ガレージに車が入って来た音をキャッチした。
視なくてもわかる。ジョーのストレンジャー。
思わず部屋を出て、リビングに急ぐ。
彼を、暗い家に帰らせるのはしたくなかったから。
既に消えていた部屋の電気を点ける。
それと玄関に人の気配がするのがほぼ同時だった。
「お帰りなさい」
言いながら、リビングから廊下に出る。
ほら。
やっぱりジョーだわ。
「た、ただいま」
いっしゅん、びっくりした顔をして、でもすぐに微笑む。
褐色の瞳が優しい。
つられて私も微笑んでいた。
「遅かったのね」
咎めるような口調になっていなければいいけど。
なんだか可愛くない言い方になってしまっていた。
「あ、うん・・・ちょっとね」
「ジョーが一番最後よ。鍵、かけておいてね」
それでも口調は直らず、なんだか怒っているみたいになってしまった。
言って、リビングに逃げ込む。
心臓がドキドキしてる。
落ち着きなさい。
昨日までは平気だったでしょう?彼の顔を見ても。
どうして今日はこんなに落ち着かないの。
続いてジョーも入ってきたものだから、心臓の音が一段と大きくなった。
「他のみんなは・・・」
いないの?と、ちょっと不思議そうな声。
・・・私がひとりで居るの、不自然だったかな。
「もう部屋に行ってるわ」
「・・・待っていて、くれたの?」
「えっ」
思わず振り返る。
待っていたけれど、待っていない。
だって。
デートの帰りかもしれないひとを待っているなんて・・・悪趣味の極地。
待たれているひとから見れば、迷惑以外の何者でもなくて。
案の定、ジョーの表情が少し曇った。
「・・・迷惑だった?」
ばか。
何言ってるの。
そんな訊き方をしたら、例え本当に迷惑だったとしてもそうと言えるわけがない。
「そ・そんな事・・・」
ほら。
困ってる。
「・・・ごめんなさい」
口早に言うと、リビングを後にした。
まるで逃げるように。
おやすみなさいと投げ捨てるように言い置いて。
「仲間」の私が、『彼の帰りを待っていた』なんて、そんなの彼にとってはただの迷惑。
今は任務中でも何でもないのだから。
誰にでも優しい彼は、あからさまな表情はしないけれど。
でもきっと、凄く嫌な女に思ったのに違いなくて。
消えてしまいたかった。彼の前から。
なのに。
ジョーの顔を見たら。
心の奥にしまっていたはずの想いが溢れてしまった。
好きなの。
そばにいたいの。
声を聞いていたいの。
私の中の「おんなのこ」が言うのよ。
ジョーのことが好きなの。って。
・・・私は。
こんなに、彼のことが好きだったなんて・・・知らなかったのよ。