クレズネ計画


4

 ケンブリッジへ戻った冒険者たちは、西へ逃げて行った強盗団についての情報を聞くために再びニューモデル軍屯所へ向かいます。ギルデンスターンはアルバラで入手した情報を報告するために立ち去り、一旦彼とはここでお別れです。

ローゼンクランツ
GM:西への偵察隊を指揮するのは、オリンピアの事件の際に一緒に戦ったもう一人の兵士、ローゼンクランツです。(ローゼンクランツ)「西への偵察隊は俺が4名の兵士を率いるつもりだ。ついてくるなら、まぁ、ご自由にどうぞってな」
エドガー:「西へ向かったスカサハたちからの情報はあるのですか?」
GM:(ローゼンクランツ)「20㎞ほど西へ行ったところに、怪しい廃修道院があることをつかんでいる。連中のアジトになっている可能性が高い。俺たちはそこを調べに行くってわけさ」
ジョン:廃修道院ですか……。
GM:征西にはオリンピア、およびビルとダンが同行します。(オリンピア)「きっと何かがあります」

ライン

GM:廃修道院までは20kmほどあり、ほぼ丸一日の行軍となります。皆さんが道に沿って進んでいると、行く手、つまり西から1人の兵士が馬を走らせて近づいてきます。どうやらニューモデル軍の先遣隊の一員のようです。彼は皆さんに訝し気な視線を送りながら、ローゼンクランツに近づいて、何かをコソコソと耳打ちします。-20%で〈知覚〉ロールをしてください。
スカサハジョン:-20%……(コロコロ)……ピッタリ成功!
GM:するとジョンには聞こえますが、戻ってきた兵士がギルデンスターンに「修道院にクロックワーク設備が建設されています」と報告していることが聞こえます。
ジョン:ローゼンクランツに「クロックワークのご用命であれば、お力になれますよ」と声をかけます。
GM:(ローゼンクランツ)「それは心強い、が……」と言うと、やってきた兵士にさらに何かを命令して、ケンブリッジ方面に走らせます。
エドガー:ケンブリッジにも報告させるってこと?
ジョン:それはそうなるでしょう。
GM:(ローゼンクランツ)「俺たちは先へ進もう。この先で先遣隊と合流できるはずだ」しばらく進むと、道の先でスカサハが笑顔で大きく手を振っています。
エドガー:快く旧交を温めるような間柄ではないので……(笑)
GM:到着した皆さんには「疲れたでしょ?」と言って飴を配ってくれます。スカサハによると、ここから1km先に件の廃修道院があるそうです。
エドガー:「奴らは確実にそこに入ったのか?」
GM:(スカサハ)「間違いないわ。修道院の外に、馬車を確認したもの」
エドガー:「なるほどね。人の出入りは? 何人ぐらいいそう?」
GM:(スカサハ)「正確に数えられてはいないけれど、まぁ、10人より少ないってことはないわね」
ジョン:その人数だと、確かにアジトっぽいですね。「修道院にクロックワーク設備があるとのことですが、それはどのような感じなのですか?」
GM:スカサハによると、とりあえず風車があります。そして、修道院は川べりにあるのですが、同時に水車も回っているようです。風車と水車は大型クロックワーク機器のゼンマイを巻き上げるために使われますので、何か大規模な作業が行なわれている可能性があります。
エドガー:「それは明らかに怪しいな」

ライン

GM:先遣隊と合流してから2時間ほどすると、兵士に伴われてニューモデル軍の軍服を着た非常に若いクロックワーク技師がケンブリッジ方面から合流します。おそらくローゼンクランツの手配でしょう。合流した技師の服装などを見て、〈工芸(クロックワーク)〉〈芸術(クロックワークの設計)〉ロールをしてください。
ジョン:成功。
ウィリアム・クレメントGM:合流した技師はウィリアム・クレメントという名で、20歳そこそこの若者なのですが、彼はニューモデル軍クロックワーク連隊所属の技師です。つまり、議会軍の最精鋭部隊所属の技師ということになります。オスカー大尉のストライディング・スーツを整備するのは彼です。
エドガー:マジですか!? それを考えると、ちゃんとした増援を出してきたんですね。
GM:(ローゼンクランツ)「これで全員そろったな」ということで、いよいよ廃修道院へ向かいます。修道院は川べりにあって、報告通り風車と水車が見えます。少し離れたところまで、ギィギィというひどい騒音が聞こえてきます。ここで〈知識(建設関連)〉〈信念(キリスト教関連)〉ロールをしてください。
エドガー〈工学〉ではダメですか?
GM:(ルールブックの技能の説明を見て)……ちょっと違うんですが、-40%でOKにしましょう。
一同:失敗です。
GM:ではヴァレリィが〈信念(ピューリタン)〉で……(コロコロ、成功)。(ヴァレリィ)「あの風車の建っているところって、修道院の中庭で、本来は恵みの樹が生えている場所なんじゃないかな~?」
エドガー:「何かシンボリックな意味があるのか?」
ジョン:「どちらかというと、ゼンマイ機構が仕込みやすい場所があそこだったんじゃないかと」
GM:ではここで、〈機械装置〉かクロックワークに関連する技能でロールをしてください(ジョンが成功)。おそらく、風車と水車は廃修道院内にある何かに動力を供給するために使われているのだろうジョンは推測できます。近づくにつれて、ジョンやクレメントには馴染みの、ガチャガチャという機械が噛み合う大きな音が聞こえてくるので、現在進行形で何かが行なわれているのでしょう。廃修道院は見た目通りのものではなさそうです。
オリンピアエドガー:修道院自体はどれくらいの大きさなの?
GM:50席の会衆席がある礼拝堂のほかに、中庭や修道士たちの生活スペースがあるので、それなりの規模です。修道院を外から眺めながら計画を練っていると、オリンピアが「……歌が聞こえます」と言い出します。
エドガー:歌? このうるさい中で? 我々にも聞こえますか?
GM:-60%の〈知覚〉あるいは〈歌唱〉ロールをしてください(※エドワードが成功!)。ではエドワードは騒音の中にか細い旋律が混じっていることを聞き分けます。
エドワード:「ん?」旋律の内容から何か分かることはないですか?
GM:非常に短い言葉を繰り返しているようです。Wow、wow、wow、wow……みたいに。(ローゼンクランツ)「そりゃ怪しい。とにかく調べてみるしかねぇな」
エドガー:……呪文の詠唱とかじゃないの?

 ローゼンクランツ指揮下、一行は修道院に入ってみることにします。建物から逃げ出す者がいた場合、それを捕縛するためにニューモデル軍の兵士5人(とダンとビル)が修道院の外で待機します。スカサハは軍人ではなくスパイなので、待機組です。彼女は護身術程度しか身に着けていませんし、この廃修道院を突き止めるまでが彼女の仕事です。「ガンバッテ!」と投げキッスを送ります。
 技師であるウィリアム・クレメントは同行しますが、彼は戦闘要員ではなく、クロックワークに関する調査要員です。


GM:オリンピアは「歌の出所を知りたいのです」と言って修道院突入班に同行です。ちなみに彼女も戦闘には不参加です。
エドガー:なるほど。

 最終的に修道院突入班はエドガー、エドワード、ジョン、ヴァレリィ、ローゼンクランツ、クレメント、オリンピアの7名となります。


GM:いよいよ修道院侵入ですが、足音を忍ばせて近づいて行くということであれば〈隠密〉ロールをしてください。
エドガー:これだけ音がうるさければ、音は気にする必要はないと思います。
エドワード:うん。
GM:パチンコ屋に入ったときって、最初は玉の音に圧倒されると思いますが、しばらくすると店内放送が聞き取れるようになったり、自動ドアが開いた気配とかが分かるようになったりするじゃないですか。あれと同じで、修道院内にいる者にとってはガチャガチャと鳴っていることが日常です。それ以外の音がした場合に、彼らは気づきます。
ジョン:なるほど。カクテルパーティー効果が働くということですね。〈隠密〉は振るだけ振っておいたほうが良いんじゃないですか?(コロコロ……)成功です。
エドワード:振っておいても損はないか。(コロコロ……)お! 成功しちゃった(笑)
エドガー:(コロコロ……)失敗です。ヒーロー・ポイントを1だけ使います。これで失敗したらゴメン……(コロコロ)……失敗(笑)。まあ、しょうがない。
エドワード:ヒーロー・ポイントを使った心意気だけは汲みます(笑)
GM:ちなみにヴァレリィは成功していますので(※ヴァレリィは〈隠密〉が得意です)、失敗したエドガーを見て「チッ、クソが……」と舌を鳴らしています。
エドガー:ゴメン(笑)

ライン

GM:一行として隠密には失敗していますが、とりあえず中に入っていくということで。当然ローゼンクランツは先頭に立ちます(※先頭がエドガーとローゼンクランツの二列縦隊)。皆さんが入るのは会衆席の並ぶ荒れ果てた礼拝堂です。奥の祭壇横の崩れた壁から水車が見えます。祭壇の横に水車を取りつけるわけはないので、おそらくこれはもともとあったものではなく、後から取りつけられたものでしょう。
ジョン:「やはり何かありそうですね」
GM:エドガーとローゼンクランツが礼拝堂の中に足を踏み入れると……エドガーは-40%で〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー:(コロコロ……)成功です。
GM:修道院内の柱の陰に誰かが隠れていることに気づきます。
エドガー:ローゼンクランツに目配せをして「行くぞ」とタイミングを合わせます。

歯車の使徒 冒険者たちは隠密行動には失敗しましたが、〈知覚〉ロールで敵を目ざとく見つけたことで、不意討ちを受けることは回避し、礼拝堂内に身を隠していた15人の歯車の使徒との戦闘になります。
 激戦となりますが、数が多いとはいえ歯車の使徒たちは手練れの戦士ではないため、少なからぬ被害をこうむりながらも冒険者たちは誰も失うことなく戦闘に勝利します。


エドガー〈応急手当〉〈応急手当〉
ジョン:とりあえず水車を検分してみましょう。動力はどこへ向かっていますか?
GM:クランク経由で地下に向かっているみたいです。地下に潜っているので、その先を調べるには、時間と人足と掘削用具が必要になるでしょう。礼拝堂で戦った歯車の使徒たちとクロックワーク機構は無関係なので、今もガチャンガチャンと騒々しい音は継続中です。
エドワード:「こんなに動力が必要なものとは、一体……?」
ジョン:「クロックワークに関するものだとは思いますが、どのようなものかはまだ分かりませんな」
エドガー:ジョンやクレメントに聞きますけど「現時点で、この水車や風車は止めたり壊したりしておいた方が良いの?」
ジョン:「止めたら何が起きるかを確認してから止めたいですね。とりあえず、ほかのエリアを家探ししてみませんか?(オリンピアの方を見て)歌声はまだ聞こえるかい?」
GM:(オリンピア)「聞こえます」と言って、礼拝堂奥の通路の先を指さします。そこには閉まった扉があります。その扉の奥から聞こえる騒音がひときわ大きいです。
ジョン:では、まずはそこの部屋へ行ってみましょうか。扉を開けます。ガチャッと。
GM:-40%で〈知覚〉ロールをしてください。
ジョン:(コロコロ……)成功です。
GM:では扉が薄く開くと同時に中から2本の剣が飛び出してきます。〈知覚〉ロールに成功したので、剣に対するリアクションができます。最初の剣が……(コロコロ)……クリティカル。装甲無視で8ダメージ。
ジョン:クリティカル受け流しを目指すのは無理っぽいので、そのダメージは受けます。ヒーロー・ポイントで重傷の効果は無効化しておきます。痛ぇ~(泣)
GM:2本目の剣は……(コロコロ)……外れ。扉の奥は小部屋になっていて、中央に回転する大きな金属の柱があります。オルゴールのシリンダーを縦にした感じだと思ってください。剣を持った歯車の使徒2人が扉の脇に、ピストルを持った歯車の使徒1人が柱のそばに立っています。得体のしれない不気味な柱を見たので、皆さん-20%で恐怖判定をしてください(※エドガーは失敗して6正気度ポイントを喪失)。その柱は直径3メートルくらいで、横にゆっくりと回転しています。その表面の一部に不完全な自動人形が組み込まれていて、それが神のこぶしデイ・プニュスという言葉を繰り返し、繰り返し唱えています。〈歌唱〉〈楽器演奏〉のどちらかをロールしてください。
エドガー〈楽器演奏〉で成功。
GM:エドガーにはその「デイ・プニュス」という言葉が、少しずつ発音を変えて発されていることに気づきます。“デ”にアクセントがあったり、“イ”にアクセントがあったり、必ず何か少しずつ変えて発されています。ここからまた戦闘です。

 小部屋の扉越しの窮屈な戦闘が行なわれますが、3人の歯車の使徒はほどなく制圧されました。


GM:歯車の使徒たちは倒れましたが、柱は動き続けています。止めるのであれば〈機械装置〉〈工芸(クロックワーク)〉ロールです。
ジョン:止めましょう。
GM〈工芸(クロックワーク)〉ロールならクレメントが“支援”します。技能に+7%を加えて良いです。-40%でロールをどうぞ。
ジョン:では49%で……(コロコロ)……07!
GM:柱は止まりました。
エドガー:オリンピアはこれを見てどういう反応なの?
GM:組み込まれていた自動人形を見て、非常に悲しそうな表情を浮かべています。(オリンピア)「かわいそう。降ろしてあげてください」
エドガー:なるほどね。「自動人形の部品を強奪したのには、これを作り上げる意図があったのか……」
GM〈知識(オカルト)〉〈知識(クトゥルー神話)〉ロールをしてください(※ジョンが〈知識(クトゥルー神話)〉で成功)。柱は「デイ・プニュス」という言葉を繰り返していましたが、何ものかを召喚するもっとも簡単な方法は、正しい発音でその名を呼ぶことです。つまり、このオルゴールのような装置で非常に繊細に少しずつ発音を変えて「デイ・プニュス」の名を呼んでいたわけです。それを無限に試行し続けることで、いつかダイヤルキーのようにぴたりと一致させて、何かを呼び出すための装置がこれなのかもしれません。
エドガー:これって誰でも簡単に作れる装置じゃないよね? ジョンやクレメントなら、どれくらいの技術が必要なのか分からないかな?
ジョン:仕組みや設計から、どのような流派(?)みたいなことは分かりますか?
GM:とりあえず、今まで見たことのないシロモノなので、それを開発する程度の知識や技術を持つ相手なのでしょう。
エドガー:クレメントにこれはどうするつもりなのか聞いてみます。
GM:(クレメント)「回収できる物は回収しますよ」
ジョン:ほかにも使っていない部品が残されているかもしれませんね。ニューモデル軍の兵士たちと一緒に、修道院の残りの部分も捜索しましょう。

 外で待機していた兵士たちと合流して、修道院の徹底的な捜索が行なわれます。旧修道院長の部屋と思われる場所で、一行は受信したと思しきメモを発見します。

 歌う柱の試作についてはご苦労であった。歯車の神ルンクの名を正しく唱える試行は自動人形にやらせることで解決されるだろう。歯車の大祭壇はJWの手配により完成に近づきつつある。祭壇に歌う柱を設置し、クレズネ計画を実行した暁には、我らの心願も成就するであろう。
GC 

ジョン:「クレズネ計画?」
GM〈文化(自分)〉ロールをしてください(※ジョンが成功)。“クレズネ”っていうのは、ケルト神話の鍛冶の神です。ヌァザの銀の手を作った神のうちの一柱ですね。GCというのは、おそらく歯車の寺院の高司祭であるギデオン・コグスリーのイニシャルでしょう。
ジョン:JWというクロックワーク技師に心当たりはありませんか?
GM:あまりにも多すぎて絞り切れない。これがQPとかだったら絞り込めるかもしれないけど(笑)
一同:(笑)
GM:(ローゼンクランツ)「この手紙は収穫だな。何かが行なわれていることは間違いない。あとはこのJWって奴のガラを押さえなくちゃならねぇな」
エドガー:何らかのクロックワーク技術を持っている人物ってことだよね。
GM:(ローゼンクランツ)「とにかく、今回は助かったぜ……こいつらの退かなさ加減は厄介だな」
エドガー:「捕虜にしても口を割らせることができなさそうな連中だな」
GM:皆さんはケンブリッジに戻ります。