交流変圧器は扱う電圧と周波数範囲さえ合っていれば、どっちの方向でも使えます。AC100V入力、AC12V出力の変圧器なら、AC12V入力でAC100V出力としても使えます。
でも、ほとんどのスイッチング電源は入力と出力の方向が決められています。DC12V出力の電源は、DC12V入力のAC100Vインバータにはならないのです。
スイッチング電源も中心には変圧器があるので、回路の構成を工夫すれば双方向電源だって作れるはず。だけど実際、入力側は能動スイッチング素子を使い出力側は受動スイッチング素子を使うなど、部品選定の都合で制限されています。
それだけでなく、スイッチング制御回路のほとんどが単方向電源回路のために作られたものが主流のため、出力側に能動素子を使った同期整流方式では逆流による故障なども発生してしまいます。
異種バス電圧共存やバッテリーバランス、エネルギー回生などの用途で、双方向電源の要望が増えてきています。極端な話、電池の充電と電池からの出力電圧を調整する回路を統合して部品点数を減らすこともできます。
電力部の構成は入出力対称構成が作りやすいフルブリッジやフライバック方式が選ばれ、また昇圧コンバータとシングルフォワード方式を組み合わせた構成でも、入出力対称で入出力電流の連続性を持つ回路へ展開できます。
制御回路でも、近年では双方向電源を意図した制御ICが登場し始めています。電流検知に使う抵抗器やカレントトランス(変流器)が増えますが、体積を食う電力回路部品が共用できることにメリットを得られます。
昔は双方向電源といえば循環電力を抱え、あまり実用的ではありませんでした。でも現在ではコンピュータが気軽に使えるようになったため、運転方法の切り替えも条件設定ができるようになり、平衡時に停止して待機電力削減などのメニューも選べます。
以前に比べて作りやすくなったとはいえ、まだ交流入出力対応まではワンチップ化されていない様子です。それでもマトリックスコンバータなど、多相交流対多相交流の双方向コンバータも実用化されはじめています。