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 そうか。今日はクリスマスだ。 
 
 
 
 僕はひとりぼっちだった。 テレビをつけても、カップルで行くのにおすすめのとか何とか、そんなのばかり。 
 
 
 淡い金色の髪の。 
 
 もちろん僕も誘われた。 僕は天井を見つめ、そしてリビングにある巨大ツリーを見つめた。日本ではさっさと片付けるけど、他の国は年内飾っておくという。本当だろうか。 僕はツリーのてっぺんの星を見た。 それが合図だったみたいに電話が鳴ったから驚いた。 
 「ジョーか!」 ほらやっぱりいただろう、と電話の向こうで勝ち誇った声。 「…なんスか。酔ってるんですか」 お前は家族だろーが! 
 産まれたばかりの彼女の甥に会いに行くというのに、一緒に行こうと誘われたのを断った。 自分でもわからない。 
 電話の向こうで、お兄ちゃん酷いという声。 
 しばしの間のあと、 「な?頼むよ」 「……わかりました」 しょうがないなぁ。 
 リビングには巨大なツリー。 そうだ、今日はクリスマスだったんだと思いながら。 
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 窓に映る自分の顔。 今朝はさえない顔をしていると思った。 もうすぐパリに着く。 なんとか滑り込んだパリ行きの便。 
 『お兄ちゃん、酷いわ。どうしてジョーに電話なんかするのよ!』 
 「――だ、そうだ。聞こえたか?」 「はぁ……」 元気そうなフランソワーズの声。もう怒っていないようだ(いや、それは希望的観測か?)。 「ま、ともかくだな」 いったん言葉を切って。軽く咳払い。 「――俺の中では、お前はもう俺の家族になってる。それにお前がいないと低気圧で困るんだよ、うちの妹は」 
 
 「…わかりました」 
 ――しょうがないなあ。 
 そして数時間後。 僕は、それはフランソワーズだけではなく僕自身についてもいえることに気がついた。 
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