フロリダで負け知らずの凄腕弁護士ケヴィン・ロレックスは、ジョン・ミルトン率いる大手法律事務所に誘われて、妻のメリー・アンと共にニューヨークへと進出する。
ニューヨークでもその実力を発揮するケヴィンは、妻を顧みず仕事に熱中するようになる。 一方でメリー・アンは新しい環境に馴染めず、やがて精神に変調をきたす。
メリー・アンの目にときおり映るありうべからざる映像ははたして幻覚なのか? そして、全てが明らかになったときの、ケヴィンの選択とは?
2時間以上の長さの割に全然気が抜けなかったなー。 正直、そんなに期待せずに観たんだけど、これは面白かった。
大筋としてはキリスト教系の伝承にのっとったファンタジックホラー。 でもそのままホラーとして見るより、訴訟社会といわれマスコミが大きな影響力を持つアメリカ社会(に限らないけど)の救いがたい一面をああいう形で表現したんだと思った。
一方で、法廷モノの要素もあり、夫婦の危機を描くドラマの要素もありで、最初から最後までホラー仕立てというわけでなく、まあ要するに人間ドラマの波状攻撃というか。
キアヌ・リーブスのきびきびした動きは好き。
パッと見は冴えないが陽気で魅力的な悪党ジョン・ミルトンを演じるアル・パチーノは、ホントに魅力的。 でも悪党。
「アマデウス」の王様、「エド・ウッド」の予言者クリズウェル、そして本作ではエディー役のジェフリー・ジョーンズが、だんだん太ってきてるのが気になった。
殺人の容疑者カレンの秘書メリッサ役の人(Laura Harrington)は石野陽子に似ている。
原題の "The Devil's Advocate" を直訳すると「悪魔の弁護人」で、単純に考えるとケヴィンのことを指すわけだが、「悪魔のやってることを弁護する者」という意味にとればジョン・ミルトンのことを指すとも言えるのかな。
邦題に使われている「ディアボロス Diabolos, Diaboros」という言葉は、Devil を表わすギリシャ語起原のラテン語名称。 一般に、全てのデーモンの指揮官を指す。 ギリシャ語では「偽りの告発者」「他人をそしる者」という意味らしい。
(以上、出典は青土社「悪魔の辞典」)
誰がこの言葉を邦題に持ってきたのか知らないが、なかなかうまいネーミングかも。 語源を知ってて使ったのかな。
ただし、ディアボロスとサタン(堕天使)は厳密には異なる存在なので、ラストでジョン・ミルトンが天使の翼を持つ者として描かれていることとはちょっと矛盾する。
おっと、そうなると原題にある Devil も矛盾するわけだな。
1998-11-08