トムは、面倒な同居人ではありませんでした。怪我のせいもあったでしょうが、どちらかと言えばおとなしく控えめで、生活のレベルは僕と同じくらいでしたから、そういう意味でも気を使う必要はありませんでした。
それから三日後(だったはずです)、トムは、そろそろ怪我もマシになったし、出て行くと言いました。僕はその頃には彼がいる生活に馴染んでいて、部屋の中に自分以外の誰かがいる、という状況を歓迎していました。
単身者用の狭いアパートに、僕たちみたいな大きな男が二人、わずか三日とは言え一緒に暮らして、息苦しくもなかったのは、僕が彼を気に入っていたからでしょう。
おそらく彼も、そうだったのだろうと思います。出て行く、と言った彼があまりに正直に寂しそうな顔をするので、深く考えもせずに、ここにいてもいいよ、と言いました。
どうせ彼に帰るところはないし、僕には行くところがありません。ろくでなしが二人、一緒に暮らしたところで、何か都合の悪いことがあるでしょうか。
何より、僕はトムを出て行かせて、彼がまた見知らぬ男たちに〈買われる〉ことを思うと、傷つくような苛つくような、落ち着かない気持ちになりました。
そのときには、僕はとっくに彼に恋をしていたのでしょう。
──思えば不思議なことですね。僕はそれまで一度だって同性を好きになったことはなかったのに、よりによってその相手があの「トム・ハニガー」だったなんて。
もし、ジェイソン・ボーヒーズが逃亡先でハーモニー事件の遺族と出会い、彼女(あるいは彼)と惹かれあったら、なんて皮肉だと僕はヒステリックに笑ったことでしょう。
僕がトムの正体に気づいたのは、一週間ほど経ってからでした。最初に気づいていれば、今みたいなことにはならなかったと思います。僕は警察に電話して、凶悪犯として彼を引き渡すことに何のためらいも感じなかったでしょうから。
もっともこれは、そうしたかった、という意味ではない、と言うことを書き添えておきます。
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