AMANO'S
超・究極のBH
瘋癲狼藉帖
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October ***
2005
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Oct-20-2005
二つのディップ
三次元的空間表現を探求されていらっしゃる音場小僧(おんばこぞう)さんから、D-58ES・EXのF特が送られてきました。 
 
サーロジックの村田氏が
「なにやら高そうなマイクをリスニングポイント(SPから160cm)でエソターの高さにあわせて測定してました」
とのこと(このページもご参照)。
 
ツィーター(エソター)とスーパーツィーター(T96A-EX)を併用しているので、高域は20kHzを超えて延びていますが、その他は、品川のKさんの測定されたスペクトルと酷似しています。
 
続いて
「100Hz,40Hzの凹みはユニット軸上正面10cmでもはっきり現れていたので、村田氏も208ESの特性だろうとのことでしたよ」
と、次のスペクトルも送ってくださいました。
なるほど、ユニットの直近でも二つのディップが存在するので、部屋の特性に起因するものではなさそうです。
ただ、「208ESの特性」とするのは、どうでしょうか。
 
FE208ESの取説にある周波数特性(低域のダラ下がりから見て、平面バッフルか密閉箱での測定でしょうか)には、該当するディップは見当たりません。
 
では、共鳴管でのF特も見てみましょう。
ネッシーと言えば、東の横綱AE86さんです。スピーカーのページにあるネッシーII改のスペクトルをお借りしましょう。
FE208ESは新バージョン、1mでの測定です。
取説のF特で、200Hz以下の低域だけををそのまま持ち上げてフラットにしたような見事な特性です。
 
西の横綱くずてつ船長さんD-55ESを聴くにも興味深いデータがあります
(船長さん、その節は、一方ならぬお世話を頂きました。お借りしますよ)。
 
D-55(FE208SS)、軸上3mでのF特です。
注目する二つのディップは64Hzと125Hzのバンド。D-58ESの場合より、若干、短波長側にシフトしているのは、ハコの大きさ(音道の全長)に関連していることを示唆しているのでしょうか。
 
D-55ES(FE208ES旧バージョン)、上と同一条件で測定したF特。
「ハイは早目に落ちている。100Hz 以下で3dB〜5dB程度レベルが高い。
SSと比較すると、さらにフラットに近づいた感じである」
との、船長さんのコメントがありますが、対応する二つのディップの深さには殆ど差が認められません。
 
D-55ES、T-500A、SW−11MKII全駆動、軸上3mのF特。
サブウーファーの併用で、二つのディップは、少し浅くなっています。
 
以上のいくつかのデータを並べて見ると
「コーンの動作には、おおよそ、200Hzを境に、低域側ではその置かれた環境が大きく影響し、高域側ではそのユニット固有の特性が優先的に現われる」
と、言えるのではないでしょうか。
 
長い話になってしまいましたが、二つのディップは「FE208ESの特性」より、むしろ、FE208ESを支える「ハコの特性」に由来する、の方が適切か、と思います。
 
 
100人中何人の方がそのディップの存在を聴感で感知できるか分かりませんが、最近のステサン(155号、156号)の特集に掲載された35種に及ぶ市販スピーカーのF特を見ると、100Hz付近に5dBを超えるディップのあるものは皆無です。
再生ソフトを選ぶことが許されないレベルにある市販スピーカーにとって、けだし、むべなるかな、であります。
 
 
Oct-05-2005
SUT-100 の周波数特性
品川のKさんが測定された SUT-100(FE88ES-R)の周波数特性(F特)を拝見する機会がありました。
測定方法などは、次の通りです。
 
My Speaker という自作スピーカー測定プログラム(シェアエェア)を使用。
パソコンのサウンドカードから出力した信号をアンプ(Panasonic:SA-XR50)に送ってスピーカー(SUT-100)を鳴らし、その正面に設置(距離100cm、高さ80cm)したマイク(Behringer:ECM8000)で採音、サウンドカードに戻す。
 
さて、そのF特です。
 
次は、見慣れた1/3オクターブ巾の測定結果です。
 
Kさんは同じ部屋で、D-58ES(フィンランドバーチ)のF特も測定されていました。
ただし、アンプは実売価格3万円のフルデジタルでなく、セパレート
(プリ: SATRI PRE-7610、パワー: Ayre V-5x)。
 
同様に、1/3オクターブ巾。
 
札幌のKさん、杉並のShuksさんのように、D-55を使っていた方がSUT-100を作られていることを考えると、同じ部屋でD-58ESとSUT-100のF特が測られても、まあ、そういうこともあるかと、驚きません。
ところが、品川のKさんは、B&Wの Signature 800 のF特も測っていました
(アンプはD-58ESのときと同じセパレート)。
 
以上のスペクトルを見て、何を感じるかは、人により様々でしょうが、Kさんと交わした会話を要約しましょう。
 
1.SUT-100:
  80Hz付近のモチアガリの原因は不明、このモチアガリに関連してか、
  低音がややボンつき気味(これはアドバイスで、後日、解消したと)。
  3万円のアンプでのドライブにしては、低域をよく頑張っている。
  D-58ES、Signature 800と比較しても、全体として、驚異的に素直な特性
  (長岡先生が見たら絶句されるのでは、と、Kさん)。
2.D-58ES:
  50Hz、100Hz付近のディップはハコの特性か。
  500Hz付近のヘコミと1KHz〜4KHzのモチアガリはユニットの特性
  (FE208ESの取説にあるF特を参照)。
3.Signature 800:
  4Kz付近のヘコミはB&Wのオト作り
  (発売中のステサン156号P131にある 800Dの特性もそこがヘコンでいる)。
  70Hz付近のモチアガリは、多くの市販SPのオト作りにも見られる
  (ステサン155号、156号に特集された多数の市販SPの測定データを参照)。
 
ところで、上のスペクトルが測定された日付を見て、KさんのSPの数奇な変遷
(とその理由)に興味をもたれた方もいらっしゃるでしょう。
 
Kさんがオーディオに強く関心を持ったのが5年前、そして、最初に製作したのが
「ローエンドは30Hzまでハイレベルで再生、BHとしては初の快挙だ」
との、製作記事にも誘惑されたD-58ES(これは、よくある話)。
意外な低音不足に悩んで、サブウーファーの導入を検討(これも、よく聞く話)。
ところが、
「SWでは、オト的には整うが、原ソフトの音楽性は損なわれる」
との、某ショップの信頼するアドバイザーの言葉もあって、Signature 800を導入
(これは、珍しい)。
D-58ESは弟さんにプレゼント。
ところが、
不幸にも、実家が新潟県中越大震災(2004/10/23)に遭遇。
そこで、
手持ちの動産に加えて、オーディオシステムを売却し(約300万円になったとか)、
実家を支援(これは、さらに稀有で貴重)。
かくして、
次のメールを頂きました(2005/02/21)。 
突然に失礼致します。
私は、H/Pをいつも楽しく拝見させて戴いていると共に、天野さんの
SUTシリーズに対しての並々ならぬ情熱に感服しているものです。
 
一昨年の「ミューズの方舟」のコンテストで、初めて「SUT-100」を拝聴して、
大変に感激をしました(私は、音質においてダントツに良かったと思っています)。
 
ところで、大変に不躾ではありますが、次の質問にお答えを戴きたくメールを
させて戴きました。誠に失礼かと思いますが、お答え戴けませんでしょうか。
 
1.「SUT-100」を製作する許可を戴けませんか。
2.もし、お分かりなら材料代の目安を教えて戴けませんか。
3.ツィーターが必要と思われますが、如何ですか。
4.3.で必要な場合、お勧めのツィーターはありますか。
 
勝手を言ってすみませんが、宜しくお願い致します。
また、これからも、H/Pの更新やSP製作にがんばってください。
陰ながら応援しております。      
なお、これまで、同様のメールを幾人かの方から頂き、その方々の要望に応えて
「SUT-100の組み立てキット(音道調節板を含む)」を提供してきました。
カット加工などの委託先は[ミューズの方舟]のコンテストで、総合賞を連覇された山越さんの山越木工房(旧:高原木工所)です。
 
 
さて、その約半年後、Kさんからお招き頂きました(2005/09/23)。
 
サーロジックのカウンセルも受けられ、残響が調整された部屋に収まっているSUT-100。
 
上段にあるのは、自作されたDACとその独立電源。
中段には、フルデジタルアンプ(Kさんの精悍な顔の半分が映っています)。
その下は、2万円で買った中古のトランスポート(TEAC P-700)。
 
「H/Pでのハナシと違う、と、お叱りを受けるのかと、首を洗って参りました」
「いえいえ、その逆、大満足です。値段は前のシステムの十分の一もしませんが、中高域は、全然、遜色ありません」
 
 
[ミューズの方舟]主催のサウンドフェスティバル(10月30日)で、
「2ちゃんねるで話題沸騰のパナソニック SA-XRシリーズ」とSUT-100 のコンビで鳴る、緻密で透明感の高いオトをお楽しみ頂ける予定です。
 
 
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      「ミューズの方舟」の10月定例会は、23日(日)午後2時から
      東京都中小企業振興公社 第3会議室B
 
 
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