熱帯雨林には数え切れないほどの種類の植物が生い茂っていた(*10)。非常に背の高いものから低いもの、大きなものから小さなもの…中には親木に寄生して絞め殺してしまうもの、非常に成長が遅く、数m程度の大きさで数百年生きているもの、木の上の方に寄生してバスケットの様な幹を形成し、そこに落ちてきた落ち葉などを養分としている寄生樹などもあった(*11)。名前の付け方も面白く、棘があって引っかかってしまう蔦などは「Wait a while(ちょっと待って)の木」と呼ばれていたりした。それらの植物が複雑に絡み合い、共存して大きな森を形成する。揺れるアーミーダックの上で、木の間からこぼれ落ちるオーストラリアの陽光を浴びながら、この森が作り上げられていった悠久の時に思いを馳せ、遥かな昔、ここで生きていた人々のことを考えた。
熱帯雨林は、また多くの動物たちの生命を育む場所でもあった。アーミーダックは大きな音を立てるので、そうそう野生動物に巡り会えるわけではなかったが、それでも水辺では何匹ものカメや幼いウォータードラゴン(*12)などを見ることが出来た。