「連れて行って」
「置いていかないで」
どれもフランソワーズの口から聞いたことはない。
普段ならともかく、戦い絡みの時は絶対に。
僕たちは恋人同士だけど、互いに依存しあうようなそんな関係ではないのだ。
とはいえ、実は僕はそういうセリフに弱い。
女の子に心細げに言われたりした日には、とても放っておけない。
それが元で、過去にアレコレ痛い目に遭っていたりもするのだけど。
そんなわけだから、目の前のフランソワーズがそのセリフを口にした時は驚いた。
しかも防護服姿で、思いきり「003」している時に。
「……ええと」
僕は両手を挙げて一歩後退した。
額に汗が滲む。
「ジョー。待っていたのよ、ずっと。あなたを」
いやまあ、それは光栄だけど。
その前にまずレイガンを下ろそうか。
それ、どう見ても僕を狙っているよね?
それにホラ、なんだかきみの目付きも違うよ?
「ふ、ぜ、003」
フランソワーズと言いかけて言い直した。
だって彼女は僕の知っているフランソワーズではない。
「ジョー。会いたかったわ」
僕は会いたくなかったよ。
偽者のフランソワーズなんかには。
「……ごめん」
僕は加速装置を使うと彼女からの一撃を避け――続く動作でスーパーガンを抜いた。
彼女の額へまっすぐにのびる白い光。
「……っ」
幻影島での戦いはこうして終わった。
***
「僕も一緒に行くよ」
「あら大丈夫よ」
「……置いていかないでくれ」
「ジョーったら。今日はいつになく甘えん坊さんね?」
買い物に行くというフランソワーズの後を追い掛ける。
「置いて行かないから、慌てないで」
フランソワーズは立ち止まると、苦笑しながら手を差し出した。
僕はその手を握り締める。
ああフランソワーズだなあと思いながら。
「ジョー?」
「うん。なんでもない」
なんでもないよ、フランソワーズ。
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