トムと出会ったのはその頃でした。
大きくもなければ小さくもない、といった規模の町のバーです。
ドクターにそのことを報告する前に、僕は彼の正体を知りました。なので、秘密にせざるを得ませんでした。
もっとも、「同い年くらいのすごく顔立ちのきれいな奴と知り合いました」なんて手紙を送っても、あなたを困惑させただけだったでしょうが。ドクターが僕の手紙を読みながら、困った顔でに頬髭を引っ張る姿が目に浮かぶようです。
僕たちの出会いはドラマのようにロマンティックではありませんでしたが、映画のように暴力的ではありました。といっても、出会い頭に彼を殴ったという意味ではありませんよ。
彼は今でも「お前が最初に言った言葉を覚えてる」と僕をからかいます。
あんな台詞を現実で聞くとは思わなかった、とも。
そんな大層なことを言ったわけではありません。嫌がるトムを二人の男が連れて行こうとしていて、僕は「離せよ」と言っただけです。
──念のため付け加えておきますが、その時点で僕に何か下心があっただなんて思わないで下さいね。いくらなんでも僕はそこまで最低な男ではないつもりです。
ドクターも知っているように、僕は、目的もないまま、いろいろな場所をフラフラしていました。
ちゃんとした仕事に就くべきだと思いましたが、一定期間ひとつところに留まると、必ず誰かが、僕を「13日の金曜日事件」(僕はこの呼び方は大嫌いです)の関係者だと気づきました。
僕は興味本位であれこれ質問されるのにはうんざりでしたし、したり顔で労わられるのはもっと苦痛でした。中には100%純粋に思いやりを込めて接してくれたひともいたのでしょうが、そのときの僕にはそれを受け取るだけの余裕がありませんでした。
幸か不幸か、僕の手記は未だに少しずつですが売れ続けているようで、そんなふうに気まぐれな働き方でも、別段食うには困らなかったのです。 |
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