「一日が短くなる」
〜お題もの「恋にありがちな20の出来事」より〜

 

 

最近、一日が短くなったような気がする。


そう言ったら、当たり前でしょうそういう季節なんだからと言われた。
だから僕は、そういう意味じゃないよと答えた。
大体、季節によって変わるのは日照時間であって、一日の時間数が変わるわけではないのだ。
そう解説したら頬を膨らませて黙ってしまったけれど。

だけどさ、フランソワーズ。

実際、僕には一日が短く感じるんだ。
朝、会ったばかりなのに、あっというまに夜になって帰る時間になっている。
前はこんなんじゃなかったのになあ。

いったい何が変わったんだろう?


・・・なんてね。

実は答えはわかっているんだ。

 

 

***

 

 

「ジョー。どうかしたの?」


クッキーをつまむ手を止めた僕をスリーが心配そうに見ている。

「美味しくなかった?」
「いや、美味しいよ」
「よかった」

ほっとした様子のスリー。

僕の一日が短く感じるようになったのは君のせいだよと言ったら、どんな顔をするだろうか。

一緒にいる時間があっというまに過ぎていくせいだよと言ったら?


僕は、そう言ったらするであろうスリーの表情を想像した。

たぶん、困ったように頬を染めるだろう。
物凄く可愛いに違いない。

でも、そんなことは面と向かって言えないから、僕は曖昧に笑ってクッキーを食べた。

いつもより甘いなあと思いながら。

 

 

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