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 傘にあたる雨の音が段々激しくなり、気付いた時には滝のように雨が降っていた。 窓際の席に向かい合って座り、ぼんやりと流れる車を眺めている。 「・・・止まないわね」 電車で帰るのは可能だろうか。 しかも、実はジョーは――雨が大嫌いなのだ。 窓外を見てため息をつくジョーに、フランソワーズは何か彼の気をこちらに向けられないかと考えた。 
 「――帰れなくなったらどうしようか」 
 外を見たままジョーがポツリと言う。 「どう、って?」 ジョーが手元の携帯電話の液晶画面を示した。 「嘘でしょ」 
 さあ、どうする? 
 「・・・タクシーで帰るとか」 確かにそうだろう。 「ん・・・でもジョーがいるし」 黙り込んだフランソワーズにジョーが追い討ちをかける。 「僕は別に構わないけど、博士が見たら卒倒するだろうなぁ。ああそうだ、イワンも確か昼の時間だったはずだ。驚くだろうなぁ。まさかきみがそんな格好で帰ってくるとは思わないだろうな」 
 泊まる? 
 ジョーと? 
 「・・・部屋は別々よね?」 「どうして、って」 
 どうして? 
 頬杖をついて自分の反応を面白そうに見ているジョーに、フランソワーズは小さく息をついた。 
 ――もう。だから雨って嫌いよ。 
 「何か言った?」 
 ジョーの瞳の奥に見えるのは何だろう? 
 「・・・何でもないわ」 
 前言撤回。 やっぱり雨の日は好きになれない。 ジョーが一緒だと特に。 
 いつもよりも扱いにくいジョーを前に、早く雨が止めばいいのにと祈るしかなかった。 
 
 
 
 
 
 
 
 
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