「一緒にすごす誕生日」
〜もう遅い?〜
その日、スリーは随分早くにやって来た。 玄関チャイムが鳴って目を覚ました僕は、ぼんやりインターホンに出て、そこから聞こえるスリーの声に完全に覚醒した。 午前8時。 きっかり24時間一緒にいるためには早く来なくちゃ、と、もっともらしく話すスリー。
スリーが僕の部屋に来たのは数えるほどだったけれど、かといって一緒に居るのが息苦しいということはなくて、むしろ僕は一人でいる時よりリラックスしている感じがしていた。 まったく、どうしてこうも空気が違うんだろう。 彼女が僕のテリトリーにいるというだけで、いつでも捕まえられるのだという安心感が生まれるのだろうか。 ――いつでも捕まえられる。 確かにその通りだったけれど、本当に捕まえることができるのかどうかは甚だ疑問だった。 ――でも。 もう君の逃げ道はないよ、フランソワーズ。
けれども、圧倒的優位に立っているはずの僕は、彼女の笑顔を見るたびに敗色が濃厚になってゆくのを感じていた。 こんな――はずでは。
「もう、遅いわよ」
――何が?
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