冒険者たちはマナー・ハウスの扉を叩きます。ニューモデル軍の兵士たち3人は館の外で待機することにして、館に入るのは冒険者たちとギルデンスターンになります。
扉を開けて出迎えてくれたのは執事ではなく、普通の農民でした。ギルデンスターンがレディ・ジュディスとの面会を求めると、全員をうさん臭そうな目でじろじろと眺めた後、応接間へ通してくれます。
GM:やがて応接間に、質素で流行遅れのドレスを着た老齢の貴婦人が現れます。彼女がジュディス・オーガスタスです。民さんをジロリと一瞥すると、「どのような用件で?」と言います。
エドワード:とりあえず挨拶をして用向きを伝えます。「ケンブリッジで事件がありまして、こんな風体の連中を追っていまして……」
エドガー:レディ・ジュディスのニューモデル軍に対する態度とかはどう?
GM:聞いていた通りです。皆さん全員に等しく、面倒なよそ者に対する硬く冷淡な態度を取ります。彼女の態度を軟化させるには〈礼儀作法〉ロールをしてください。
エドワード:持ってはいますが、28%と特に高いわけではありません(笑)。(コロコロ……)失敗。
エドガー:いつでもエドワードと入れ替わっても良いように〈礼儀作法〉を29%取っているんだよね(笑)。(コロコロ……)う~ん、失敗。……ヒーロー・ポイントか?
GM:レディ・ジュディスの皆さんに対するファースト・インプレッションは中立ではありません。このままだと敵対的なままです。
エドガー:そうなんだよね……。いや、使うよ、ヒーロー・ポイント。頼む……(コロコロ)……08! 成功だよ!!
一同:おお!
GM:するとレディ・ジュディスは片眉をピクリと上げます。(レディ・ジュディス)「……まずはお茶を用意させましょうか」皆さんには縁が欠けた不揃いのティー・カップに入れられたゴボウ茶が出されます。
一同:(笑)
GM:この後、レディ・ジュディスはエドガーに向かって話します。当然、ギルデンスターンは〈礼儀作法〉を持っていないので、「こういうことを聞いてください」と船場吉兆の女将スタイルでエドガーに指示を出します。(ギルデンスターン)「(コソコソ)ババアって言ってください。クソババアって言ってください」
エドガー:いやいや(笑)
GM:(レディ・ジュディス)「(エドガーに向かって)それで、どのようなご用件だったかしら?」笑顔を見せるまではいきませんが、序盤のジロリという感じはなくなりました。少なくともエドガーに対しては。
エドガー:ここは駆け引きしてもしょうがないので、正直に用件を話します。
エドガーはケンブリッジでの事件について話し、自分たちがその犯人の足取りを追っていることを説明します。村で見かけた壊れた馬車は強盗団の使っていた馬車ではないかとの疑問を正直にぶつけ、知っている情報があったら聞かせてほしいと頼みます。
たっぷり1分間、エドガーの目を見つめた後、レディ・ジュディスは話を始めます。
アルバラは楽園回帰主義者という、原始的な状態への回帰を目指す派閥に属する者たちの集団です。彼らは不自然な機械的進化を推し進める歯車の寺院とは敵対しています。過去に、楽園回帰主義者の聖地である“シーリーコートの森”(※シーリーコート=友好的な妖精たち。楽園回帰主義者は“アンシーリーコートの森”をそう呼びます)を、歯車の寺院が燃料確保目的のために無断で伐採したことがあったため、両派閥の間には根深い敵意があります。アルバラ・マナーは歯車の寺院へ報復する機会を常にうかがっていました。
事件のあった夜、歯車の使徒たちが村にやってきて争いになったことをレディ・ジュディスは認めます。彼女によると、天誅の名のもと、歯車の使徒たちを処したとことです。
エドガー:「彼らの積み荷も処分されたのでしょうか? 先ほど残骸を目にしましたが……」
GM:(レディ・ジュディス)「供物として、シーリーコートの森に還しました。歯車に操られし者たちと一緒に」
ジョン:「妖精は鉄を嫌うといいますが、それを森に還すというのはどうでしょうか?」とエドガーに言ってもらいます。
GM:楽園回帰主義者が何を信じているのかはともかくとして、彼らの言い分は敵対者を土に還したということです。それはきっと、歯車の使徒たちであれば生命と血であり、クロックワーク部品であれば錆びるに任せることになるのでしょう。
エドワード:「歯車の使徒やクロックワークの部品を確認するために、実際に森へ立ち入ることは可能ですか?」……と聞いてください(笑)
GM:(レディ・ジュディス)「楽園回帰主義者とその同胞でなければ、森に立ち入ることは許されません」
エドガー:まあ、そうですよね。とにかく、歯車の使徒の北へ逃げた連中の計画は、現状、ここで頓挫した可能性が高いということか。
GM:そうですね。おそらく意図していなかったことだとは思いますが、楽園回帰主義者が歯車の寺院のこれ以降の計画を断ち切ったという側面はあるかもしれません。
エドガー:あと、聞いて良いのか迷っているんだけど、はぐれシュブ=ニグラス教団のことは聞いた方が良いと思う? 知っているんじゃないかと思うんだよね。
ジョン:聞いてみて良いんじゃないですか? それによってあの2人と歯車の使徒との関係性が浮き彫りになってくると思いますよ。
エドガー:心配しているのは、俺たちはあの2人が歯車の寺院の味方をしているんじゃないかと思っているんだけど、そうじゃなくて、楽園回帰主義者と手を組んでいるとなったら――
エドワード:それならそれで、我々は彼らと敵対する理由はなくなるので良いのでは?
エドガー:「では、最後に1つ。この辺りでこのような風体の輩(※ド・マンカスターとラドリー)を見かけたことはございませんか?」
GM:(レディ・ジュディス)「ああ、ウィリアムとプレストンのことですね?」
一同:え!?
GM:皆さんの背後の扉が開いて、ド・マンカスターとラドリーが姿を見せます。
ゲーム内の世界設定として、楽園回帰主義者とシュブ=ニグラス教団は同盟関係にあります。楽園回帰主義者の持つ原始的な状態への回帰願望は、自然神としての側面も持つシュブ=ニグラスと相性が良く、目的達成の手段としてシュブ=ニグラスを利用することに忌避感を覚えません。楽園回帰主義者は神を崇拝しておらず、シュブ=ニグラス教団に原始状態への回帰願望はありませんが、互いの守備範囲で重なるところが少なからずある両派閥は、相性の良い同盟者です。
ファーネスでの活動基盤を失ったド・マンカスターとラドリーは、現在、アルバラ・マナーに身を寄せています。
エドガー:「……レディ、彼らと話をしたいのですが、構いませんね?」
GM:「荒事は無しに願いますよ」といってレディ・ジュディスは目を閉じます。
エドガー:「あなたたちは歯車の寺院には組してはいないのか?」
GM:(ド・マンカスター)「本来であれば、それに答える筋合いはないのだが、今はレディ・ジュディスに世話になっている身ゆえに答えよう」彼が言うことを要約すると、楽園回帰主義者はその性質から荒事が得意じゃないので、歯車の寺院が関わって進行している現在の状況の中、彼らは臨時の戦力としてアルバラ・マナーで頼られている状況です。
ジョン:ということは、当日の夜に歯車の使徒をぶっ散らばしたのもこの2人かもしれませんね。
GM:(ド・マンカスター)「私たちとお前たちの関係は、本来ならば笑って茶を啜っていられるほど気の置けないものではないはずだが、今回はレディ・ジュディスの顔を立てて、剣も銃も抜かないでおいてやる」
エドガー:「こちらもレディ・ジュディスと約束したので、ここで争うつもりはない。あえて聞くが、あなたたちが歯車の寺院のアジトについて知っていることがあれば、教えていただきたい。我々はそれを潰そうと思っているし、それはレディの願いにも叶うはず」
GM:(ド・マンカスター)「それについては、私たちは何も知らない。そもそも、歯車の寺院とやらについて知ったのは、つい最近、ここに来てからのことだ。現状はともかく、奴らは私たちシュブ=ニグラス教団の敵対勢力ではないのでな」
エドガー:「なるほど」
GM:(ギルデンスターン)「(コソッと)なんとか、この楽園回帰主義者とやらを味方に引き入れることはできないでしょうか?」なお、ギルデンスターンはシュブ=ニグラス教団をまったく脅威とみなしていません。
エドガー:まぁ、彼は事情を知らないもんね。じゃあ、レディに向かって「歯車の寺院との因縁があるのは分かりました。今回、我々は奴らを可能な限り撲滅したいと思っています。共通の目的に関して、情報提供なり、いろいろな形はあるとは思いますが、ご協力いただけますでしょうか?」
GM:(レディ・ジュディス)「……良いでしょう。今は“敵の敵は味方”という単純な考えで問題ないようですから。ダン! ビル!」レディが呼ぶと、2人の農民が出てきます。「この2人を好きなように使ってください」
一同:(笑)
エドガー:いや、ありがたくはあるけれども(笑)
GM:次いで、レディ・ジュディスはド・マンカスターを振り向いて、「お願いできますか?」と声をかけます。すると、ド・マンカスターは渋い表情を浮かべた後、「では、ラドリーを遣わしましょう」と応じます。これはアルバラ・マナーの戦力の約半分を提供してくれることになります。ド・マンカスターは今でこそ流浪の身ですが、元々はサーの称号を持つ家柄の出身ですから、その辺は義理堅いです。農民のダンとビルは、まぁ、戦闘ではあまり頼りにならないかもしれませんが、おそらく死ぬまで戦います。
エドワード:それでも、しょせん村人にすぎませんからなぁ。
ジョン:私も農民の出身ですが、何か?(笑)
対・歯車の寺院の大義のもとに、それぞれの思惑が交錯する不安定な同盟が結ばれ、共同戦線を張ることになります。
北方面にこれ以上追跡可能な情報はないと判断し、冒険者たちはケンブリッジへ戻ることにします。ギルデンスターンは今回の件について軍本部に報告し、いずれ北方面を重点的に捜索するよう進言するとのことです。
GM:皆さんが館を立ち去るときには、レディ・ジュディスが入口まで出てきます。これはなかなか受けられない栄誉です。小さいとはいえ領地の主が、自分よりも身分の低い者を見送りに出てきたわけですから。
エドワード:〈礼儀作法〉様様ですな。
エドガー:いや、まったく。取っておいて良かったよ(笑)
GM:皆さんの一行にはダンとビルの2人がついてきます。プレストン・ラドリーは同道しません。(ラドリー)「俺は俺なりにやらせてもらう」
エドガー:その方が、我らにとってもありがたい。終始近くにいられると、緊張を強いられるからね。
ジョン:私も居心地悪くなりますからね。彼も同じでしょうけど(笑)
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