RZV用の社外品といったら、SP忠男もしくはルーニーが有名どころだった。しかし今回の出物は聞いたこともない城北ムラカミ製(もちろんメーカーは知ってましたが)。チャンバーが欲しいと思っていた所にレア物の知らせ。マニアを自称する男がこれを聞いて大人しくしてられる訳もないですがな。素早い電話攻撃が功を奏した(RZV乗りがそもそもいない?)からかチャンバーのGETに成功。早速次の土曜日にチャンバー様のお迎えにあがった。
売り主にいろいろ話を聞くとムラカミのチャンバーは以前付けていた物で、現在はSP忠男製を付けているのだとか。同じバイクを乗っているだけに話も弾む。おおっと、セッティングのことを聞かなきゃ。えーと、メインが200番でクリップ1段上げですか・・・ノーマルのメインが145番だから、チャンバー付けるだけで55番上げるとはいかにもすごそう。「パワーは忠男より出ます。」おお!「でもセッティングはシビアですが。」やっぱり?ってなやり取りの後、ウハウハ状態で帰路に着いたのでした。
無事ツーリングを終え帰ってきたがもう一つイベントが目前に迫っていた。”車検”だ。最近はかなり緩くなったそうだけれどRZVの、いや城北ムラカミのたくましいサウンドを聞いていると不安が募る。「車検の時はノーマルに戻そう」、この決断にいたるまでに時間は掛からなかった、っていうか初めて城北ムラカミの音を聞いた瞬間に思った。
ノーマルチャンバーに戻し減っていたタイヤを換え、無事車検も通過(もちろんユーザー)。直ぐにまた着けたと思うでしょう?でもそうじゃなかったのだな。何故かといえば、一つに排気漏れの問題。フランジのガスケットを何とか調達しなければいけない。そしてもう一つは錆処理。ここまでチャンバーの程度を書いてこなかったが、凹み無し、錆結構ありというもの。錆で真っ赤なチャンバーは格好悪いので、きれいに地肌を出しクリアーを吹くことに決定。
錆取りは色々試した結果、スコッチブライトのディスク&ディスクグラインダーに行き着いた。グラインダーはトルクがあり、スコッチブライトディスクは母材への攻撃性が低いので短時間で錆のみきれいに取れるのでおすすめ!ただ母材に優しいせいか、ディスクはわりと短時間で削れてなくなるのでコスパは今ひとつですが。そこにクリア塗装をし(錆が怖いのでホームセンターで見つけた防錆クリアで。耐熱とは一言も書いてないけれど意外に問題なかった)。あとはフランジ。城北ムラカミのフランジはOリングでシールする構造で、現状はOリングが溶け真っ平ら&カチカチ。そりゃ漏れるわな。フランジの直径と溝の幅を図り、隣町にあったOリング取扱店に突撃。担当してくれた人が優しくて、その寸法ならこのサイズ、用途からして耐油耐熱のバイトン製のが良いでしょうと見繕ってくれた。さっそく新品Oリングをセットし再装着。2回目はやはり早い。割とあっさり作業完了。試乗後フランジ部をチェック、排気漏れなし。アイドリングも気持ち静かになった。しかし問題が無くなったのではなかった。6千回転あたりでかなりの谷があるのだ。回転の上がりが悪く、パワーが出ない。考えられる原因は中開度域が濃いこと。
セッティングにおいて中開度域担当と言えば、ジェットニードル。早速ニードルの段数を変えるべくばらし始めるがあんまりにも面倒だったので止めてしまった。面倒がらずにやれ!と言われそうだけど、RZVのリンク付き強制開閉キャブ(VM26)で段数を変えようとしたら、キャブを完全に外してかなりの勢いでキャブを分解しなければいけないと分かったから。
サービスマニュアル見てもニードルだけ外す方法なんて載ってないし。強制開閉、特にZとかについてるVMキャブでのニードルを外す簡単な方法を知っている方、教えて下さい。
ある日峠に行った時、中開度域(最も使うところ)が使えない事態(空気が薄くなるため、濃い症状が増す)に陥ってしまった。これじゃつまらないのでいいかげん対処することに。某雑誌に「スロージェットで中間域の谷を無くすことも出来る」とあったので試すことに。でジェットを買いに行ったのだけれど、何を勘違いしたか劇的に大きな40番を買ってしまった。間違っているとは知らず、組んで走ってみると全てにおいて全然ダメ。
一般的にスロージェットは低開度域のアイドリング付近だけに関係するみたいなことが言われてますが、実際は 低開度域でガソリン供給の中心になっている というのが本当で、その影響は全域におよぶんですね。アイドリングから全開までスロージェットジェットからガソリンは吸い出されている訳ですから。で、純正より小さいジェット(22.5番から20番に)を組み直す。さすがにアイドリング~3000rpm付近ではトルクが細くなった(つまり薄い)けれど、狙っていた中開度の谷は見事解消。3000rpmからレッドまできれいに回るようになった。
さてその性能をキチンと分かる状態になったところでこのチャンバーのインプレッションを。
まず外観。他社製のチャンバーに比べ膨張室が大きく、サイレンサーがかなり短い。こんなんでちゃんと消音出来るのかいな?とは思うけれど、それほどうるさくもない と思いたい 。音質、というか音そのものはかなりいい。特にパワーバンドに入ったときは 2st4発サイコー とヘルメットの中で絶叫せずにはいられない。気分はすっかりGPレーサー。
ではその性能は?というと、パワーバンド以下はノーマル(フルパワー仕様)と変わらない印象(つまりトルクが細くなっていない)。もっともチャンバー交換でかなりの軽量化を果たしている(計ってないけど。でも二桁キロは堅いはず)のでその分が効いているのかも。さてお待たせのパワーバンドは、というと「ものすごい」の一言。メーター振り切りは4速で楽勝。6速で回しきったら何キロでるやら。回しすぎで焼き付いたらしゃれにならない(パーツ代も高いし、何よりそんな時は1速でもえらいスピード出てるはずなんで)んでやったことは無いけれど。
シートカウルのことを除けば文句無し。おすすめと言いたいけれど、おそらく世に出たのは極少量なので手に入れるのはかなり難しいと思います。
あ、書き忘れてましたけど、城北ムラカミ製に限らず、チャンバー換えると座っているあたり、というかシートまわり全般が熱くなります。かなり念入りに熱対策をしたと言われるノーマルの偉大を思い知ります。まあ火傷するほどじゃぁ無いですが、このチャンバーだと上に乗る形になっているためバッテリー上のプラカバーが溶けたり、熱のせいかバッテリー端子につなげる配線の丸端子が折れたりしました 。今はリチウムイオン電池にして小型化され間隔が確保されたのでマシになりしたが。
実は就職後、城北ムラカミの近くに引っ越したこともあり、10年以上にわたり村上社長には大変お世話になりました。サイレンサーのグラスウールを打ち直してもらったり、立ちごけで凹んだチャンバーを直してもらったり。RZVのチャンバーをステンレスで作ることもできるよ、なんて言われ、いつかはお願いしたいと思っていたものでした。コロナ騒動でご無沙汰し、久しぶりにお邪魔しようと思っていた時、社長が亡くなったと知りました。改めてここにご冥福をお祈りすると共に、お世話になったことに感謝の意を表します。ありがとうございました。