| DIVORCE 2 |
| やっぱりソファは、好きなように手足を絡めるには、どうにも狭くて、どちらからともなく座面から下へと転げ落ちた。 足元のマットも充分に毛足が長くて柔らかだったけれども、当然ながらスプリングで柔らかく恋人を受け止めはしないから、背中を痛めないかとブラッドは気づかった。 でも、向かい合ってセックスをしたがったのは、ショーンの方だ。 彼は、キスの最中にも、何かを確認するように何度も目を開け、ブラッドの表情を伺った。 そのくせ、いったい何を探しているのかと、探るように見返せば、秘密を暴れるのを恐れるように、ぷい、と視線を逸らした。 その瞬間に見た翡翠には、たしかに怯えの色が浮かんでいて、だからブラッドは問いたださずにはいられない。 「……ショーン? 何考えてるんだ?」 「あ……っ、な、にも……っ」 何も、と頑なにショーンは首を振った。そうして、不安をまぎらわせるかのように、彼は積極的に、恋人の愛撫に応えた。 もともとが過敏な性質だから、ショーンは驚くほど簡単に、快楽のふちへと追い詰められた。 「あ…ブラッド…、い……あ…っ」 白い首筋に唇で触れるだけで、ビクリと身体が揺れる。そのたびに、折り曲げた膝の内側が、ブラッドの身体を叩いた。 は、は、とせわしなく呼気が漏れ、指先がせつなげにブラッドの肌を滑る。 胸元に顔を寄せて、桜色に尖った乳首を濡れた舌で舐めあげると、ことさらに甘い声で啼いた。 「あ、あ……っ、ん、ん……っ」 皮膚の薄いそこはそのぶん過敏で、与えられる刺激はダイレクトに腰へ届く。 ショーンは無意識に背を丸めて、大きすぎる快楽から距離を置こうとした。 もちろんそれは、物理的には数ミリ程度のことでしかなく、そんなことで恋人の身体が離れるはずもない。 「は……、あ、ブラッド、そこは……っ」 いいのか悪いのかまでを口には出さず、けれど答えなどとっくに承知のブラッドは、遠慮もなく吸い上げて、高い悲鳴を上げさせた。 手のひらに握り込んだ欲望はすでに大きくなって、とろとろと蜜をこぼしている。べたべたと手を汚すそれを指先にすくい取って、ブラッドはまだ閉じたままの秘蕾に触れた。そろりと入り口から指をもぐりこませると、ショーンがちいさく息を呑んだ。 「ん……っ……」 「……キツイ? 無理そう?」 「いや……大…丈夫……」 はぁ、と大きく呼吸して、力を抜く。ブラッドの長い中指がすべて納まる頃には、吐息と一緒にかすかな声がこぼれ始めた。性悪な女よりもタチの悪いそこは、いつだって、他人を受け入れるのは初めてのようなフリで、ブラッドの指を締め付ける。 そのくせ、ふくりと盛り上がった前立腺を刺激すれば、物欲しげに腰が揺れた。 「あ、あ……っ、ブラッド……なあ……」 「まだだ、ショーン。ほら、力抜いて。まだ全然入らないだろ」 「もう、いいから……っ、ブラッド……」 早く、と恋人を煽るショーンは、やっぱりいつもの彼とはどこか違っている。 そんな新しい一面を見せられるのも悪くはなかったけれど、だからといって、ブラッドはむやみにショーンを傷つけるような真似はしたくなかった。 「これじゃ入らないってば。それとも、俺のこと、バカにしてんの?」 「え? ち……違、そんなわけじゃ……」 慌てたように目を開けると、笑いをたたえた青い瞳とぶつかった。空色の虹彩がにじんで見えるのは、ブラッドではなくショーンの目元が潤んでいるからだ。 キスを受けるためにまぶたを閉じたら、目の端から涙がころがり落ちた。 「ん……ん、ふ……っ」 ぐり、と後ろを強く擦られて反射的に背中が反った。上がった声は、ぜんぶブラッドの唇に消える。 身体は、外側から開かれることへの恐怖ではなく、悦びを知っていた。受け入れる熱の、熱さも。 「ブラッド……ぁ……、ん、ブラッド……!」 びくびくと後孔が痙攣する。すでに指を三本受け入れたそこは、すっかりほぐれて、ぬるぬるとブラッドの指を濡らしていた。 その感触はショーンだけでなく、ブラッドも煽り立てる。熱くて、狭くて、蕩けそうなのは彼なのか自分なのかが、わからなくなりそうだ。 「ショーン」 熱を帯びたささやきは、これから始まることを期待させるに充分で、ショーンはぶるりと身体を震わせた。 膝の裏をすくうようにして脚を開かせて、ふっくらほころんだ秘所に、猛った自身を沈めていく。慣れたそこは隙間なくブラッドを包み込んで、身体の奥へと誘い込んだ。 「……ぁ、あ……っ、は……っ……」 うがたれる深さに比例するように、ショーンの白い喉が反り返る。そこに唇を寄せるとき、いつも吸血鬼に「戻った」気になって、すこしばかりおかしくなる。あのとき、自分が欲しかった獲物が「彼女」ではなく、目の前の恋人だったなら、牙をたてることに一瞬のためらいもなかっただろうと思うからだ。 「ブラッド……、ブラッド……!」 自分の脚を抱えあげるブラッドの腕をたどり、震える指先が肩から背中へ回される。 短くそろえた爪の先が、肩甲骨の辺りをひっかいた。 「……あ……っ! あ、ああ……っ、ん、や……っ」 律動を開始すると、嬌声は高く、悲鳴じみてくる。 ん、ん、と甘えるような鼻声をあげながら、ショーンは何度も首を振った。金色の毛先からは、汗の雫がこぼれてゆく。それと同じリズムで、身体の間で震えている欲望を扱いてやれば、何もかもが蕩け落ちそうな濃密な声で啼いた。 「ブラッド……あぁ、だ、め……っ」 がくがくと腰が振られて、お互いの快楽を深めていく。 もうブラッドは、ショーンの身体を気遣っていたことも忘れてしまった。 「ああ──────っ!」 ひときわ高く、甘い声が耳をくすぐると同時に、手の中でショーンが弾けた。目を閉じて、快楽に耐えようとする表情は、とてつもなく禁欲的で、同じだけ淫靡だった。 そうして、その波が去った後、もう一度、今度は恋人の放った波にさらわれて、ショーンは言葉もなく、一瞬意識を閉じた。 |
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| 2005.03.06 |