1.
海底の残骸 この場面は実際のタイタニック号の映像とセットで撮影した部分を編集して作られています。基本的にフィルムで撮影されている部分はセット、ビデオで撮影されている部分は本物と考えて良いでしょう。 ・重箱ポイント セットで再現された残骸や遺品のなかで特に注目したいのは下記の4点です。 ・ 天井から垂れ下がった電灯 ・ 婦人靴 ・ 人形の頭 ・ 錆に覆われた浴槽 これらは全て、実際にタイタニック号で撮影された写真に基づいて再現されています。 |
2.
沈没のシミュレーション 沈没の過程を説明するボーディンの台詞の中に「トン、トン、トン、とモールス信号のように」亀裂が生じたとあります。これは事故調査委員会のエドワード・ワイルディングの仮説に基づいています。彼が様々な証言に基づき計算したところ、亀裂の幅は平均して約2センチという結果がでました。しかし、2センチの亀裂が60メートルに渡って生じたというのは信じがたい事です。そこで彼は亀裂は一直線ではなく断続的であったと結論付けたわけです。 |
3.
サウサンプトン港 ・重箱ポイント その1 サウサンプトン港に停泊するタイタニック号を見上げる親子。「お船なの?」と言う少女の胸に抱かれた人形は、冒頭の遺品を連想させます。 ・重箱ポイント その2 興奮する群衆の中でローズだけが「モーリタニアと同じ」と冷めた口調で言います。モーリタニア号とは、タイタニック号を所有するホワイト・スター・ライン社のライバル、キューナード社の豪華客船で、確かにタイタニック号に似ています。シルエット・クイズをすれば殆どの人が間違うでしょう。つまりキューナード社にしてみれば、タイタニック号は自社製品の類似品のようなものです。そんな船を引き合いに出してタイタニック号をこきおろすとは、映画のヒロインの第一声としては型破りといえます。 ・重箱ポイント その3 タイタニック号の船尾方向に見える赤レンガの建物に注目しましょう。この建物は"サウスウエスタン・ホテル"といって、ホワイト・スター・ラインの社長、J・ブルース・イスメイが出港前夜に宿泊しました。現在もキューナード社が事務所として使用しています。 ・重箱ポイント その4 出港時の煙突に注目しましょう。4本ある煙突のうち、煙を吐いているのは第三煙突だけです。低速運転の際は、エンジンに最も近いボイラーにのみ点火してエネルギーを節約しているわけです。 ・余談 タイタニック号は、本当に世界一美しい船か? タイタニック号は歴史上最も美しいといわれていますが、果たして本当でしょうか。タイタニック号とそっくりなモーリタニア号と、二隻の姉妹船(オリンピック号、ブリタニック号)とで比較してみましょう。 徹底してシンプルに造られたタイタニック号に対し、モーリタニア号は今一つ洗練されていないという印象を受けます。複雑な突起が多すぎて、デッキ上がごみごみした感じがします。 姉妹船は基本的に同じ構造ですが、タイタニック号のAデッキのプロムナード(遊歩道)には風雨避けのガラス窓が設置されているため、窓なしのオリンピック号よりすっきりした外観となっています。 ブリタニック号は煙突の中間の高さにまで達する巨大な救命ボート用つり柱(最早、クレーンと呼ぶべきか)がやけくそ気味に設置されている上に第一次世界大戦で徴用され、病院船として醜く改造されてしまったので(実に不運で可哀相な船なのですが)問題外です。 以後、現在に至るまで様々な客船が建造されましたが、大抵はごつごつとした岩山のような外観でスマートさに欠けます。 あくまで個人的な好みの問題ですが、タイタニック号が海運 史上最も美しい船であることは間違いないと思います。但し、その美しい外観を保つために救命ボートが減らされ、その結果多くの人命が失われた事実を忘れてはならないのですが。 |
4.
B52,54,56号室 ローズとキャルが宿泊した部屋です。プライベート・プロムナードが付いた最高級の部屋ですが、ローズは気に入らない様子です。 実際にこの部屋を利用したのはブルース・イスメイでした。映画の中では描かれていませんが、恐らく出港直前にキャルが金の力に物を言わせ、強引に部屋を変更させたという経緯があったのではないでしょうか。 ・この場面の位置 Bデッキの左舷側。第二煙突の辺り。 |
5.
ジャックの部屋 ジャックとファブリツィオの部屋番号は、ジャックの台詞によればG60です。Gデッキの部屋番号を示す資料が無いので断定は出来ませんが、その番号なら部屋の位置はGデッキ最後部の左舷側にある4人部屋の筈です。しかし氷山と衝突した場面で、ファブリツィオは衝撃音に驚いて目を覚まし、しかも衝突直後に部屋の床が水浸しになりました。つまり、彼等の部屋は船首側ということになります。ところが図面をみると、Gデッキの船首部分に客室は一つも存在しないのです。 部屋の配置が事実と異なるのは作劇上の都合による脚色と思われるのですが、物語の本質には無関係なので気にする必要は無いでしょう。 |
6.
シェルブールのタイタニック号 4月10日午後6時、タイタニック号はシェルブール港に到着しました。 この時のタイタニック号を撮影したといわれる写真が残っていますが、残念ながらかなりの部分に修正が施されており真偽の程はよくわかりません。 ・重箱ポイント その2 タイタニック号の脇に、はしけ船ノーマディック号の姿が見えます。モリ―・ブラウンやベンジャミン・グッゲンハイムは、この船からタイタニック号に乗り込みました。ノーマディック号は現在もレストランとして使用されています。 ・ 重箱ポイント その2 モリー・ブラウンが初登場する場面で彼女の周囲をよく見ると、一緒に乗船して来たベンジャミン・グッゲンハイムやダフ・ゴードン夫妻の姿を確認することができます。 ・余談 タイタニック・ファンの神様 海洋画家ケン・マーシャルは十代の頃タイタニック号に魅了され、その美しさを数多くの絵画で表現しました。その考証の緻密さ、表現の正確さは、正に世界一のタイタニック画家と呼ぶに相応しいと思います。但し、人物を描くのは苦手のようです。世界中のタイタニック・ファンが思い描くモノクロのイメージは、彼によって初めて色彩を与えられたと言っても過言ではありません。今回の映画化にもビジュアル面の考証担当としてスタッフに名を連ねています。シェルブールのシーンや、夕焼け空の下を進むタイタニック号の姿は、彼の絵がそのまま動き出したかのようです。 |
7.エンジン 高さ9メートル以上の往復動機関は今回が初の映像化。エンジンの動きや操作手順の描写にキャメロン監督のメカ・フェチぶりが窺えます。 往復動機関2機のほかに、中央のスクリューを動かすタービンエンジンが取り付けられていました。エンジンは現在も海底に立ったままの姿で残っています。 ・重箱ポイント 髭を生やした人物は、機関士長ジョーゼフ・ベル(死亡)です。 |
8.タイタニック号の俯瞰映像 ・重箱ポイント カメラがタイタニック号の上空を嘗めるように移動するカットをよく見ると、四番煙突から煙が出ていないのがわかります。四番煙突は主にタービンエンジンルームの排気口として使われていたので、煙は殆ど出ません。いわば飾り物です。当時の一般の人々は煙突の本数で船の大きさやスピードを推し量っていたので、四番煙突は船の威容を演出する道具として取り付けられたと思われます。 ・余談 タイタニック号の元気な姿 これまでの映画化において、平常時のタイタニック号の姿はミニチュアやよく似た船の実写映像で表現されていました。どうしても話題が沈没シーンに集中してしまいますが、実はタイタニック号が大海原を元気に駆け抜けて行く姿こそ、今回の映画化の最大の見所ではないでしょうか。 |
9.ベランダ・アンド・パームコート ローズとキャルの昼食風景。同席しているイスメイと設計主任アンドリュースが、タイタニック号について誇らしげに語ります。 ・この場面の位置 Aデッキの最後部(劇場用プログラムP16に写っている緑色の窓)に、二等船客用階段を挟んで同じ造りの部屋が二つあり劇中に登場するのは、その左舷側です。ローズから見て右に一等喫煙室に通じる回転ドア、左にプロムナードに通じる引き戸がありました。ロバート・D・スペッデン(16項参照)や、ロレーヌ・アリソンは、よくこの部屋で遊んでいたそうです。 ロレーヌ・アリソン ハドソン・J・アリソン夫人は夫と別れる事を拒否し、ボートに乗らなかった。息子のトレヴァー(生後9か月)はボート11号に乗せられたが、母親のスカートを掴んで離さなかった娘のロレーヌ(3歳)は両親と運命を共にした。最後に目撃されたとき、三人は微笑みながらプロムナードデッキに立っていた。一等船客の子供で死亡したのはロレーヌ一人だけだった。 ・重箱ポイント キャルが給仕に「ラムにミントソースを添えて」と注文します。これは事故当日の一等ダイニングのメニューを参考にして作られた台詞です。以下は、同メニューからの抜粋。 ・ オルガ風コンソメスープ・ サーモンのムースリーヌ キューカンバーソース ・ 小鴨のロースト アップルソース ・ 桃のシャルトルーブゼリー ・ チョコレートとバニラクリームのエクレア |
10.レセプション・ルーム ローズの母がロテス伯爵夫人らと談笑しています。が、モリー・ブラウンがやって来るのに気づくと不愉快そうに席を立ってしまいます。一方、イスメイはスミス船長に全ボイラーに点火しスピードアップをするよう要請します。 ・この場面の位置 前部大階段Dデッキのロビー。 ・重箱ポイント この場面でイスメイはスミス船長を"E・J"と愛称で呼んでいます。 |
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