二日目 豪州到着〜挙式打ち合わせ

 空港に到着、5:00。朝の五時。どうせぇっちゅうねん。

 ほとんど寝られなかったフライトも終わり、豪州到着。朝の五時というんだから、さぞかし暗かろう…と、つい日本の感覚をそのまんま持ち込んでしまったが、さすがに夏だけあって、もうすでに明るくなりつつあった。到着したら、入国審査。これが一番不安だった。前述の通り、パスポートの顔と大きく異なる今のオレ、平たく言えば「より犯罪者寄りの」顔になってる。国から出すのは良いが、きっと入れる場合に何か文句を言われるか、厳しいチェックを受けるに違いない。恐々としつつ審査を受ける…と、速攻で通してくれた。

 スゴイよオーストラリア!!国土も広いけど、心も広いよ!!

…実際問題として、一回しか海外旅行に行ったことのない日本人、しかもオーストラリアは初、ともなれば普通は素通り出来る。目的すら聞かれない。そらそうだ、何処の誰が観光客一人一人に「コアラを密輸しに来たのか?アレはマズいぞ?むしろオレはカンガルーの方が好きだ。しかし実はワニが鶏肉に似て美味くてナァ…」などと問いつめるだろうか。

 なお、オーストラリアは観光客の荷物の内容に関しては非常に厳しい。まず、食物類が全てと言って良いほどアウトだ。さらに薬品類のチェックも厳しい。そして見落としやすいのが靴に付着した土や泥。これらにも植物の種などが含まれる可能性があるので、非常に厳しくチェックされる。オーストラリア独自の生態系を壊さないための配慮だ。検疫所には、麻薬犬ならぬ「食物類探査犬」とでも言おうか、訓練された犬が居て乗客の荷物を全て嗅いでチェックする。ここに来て一気に「オーストラリアだよ」という気分が高まった。
 従って今回は日本食などは一切持ち込まなかった。薬も、問題のないものだけ。靴に泥は…河毛じゃあるまいし草津ではさすがに付着しない。もちろん、税関等はノーチェックでパススルー…出来なかった。オレときばの荷物だけ、手荷物も含めて全て開けてチェックされた…どして?なんで?持ってきたらイケナイものは入れてないよ?でももしかしたらアレですか、


トランク内に入れておいたドライバーセットの所為ですか。


 だってだって、いきなり滞在先でトランクとか壊れたらどうするよ!?ホテルの照明とかの修理が必要になったらどうするよ?デジカメとかバラしたくなるかも知れないじゃん!?……我々を待つ両家家族の目が、ほんの少しだけ冷たく感じたのはきっと気のせいに違いない…


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ケアンズ市内一望。
雨で陰鬱な感じ。



 ホテルまでは、JTBのバスで送ってもらった。しかしそこはオーストラリア、バスいうてもおベンツですし(*1)。だから何といわれても困りますが。空港からホテルまでは10分くらい、非常に気楽な距離で、実はこれもケアンズを選んだ理由の一つだったり。さすがに飛行機に揺られたあとにバスに長時間揺られるんじゃたまったもんじゃない…てのもあり。走っている最中に、「これからオーストラリアは雨が多くなり、今週はほとんど雨だろ」と言われ、覚悟はしていたもののガッカリと来た。確かに、バスのフロントガラスには雨があたり始めていた。

 宿泊したのは、ケアンズインターナショナル(*2)。一応ケアンズではソフィティルリーフカジノに並ぶ、高級ホテルで、五つ星ホテルということである。何故こんなホテルを選んだかといえば、ひとえにオレが「海外旅行で大事なのは、休憩場所となるホテルである」という考え方だから…ウチの姉たち海外旅行のベテラン組に言わせれば、「ホテルに金かけるくらいなら、ツアー内容に金かけろ」というところだが、やっぱり体調良くての楽しい旅行だし。ここは奮発した。さすがに、ケアンズで一、二を争う高級ホテルだけあってその内装は豪華でありながら落ち着いていて素晴らしい(*3)。部屋も広くて快適(*4)。まぁ、微妙に「何でセキュリティボックスが有料やねん」とかいう部分もあったが、コインランドリーがあったのは有り難かった。高級ホテルになるとドライクリーニングオンリーというところも多いので、6ドルで洗濯から乾燥まで行けたのは、服の少ない海外では何よりも有り難い。

 ロビーで、滞在中の説明を聞いた後はオレときばだけは挙式の打ち合わせに行く予定で、他は午前中フリー。
 しかしその前にメシを喰いたい。とにかく機内食がマズかった。ここは早く胃にちゃんとした食い物を入れて、体調を整えておきたい…のだが、打ち合わせをした現地JTB職員が必要書類を持って現れるはずが、一向に現れない。親達は朝食付きのプランではなかったので、勝手に食いに行ったんだが、子ども達は朝食のクーポン券が付くプランだったのでその券待ち。30分程と言いながら1時間近く現れないその職員を待つ間、どんどん疲れが出てきてしまい、親達のためにとったはずのストレートチェックインの部屋で皆転がっていた…この時、オレの頭の中では「雨+現地職員の動きの悪さ=失敗の予感」という構図が渦巻いており、飛行機の疲れもあって、多少陰鬱たる思いにとらわれていた。



(*1)


(*2)

(*3)

(*4)

 挙式打ち合わせは午前中に行った。ホテルのすぐ横にある、JTBのパラダイスラウンジというところで拾ってもらい、車で「ケアンズ・コロニアルクラブリゾート」内にあるJTBウェディングエンジェル社(JTBの現地法人)の打ち合わせルーム(*5)に向かう。このJTBウェディングエンジェル、姉の話によるとかなり評判のいいところらしい。我々はすでに日本でウェディングドレスに関しては選んであるので、充分な時間的余裕があるだろうと思いながら打ち合わせに向かった。

 車が着くと、二人の女性が出迎えてくれた。一人は比較的小柄な日本人女性だ。きみよさんと言うらしい。この人は基本的にヘア&メイク担当ということで、式全般のコーディネートはその横にいたオーストラリア人女性…ヘレンが担当してくれると言うことだった。しかし、ヘレン。

でかい。

 有り体に言えば"巨大"。いやいや、それが女性に対してあまり紳士的な形容詞ではないことは百も承知だ。しかしやはり、ここは敢えて言いたい。「巨体」。容積だけで言えばオレを遥かに凌駕しているだろう。しかし、世の中には格言というものがある。「壁に耳あり障子にメアリー、太った人には情があり。」基本的にふくよかな人というのは、その心も丸く穏やかな人が多い。ヘレンもそんな感じの、おおらかで包容力のある、非常に明るい女性だった。オーストラリアの大地がそうさせたのか、オージービーフがそうさせたのかは定かではない。

 それにしても、今回の挙式をJTBウェディングエンジェルに任せたのは、後から振り返れば本当に正解だったと思う。全く緊張することが無く、最初から最後までリラックスして「楽しむことが出来た」。今回、我々の挙式を手伝ってくれたのは、前述のきみよさんとヘレン、そしてクリスティの三人…いずれも底抜けに明るくパワーがあり、とことんまで式を盛り上げてくれた人達だった。
 この日の打ち合わせでは、再度きばの衣装合わせ、そしてオレの衣装合わせを行った。さらに式次第の説明。式中の注意点やら誓いの言葉の練習やら…誓いの言葉は、英語と日本語両方で言う必要があると知り、一気に青ざめる二人。それを見ながらも陽気に楽しむヘレン。まぁ、何とかなるようになるさ…二日目にして、すでにオージー気質に巻き込まれていた二人だった。


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(*5)