GW〜北陸金沢蟹紀行〜 その弐   2004/05/04

 いやもう。何が困ったって。

 駐車場が空いてないのだ。

 さすがにGW。北縦は空いていたけど、金沢市内に入るといきなり混み混み。車はそれなりに流れるんだけど、それでも臨時規制が掛かってて兼六園には入れなかったし、そもそもジモティじゃないのだから何処に何があるかなんて分かりゃぁしない。あんまりウロチョロするのもイヤなので、兼六園にほど近い駐車場への入り口を見つけたから、そこに入ろうとしたら…

 一時間待ちました。

 市庁舎の地下駐車場に入れようとしたんだが、地下への入り口で待たされること50分。坂になってるし、後ろから車も来るもんだからバックで逃げることもままならず。仕方がないので、唄ってました。ええ、そりゃぁもう電気グルーヴやら郷ひろみやらB'zやら宇多田ヒカルやら。何はともあれ駐車場に車を停めて、第一の目的地兼六園へと。

 兼六園に行く途中の道でトイレに行きたくなったため、とりあえずすぐ近くにあった休憩所(*1)に入る。ここは「兼六園広坂休憩館」という場所らしく、旧日本軍の司令部のあった場所だとか。なんだか戦争と言うものとは無縁のような静けさを感じ、大正浪漫を感じさせるような瀟洒な全体の作り、窓に掛かるカーテンや廊下の木組み、前庭の雰囲気なども趣深かった。


 兼六園に入る前に、まずは隣の成巽閣へ。成巽閣は所謂隠居所といったところで、加賀藩主の家族達が暮らしたらしい。柿葺き寄棟造りの建造物で、一階と二階とでは全く趣の違う作りが見られるなかなか面白い建物だった。
 一階は武家らしい書院造りになっており、欄間や腰板の見事な装飾、大変美しい作りの庭などが配されてた。藩主の住処らしいと感じたのが、謁見の間の存在。この部屋の欄間は非常に見事なもので(*2)、思わずホ〜ッと嘆息してしまった。庭は枯山水のようなものではなく、むしろ植物を効果的に配置して四季折々の木々の移ろいを楽しむ様な趣向になっていた(*3)。水の音が心地よく、庭に面した縁でその昔、大名や侍達が会話を交わし思索を巡らしていたのかと思うと、歴史の浪漫というものをいやでも感じさせられた。
 二階部分は、各部に趣向を凝らしてあるお洒落さんな作りになっている、数寄屋造りの書院になっていた。一つ一つの部屋に異なった意匠が凝らされており、一階程の重厚さはないが、より人の風雅な趣を醸し出していた。中でも「群青の間」という部屋(*4)は、壁には朱、その目地や天井にはウルトラマリンブルーを配したデザインになっており、ラピスラズリを混ぜて作られているというその蒼が非常に斬新な感じを与えていた。色の組み合わせの妙だろうか、部屋に配置されている灯りは暖色系のものだったのだが、その中で蒼の天井と目地だけが浮き上がり、自ら発光しているように感じられた。…しかし、書院だろうに、こんなに派手な装飾で良いのかしらん…とも思ったのだが(笑)。また、二枚貝の殻を薄く削って紙の代わりに嵌め込んだ障子などもあり、当時の職人の技術の高さをまざまざと見せつけられた。写真撮影禁止なので絵はがきを取り込んだ写真しかないのだが、兼六園に行くことがあったら、是非成巽閣にも足を運んでいただきたいものである。


 兼六園は、さすがに金沢随一の観光地らしく、すごい人出だった。人、人、人。園内の至るところに人が溢れていた。さすがに都市部の駅通路程の混雑はしていないが、まぁーたくさんの人。オレは兼六園は初めてだったけど、きばは以前に来たことがあるらしい。どうだった?と聞くと、


「冬だったから、人っ子一人居なかった。」


とのこと。自分の他には誰一人存在しない冬の兼六園は、とても恐かったらしい。駆け足で逃げるように回ったんだよ…と語るきばの目は、ドコか遠くを眺めていた。それは、もう帰れない時代に対してなのか、人が少ないことに怯えていた頃の自分に対してなのか…それとも、その時食べたという取れたての甘エビに対しての憧憬か。いずれにせよ昼飯は海鮮で決定だな、と。この時点でそれは予感されていた。
 兼六園は綺麗だった。新緑の季節を迎えた植物の緑とうららかに晴れ渡った青空とが非常に美しく、初夏の匂いさえ感じさせる空気は澄んでおり、水に乱反射する陽光には少し眩しさすら感じる程だった(*5)。杜若などの水辺の植物も美しく(*6)、しかし最も目を引いたのは「菊桜」という名前の桜(*7)だった。一つの花に三百数十枚の花弁。普通の桜とは色も形も、雰囲気からして異なるこの桜は、観光客の注目するところとなっていた。
 他にも根上がりの松や、霞ヶ池(*8)など見所もたくさんありなかなか楽しめた。途中お茶屋でお抹茶を頂いたり、草団子を食べたりしながらゆっくりと園内を回り、写真も何枚も撮った。つくづく思ったのは、もっとダイナミックレンジの広いカメラが欲しいなぁ…と言うこと。その前に腕の問題なのかも知れないが、ああも天気のイイ日だと、なかなか空と風景を一緒に取り込めず、空が白飛びするか風景が黒くなってしまうかのどちらになる。大体が超弩級晴れ男なオレのこと、でかければ大抵は気持ちの良いくらいスッカーーーンと透き通った青空になるものだから、なかなか写真が撮りにくいのだ。「それは撮り方の問題だ」という事であれば、是非御指導をば一つ。ま、それはともかくとして、美しい庭園を見て心癒され、ノンビリとした良い気持ちだったのだが、




このオッサンは誰ですか!?



すっごく気になった。気になっただけ。確認取ってない。ただ、それだけ。気になったのだ。ちょっとだけ。



(*1)

(*2)

(*3)

(*4)


(*5)
(*6)
(*7)
他の写真@
写真A←サイズ巨大、注意!!

(*8)



 兼六園を出て、隣接する金沢城公園(*9)に行き…はしなかった。いや、綺麗なお城だったから行ってみたいとも思ったのだが、如何せん駐車に一時間も手間取っている。さすがに、お腹が空いてきていた。とりあえず九谷焼の店などをブラブラしながら幾つかお土産などを買い、そのままご飯を食べに行こうという事になった。観光ガイドと首っ引きで探し、やはり金沢だから海鮮だよね〜〜、と、きば。そりゃやっぱ海鮮でしょう、と予感通りのオレ。もちろん海鮮は大好物である、何も文句はない。日本海からほど近いこの街ならば、海鮮の上手さにも期待が出来るというもの。逸る期待に胸躍らせつつ、まずは宿を押さえに観光物産センターへ向かった。しかし。


無い。


宿が、全く、無いのよ。


 まぁGWの観光地で、飛び込みで宿を探そうというのがどだい無理かろうと言うもの。オレらの前で宿を探していた夫婦は、「ちょっとお高くなってますけども…」と、紹介された一泊4万円の宿でGoサインを出していた。オレらは石川県内でなくても良かったのだが(どうせ次の日は福井に行くつもりで居た)、福井にしたって

「2万5千〜3万ですかねぇ」

「え、二人で!?(ホッ)

「いえいえ、もちろんお一人様です」

…とか言われた日にゃぁ、そりゃもうゴメンナサイ状態である。この時点でもう完全に車中泊覚悟、とりあえず考えないことにして飯でも食べに行こう…と、タクシーで近江町市場に向かった。


 近江町市場(*10)は、金沢で最も有名な生鮮食料品市場である。…と言うことにして良いのかな? と、思ってしまう程、実はこの日(5/2)は閑散としていた。どうやら、日曜は定休日の店が多いらしい。しかしそれだけに、メシ目当ての観光客が数少ない開業中の飲食店に鈴なりに並んでいる。最初目指していた店がなかなか見つからず、その辺に「海鮮丼」と看板の出ている店に並んでみると、最後尾のおっちゃんに「あ〜ワタシらで売り切れって先刻言われたんやわぁ、可哀相やけど」と、慰めとも最後通告ともつかないような残酷な言い渡しをされる。おっちゃん、どんだけ優しく言ってくれても、その言葉はオレの胸(と腹)に突き刺さる。
 また歩く。また行列である。さらに歩く。行列ばっか。もうイヤやぁ…と思いつつも、その店を見ると探していた店。ねばる事にした。閉店時間まで45分。列はなかなか前に進まないのだが待つこと30分、ようやく我々は食にありつけた。北海丼を頼むも売り切れだったので、その店の看板らしい海鮮丼を注文。これがまた、丼から完全にはみ出した具がてんこ盛りの素晴らしいもの…味も大変美味しゅうございました。


海鮮丼、\1.700-


 さてしかし、宿の決まらない状態の二人。とりあえずどうしよう…と考えながらも、海鮮丼を平らげ、店を後にしたのである。



(*9)

(*10)


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