AMANO'S
超・究極のBH
瘋癲狼藉帖
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December *
2003
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Dec-24-2003
SPコンテスト(最適化・初級)
必ずその効果を実感できる簡便な調整法として、コルクシートを用いる曲面化処理があります。
この手法は、すでにこの狼藉帖に紹介しました(Jul-16-2002〜Sep-18-2002)。そこでは、試行錯誤的、探索的な記述でしたが、ここでは少し整理して、SOP風にしましょう。
 
ユニットを入手容易なFE108EΣとするとして、奥行きを150mmとする空気室で説明します。
 
コンンテストでは、空気室の奥行きが160mmの上段を使用しましたが、その後の検討で、EΣには150mmの方が好ましいようです。コンテストのパンフレットの板取図はDec-24-2002 の狼藉帖のそれに変更してください。
 
用意するもの
  コルクシート(2*450*300mm 、ホームセンターで500円位)
  ブチルゴムテープ(50mm巾)
  布テープ(38mm巾、50mm巾、接着後にキレイに剥がせるもの)
  カッターナイフ
  曲尺(長尺が500mmのもの)
  ヘラ(ホームセンターの塗装コーナーにある)
 
曲面化処理の目的
  空気室 : 定在波の発生防止
  音道折り曲げ部分 : 音の伝播抵抗の軽減
 
処理方法
空気室の曲面化処理 : 先ず、出来上がった現物を見ましょう。
 
処理手順
1)コルクシートをカッターナイフで裁断する(450*130mmを2枚)
2)両短辺から20mmに直線を引く(写真に見える黒い線)
3)両長辺を4等分する3本の直線を引く
4)空気室の内面を前から見て左右に2等分する中心線を引く
5)裁断したコルクシートを巻いてバッフル穴から入れる
6)短辺同士を合わせて布テープ(38mm)で固定し筒を作る(上の布テープ)
7)筒をバッフル板に密着しマークした線を一致させて布テープで固定する
  (コルクシートと空気室後壁との間隔は20mmとなっています。
   10mm、20mm、30mm、50mmと変化させましたが、最適値は
   20〜30mm辺りにあるようです)
 
SPターミナルを空気室の上面に取り付けるときは、その脚と重なる部分をハサミで予めカットします。
 
一方、SPユニットのマッグネット背面に、このように鉛の円盤と半球をエポキシで固定します(左:108EΣ、右:108ESII)      
 
これで、空気室で定在波の発生の原因となる平行面は、ほぼ、退治できました。
ここで、音の変化を確認しておきましょう。
 
音道折り曲げ部分の曲面化処理 : スロートの先の突き当りです。
 
処理手順
1)各音道の高さの60〜70%の位置にマークする(写真の赤線)
2)マークの間が滑らかな弧を描くように、コルクシートをカットする
3)ブチルゴムテープを介してもう1枚のシートで裏打ちする
4)布テープで固定する(白いのはヘラです)
 
詳しくは、狼藉帖(Jul-16-2002〜Sep-18-2002)を参照ねがいます。
ここでも、処理前後の音の変化を確認しましょう。もし、その効果を感知できない場合は、以降の曲面化処理を続ける必要はありません。
 
中段については、入り口側の180度折り返し部分の処理はスキップし(上級で扱う)、出口側のそれは、上段と同様に処理します。
下段については、上級でその効果を確認します。
 
補足 :
上級では、度々ユニットを外して空気室内の調整を行いますから、内部配線を長め(40〜50cm位)にしておきましょう。
また、このように、両面テープでウレタンフォームを固定すると、空気漏れを防げます。
 
Dec-20-2003
SPコンテスト(最適化)
セパラブルBHの最大の特長は
「組み立てた後から楽しみが始まる、そして、その楽しみが果てしなく続く」
ことにあります。
 
所詮、趣味とか道楽とかは、ご当人が「前より心地よくなった」と感じながら、ひたすら時間を浪費することではないでしょうか。
SUT−100のハコの中は、組み立てた後に、まさにその世界を広げてくれます。
 
コンテストの翌日に長文のメールを下さったSさんから、当日の会場で、
「SUT−100を無調整のまま使用しています。素直で癖の無い音で、特に管楽器が綺麗に鳴っていますが、早く調整法を公開してほしい」
と催促されました。
「まだ試行錯誤の段階で、一旦、なるほどそうだったのか、と思ったことも、あとでヒックリ返ることもあります。私の調整過程を、経時的に逐一公開するのはカエッテ混乱を招くと思いますので、私自身で納得できる一定の見解が得られる段階まで待って頂けないでしょうか」
と申し上げました。
 
でも、長くは放置できません。いろいろ思案の挙句、次の3段階で発表することにしました。
 
初級 : 空気室と折り曲げ部分を曲面化する方法
      (スーパースワンを超えます)
中級 : 各音道の断面積を調整する方法
      (30Hzまでフラットを達成、コンテスト出展の段階です)
上級 : 局所的な小技で調整する方法
      (各人の好みに近づく最適化です)
 
さて、SUT−100では、上にTGメタル(FG−10)を載せています。
これは12Kgもあって、持ち上げようと指を入れるとき、降ろそうと指を抜くとき、甚だ危険です。そこで、調整を始める前に「取っ手」を付けましょう。
 
この「取っ手」はホームセンターで1個80円(ネジ付)。念のため100円ショップで購入した超強力瞬間接着剤で補強しました。
この位置は、様々な用途を想定しても邪魔になりそうにもないので「取っ手付き」で販売してほしいものです。
 
Dec-15-2003
SPコンテスト(試聴ソフト)
コンテストで使用された課題ソフト(2曲)と瘋癲老人が選択した自由ソフト(3曲)を紹介しましょう。
 
(1)「Dream of the Orient」 (CONCERT KOLN / SARBAND)
   ARCHIV ; 474 193-2
   #2 W.A.Mozart "The Abduction from Seraglio"
 
この課題曲のF−レンジもD−レンジも10cmユニットで容易に対応できる広さですが、高域に細かい音が沢山入っています。大会場における大音量でも、その分解能を保てるか、が聴きどころになると思われます。
 
(2)「Surround Sounds] 
   TELAC ; CD-80447
   #4 "You Don't Miss Your Water" (The Memphis Horns)
 
強いて言えば、立ち上がりのスピードと男性ボーカルの伸びでしょうか。BHが得意とする課題曲です。
 
(3)「LET'S TALK ABOUT LOVE」 (Celine Dion)
   EPIC/SONY ; ESCA 6877
   #6 "TELL HIM" (Duet with Barbra Streisand)
 
「ミューズの方舟」主催のコンテスト(11月24日)の約一週前に行われたフォステックス主催のコンテスト(15日)での課題曲の一つです。
テストソースに、是非、加えたい女性ボーカルの曲として、当初、「CANTATE DOMINO」の#9 "JULSANG"を予定していましたが、かなりの方が両コンテストに参加されると予想し、それらに共通するソフトも一興、と、急遽、これに変更しました。
課題曲よりはるかに低い音が漂っていますが、冒頭1分半は音量が小さく、後方の席までは、十分届きにくかったようです。
 
(4)「ORGAN ILLUSION」 (Ales Barta)
   OCTAVIA ; OVCL-00056
   #1J.S.Bach "Toccata and Fugue in D minor BWV. 565"
 
32フィートを始め、5000本を超えるパイプから構成されるオルガンは楽器の王様です。F−レンジもD−レンジも最大で、複雑・微妙な音を自在に天から降り注ぎます。
オルガンは同じ周波数の音が持続するので、残響するBHはこれを苦手とします(実際、リハーサルでは、別の奏者の同じ曲を鳴らした方がいらっしゃいましたが、本番では取り止めています)。
100人余を収容する大会場でも、SUT−100はエネルギーに満ちた低音のメロディーラインを破綻なく表現するでしょうか。
 
(5)「SPIRAL CIRCLE」 (HELGE LIEN TRIO」
   DIW ; DIW-627
   #7 "TAKE FIVE"
 
この絵は狼藉帖に、すでに2回登場しています(Oct-23-2002, Sep-25-2003)。ご存知、JBL4348のデモ用ソフトです。
本邦で最初に4348を導入されたShuksさんの隠れ家にお邪魔して
「SUT−100の方が、低音の解像度と立ち上がりのスピードが勝っているワイ」
と密かに自己満足して帰るのでありますが、大会場ではどのような結果になるでしょうか。
残念なことに、セッティングに手間取ったり、演奏トラックを間違えたりで
「スカコン ド・ド・ド ドスン チ〜ン」だけで、"TAKE FIVE"のメロディーが始まる前に時間切れになってしまいました。
 
 
さて、今回の出展の目的である
 
* ポンと置いて重ねるだけなのにハコ鳴りやビリ付きが無い
* 吸音材を使わずに定在波の発生や開口部からの中高音の漏れを抑える
 
ことの証明は見事に成功しました。
また、低音の質と量に関しては、アンプ(P−7000)が卓越していたこともあって、予想以上の満足でした。 しかし
 
* 10cm ユニット一発で30Hzまでフラットに再生する
 
ことを明確するためには、別のソフト(たとえば、COWBOY JUNKIES)が必要だったかな、と思います。
 
Dec-08-2003
SPコンテスト(出展の目的)
* ポンと置いて重ねるだけなのにハコ鳴りやビリ付きが無い
* 吸音材を使わずに定在波の発生や開口部からの中高音の漏れを抑える
* 10cm ユニット一発で30Hzまでフラットに再生する
 
「そんなこと出来る筈が無い」 との声に囲まれています。
 
従来の常識からすればその通りです。が、果たしてどうか、100人を超える聴衆の前で実験をすることが、今回の出展の目的です。
 
セパラブルBHとしては、井上良治先生の「PSALM」、長岡鉄男先生の「D-201」が発表されていますが、後続がありません。同じ大きさの面を上下に重ねる両作品がビリ付いたのがその理由でしょうか。
 
「原則として吸音材は使用しない」 と、D−55の製作記事で長岡先生は述べられています。しかし、吸音材使用の弊害を熟知されている先生でも、その後の作品 D−57、58、58ES では、空気室にそれを使用されました。
クラシック派の瘋癲老人としては、交響曲のように D レンジの広い曲の小音量時に「音が寂しくならない」ために、吸音材の使用を頑なに拒んでおります。
会場では、SUT−100を全部バラして(ユニットも外して)陳列しました。
 
「f 特はSSを使った58よりフラットで高能率、ローエンドは30Hzまでハイレベルで再生、BHとしては初の快挙だ」 と、D−58ESの製作記事にあります。
先生は、その快挙をもたらしたものはFE208ESであったと、判断されたようですが、10cmユニットで30Hzまでハイレベルで再生するBHが出現したら、何と表現されるでしょうか。
 
「ミューズの方舟」主催 自作スピーカーコンテストは100人余の参加者を収容できる大会場で行われます。このコンテストを普段では許されない大音量で実験できる絶好の機会と捉えました。
参加者の印象に予断や暗示を与える可能性のある表現を避けるように心掛けたのは、その実験を厳正に行うためです。
 
Dec-01-2003
SPコンテスト(中山賞・日本の自衛隊)
「ミューズの方舟」主催 自作スピーカーコンテスト 2003 (11月24日) に、
SUT−100を出展しました。
 
成績は9作品中
            音質   アイデア  ルックス    総合
            2位     2位     3位     2位
 
で、司会の中山さんから、特別賞として 日本の自衛隊 を頂くことになりました。
曰く
「そこそこイッテいるのにイマイチで、一つも賞品を貰えなかった天野さんに」
ですって(アナログ全然やらないのをご存知なのに)。
額縁に入れて飾って置こうか、それとも、ウーン、悩んじゃう。
 
お父さんの一票だけでは可哀想だから、といって家内と一緒に付いてきた娘が
「私たちの不純な3票がなくても2位だからエライ。開票半ば過ぎまでトップでドキドキしちゃった」
と慰めます。本当に心優しい娘をもちました。
 
実行委員長の田中さんの「鉄道」
    音質1位、アイデア準最下位、ルックス最下位、総合4位 と
会長の前田さんの「ネオコンドル」
    音質3位、アイデア最下位、ルックス準最下位、総合2位
に挟まって、ポット出の新人の作品としては大満足の成績でした。
 
ところで、その翌日、次のような長文のメールを頂きました。
 
昨日「ミューズの方船自作スピーカーコンテスト2003」を聞きに行ったSと申します。
 
投票結果では音質部門2位という非常に残念な結果でしたが、
帰りがけに天野様にお伝えしたように、私としてはコンテストの中で一番良いスピーカーだったと思っています。
 
休憩時間にお話しましたように、私も「SUT−100」を既に作製して普段聞いており、無調整の私の「SUT−100」に比較して、やはり天野様の調整された「SUT−100」の方が良い音がしており、それだけでもコンテストに聞きに行った甲斐がありました。
 
とは言え、投票の結果、音質部門で田中博志氏作製の「鉄道」に負けたことは事実であり、謙虚に反省するのも「SUTー100」をより良いスピーカーにするためにも良いチャンスだ、と思います。
そこで気づいた点を書いておきます。
 
(1)会場で配布されたパンフレットの書き方
私としては、天野様のHPを見ているのでよく理解出来ますが、一般の方には分かりにくかったのではないか、と思います。やはり田中博志氏作成のパンフレットのような書き方の方がアピール度が高いと思います。
 
たとえば、「SUT−100」の場合、
 
特徴
(1)長岡先生の設計された名器[スーパースワン]を超えるスピーカーです。
 
この一文があれば、一般の方に理解しやすかったと思います。
 
(2)段取りの仕方
主催者側の人が「あ、スピーカーの設計者がスピーカー組み立てている!」と声が上がっていましたが、この点、前もって主催者側の誰かに組み立て方法を説明して任せる方法を採っていれば、その時間を有効に使い、「SUT−100」の説明時間なり、CDを掛ける時間などに使えたのではないか、と思います。
 
(3)説明の仕方
バッハのパイプオルガンのCDを掛ける前に、「このスピーカーは、30Hzまでフラットに再生出来ます。多くのバックロードホーンスピーカーの場合、低音のボリュームは出ていますが、音楽的な耳を持っている方には、低音域の音程が取れないということで、バックロードホーンは毛嫌いされていると思います。
このスピーカーでは、低音域の音程がちゃんと取れるように再生されますので、実際に楽器を演奏される方でも満足されることと思います。その点をお確かめ下さい。」などと、一言あれば、一般の方にわかりやすかったと思います。
 
(4)「SUT−100」の完成度
実際のところ、「SUT−100」は、現在調整中のスピーカーだと思います。ここが「鉄道」に負けた理由でもあると思います。今度は「スーパースワン」ではなく「鉄道」をターゲットにして改良するのが良いと思います。
 
たとえば「鉄道」のパンフレットの一頁目にあるDー118との音道比較の図があり、「鉄道」の開口部分が急激に拡大してありますが、開口部分は、あのように急激に拡大しておいた方が良いのではないか、という気もしました。
つまり、「SUT−100」の板取り「29」、「23」、「22」に関わる部分になりますが、長岡式バックロードスピーカーをたくさん作成した田中氏が、わざわざ開口部分をあのように改良(改善)しているのには、それなりの理由があるような気がする訳です。
 
ちょっと気になったのですが、コンテストに使ったバッハのトッカータとフーガのあの部分は、ひょっとすると30Hz以下の音が入っていたのではないでしょうか(この辺は記憶に自信がありません)。曲の一番最低音を出した時に「SUT−100」の音が濁ったようにちょっと感じました。あの曲を上手く再生する場合、もっと音道が長い方が良いのではないでしょうか。そうなると現在の奥行き585mmを維持する場合、もっと中段の高さを高くする方法もあると思います。この場合、板が2枚半ではなくなり、3枚になるかも知れません。現在「鉄道」の音道が260〜270mmで、「SUT−100」の290mm。「鉄道」でも30Hz近い音が出るかも知れませんが、中段を入れ替え音道をより長く延ばすことにより(「鉄道」にはこれが出来ない)、「SUT−100」の特徴が強化されると思います。
 
以上、私も「SUTー100」を使っているため、本家本元の天野様には頑張って頂きたく、縷々勝手なことを書かせて頂きました。
 
私としましては、天野様のHPを見まして、「やっとこのスピーカー自作分野にもインテリが現れた」と「本当に救われる」ような思いがしました。今までスピーカー自作分野は、特に長岡式スピーカーを組み立てたり、ちょっと自分なりに改造したり、改良したりするのが多かったと思いますが、私としては何を「基準」に話を展開しているのか、意味不明の内容が多く、ずっと困っていた訳です。
天野様のHPでは、「基準」や「ターゲット」がはっきりしており、「考え方」も「分析方法」も、「評価方法」も普通に書かれており、普通の知性を持ち合わせている者にも論理的で理解しやすく、本当に助かりました。
 
そして、使用機器(アンプやプレーヤなど)が、一般の人が買えない特殊な機器や高価
な機器を使っていないのが良いと思います。
また、今回の三段重ねのアイデアは秀逸だと思います。
 
これからも、たびたび天野様のHPを見させて頂こうと思っております。
 
本当にビックリしました。SUT-100の設計を発表したのが昨年の12月、製作記はこの8月です。既に、それを常用されている方がいらっしゃったとは。
そして、熱意の籠もった応援のメールに、亡くなったオヤジから懇々と説教されているようにも感じました。
Sさんに深く感謝の意を示すとともに、今後も、SUT-100を愛用して頂くために、メールへのお返事を兼ねて、「コンテスト出展の目的」、「自由曲選択の根拠」、「SUT−100調整法の概略」「構造から見た鉄道とSUT-100の比較」などについて、この狼藉帖に、連載していきたいと思います。

 
 
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