飲み込む。

 案内人は私に、部屋の鍵と一緒に利用時の注意書きを渡し、音も無く部屋から退出した。

 今、ここにいるのは、私と木箱のみ。

 私は注意書きには目もくれず、梱包を解きにかかった。

 待ち遠しかったこの瞬間、縄を持つ手が震えている。

 縄は手では千切れないほど丈夫なものだったが、ただ単に箱の周囲を巻きつけてあるだけで、特にきつく縛ってあるということは無かった。
 ただ、順番どおりに解かないと、縄が絡まるだけで、箱の蓋を開けることは出来なさそうだった。

 私はもどかしい手つきで、一本ずつ縄をほどいていく。やがて、全ての縄を外し終えると、いよいよ蓋の端に手をかけた。

 ガッチリとした蓋は見た目に違わぬ重さがあった。木枠から少しだけ蓋をずらすと、隙間からわずかながらも熱を帯びた空気が漏れ出す。私は逸る気持ちを抑えつつ、ゆっくりと蓋を開けていった。


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