ファーネスに囁くものたち


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GM:ケズィックの町から1㎞離れた交差路脇の木のところで、ランタンのシャッターを開け閉めして合図を送る人物がいます。近づいて行くとそれはパーソンズです。
一同:おお!
ジャック・パーソンズGM:パーソンズは少し震えていますが、皆さんの顔を見て安堵します。「よく来てくれました! 彼を見たのです――ジェームズだと断言できます。町の広場を歩いているのを見たのですが、顔が蝋人形のようにこわばっていました。はっきり言って、恐ろしくてたまらなかったですよ。敢えて話しかけませんでした――距離を取って彼を追跡したのです。一度も振り返らず、この丘を登っていきました。彼はあの小道を行きましたが、その先には野原と荒れ地以外には何もありません。ただし……あそこに古いストーン・サークルがあります。ある者はドルイドたちが作ったと言い、ある者は石に変えられた魔女のサバトだと言います……美しき民がそこにそれを置いたと言う者もいます」
エドガー(地図を見ながら)……ここ?
GM:そうです。キャッスルリッグ・ストーン・サークルは実在する遺跡です。近くに町や村があるわけではないので、「夜にそこへ向かって歩いて行くのは変だ」という感じはします。
エドガー:「どう考えてもおかしい。追ってみましょう!」
エドワード:「よし!」
GM:パーソンズもついてきますので、ヴァレリィも含めて4人になりますね。(パーソンズ)「もしあのニコルソンらしき者がストーン・サークルに向かったのなら、何をしているのか、確認する必要があります。彼に追いつかねば」
エドガー:「……追いついたとして、声をかける? それとも気づかれないように様子を見る?」
GM:(パーソンズ)「まず、あのニコルソンらしき者が何者なのかを確認せねばなりません。この先にあるのは太古の魔法に関する聖地の1つなのです。嫌な予感がします」
エドガー:道々、ヴィカーズ島であったことは話しておきましょう。
GM:(パーソンズ)「なるほど。そうすると、やはりニコルソン関係で何か辻褄が合わないことが起きているのは確かなようですな」

 キャッスルリッグは、遠くの山の峰々の眺望に囲まれた平地にある環状に並んだ立石だ。直径30メートルの環の中に38個の不規則な石があり、その中に10個の石からなる小さな環がある。最も高い石は高さ2.3メートルだが、ほとんどの石は1.5メートル以下だ。


エドガー:規模的には超巨大というわけではなさそうだね。
エドワード:人影とかは?
GM:満月の光に照らされた環の中心で、ジェームズ・ニコルソンと思われるものが奇妙で不自然なダンスのようなものを行なっているのが見えます。その様子は、まるで昆虫が痙攣するかのような不気味なものです。開いた彼の口から、奇妙なブンブンという羽音のようなものが発されています。〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー:……失敗です。
エドワード:成功!
GM:成功したエドワードは、彼の手足が普通の人間にはありえない方向に曲がっていることに気づき、即座に正気度判定を行なわなければならない! 失敗すると1D4正気度ポイントを失います。
エドワード:(笑)……(コロコロ)……失敗! 4ポイント失いました(泣)
GM:そのような光景が50メートル先で展開されています。
エドワード:近づいて行って声をかけてみましょう。
GM:ニコルソンはブンブンという音を口から発しながら、奇妙なダンスを続けています。皆さんの接近に気づいていないのか、あるいはそれを気にしていないのかは分かりません。
エドワード:「ニコルソンさん?」と声をかけても反応はないわけだよね?
エドガー:何か周りで奇妙なことが起きているということはありませんか?
GM:それに気づくかどうかは〈知覚〉ロールです(エドワードが成功)。エドワードは、彼の口から発せられるものではない羽音が上空から聞こえることに気づきます。
エドワード:「何か上から聞こえるぞ!」
美しき民GM:見上げる人は-20%のペナルティーで〈知覚〉ロールです(エドガーが成功)。すると、甲殻類のような体に短い触手が無数に生えた渦巻きのような頭を持ち、ブンブンと音を鳴らす羽根を備えた、人間ほどの大きさの怪物が8体ほど上空から飛来してきます。
エドガー:8体も!? 「上空から、ヤバイやつが襲って来るぞ!」
GM:それを見た人は-20%で正気度判定をお願いします(エドワードが4正気度ポイントを失いました)。「クリーチャーたちは自分たちの存在を知られたくないので、すぐに冒険者たちを攻撃しようとする」とシナリオに書いてありますので、戦闘しましょう。
エドガー:8体もいるのに!?

 美しき民8体との戦闘。行動順は美しき民×8→エドガー→ヴァレリィ→エドワード→パーソンズ。

第1戦闘ラウンド
 美しき民たちが飛来するまでの1ラウンド、冒険者たちは先制の遠隔攻撃が1回できます。
 エドガーがマスケットを、エドワードがデュエリング・ピストルを撃って命中させるものの、美しき民の非地球的な生理機能によりダメージは最小になります。

第2戦闘ラウンド
 地表に到達した美しき民は2体ずつの4チームに分かれ、腕に備えたハサミで冒険者たちを攻撃します。
 エドガーに1体の攻撃が命中しますが、〈回避〉ロールに成功してダメージなし。2体目の攻撃は外れました。エドワードへの攻撃は2体とも外しました。ヴァレリィへ攻撃が命中し、2ポイントのダメージを受けます。パーソンズにも攻撃が命中して4ポイントの負傷。
 エドガーはマスケットを手放してグレート・ソードを抜きます。
 ヴァレリィは得意のダガー投げで美しき民に軽傷を負わせます。
 エドワードは〈二刀流〉技能を持っているため、右手に持ったデュエリング・ピストルを手放さなくても、左手に持ったサーベルでペナルティーを受けることなく攻撃が可能です。でも攻撃は失敗。
 単なる市民のパーソンズが武器を持っているようなことはなく、彼は逃げ回るだけです。

第3戦闘ラウンド
 美しき民の攻撃。エドガー、エドワード、ヴァレリィへの攻撃は受け流しをされたり、命中しなかったりですべて失敗。パーソンズは不幸にもさらに1ダメージを受けます。


GM:(パーソンズ)「助けてくれー!」
エドガー:やばい!
エドワード:パーソンズ、頑張ってくれ!!

 エドガーはグレート・ソードで手負いの美しき民にさらに傷を負わせるも、非地球的な生理機能でそれも最小ダメージとなります。
 ヴァレリィは新たにダガーを抜きます。
 エドワードのサーベルによる命中は回避されました。

第4戦闘ラウンド
 1体の美しき民のハサミがヴァレリィにクリティカル成功で命中!


GM:(ヴァレリィ)「私、ピーーーンチ!」
エドガー:やばい!
エドワード:ヴァレリィ、頑張ってくれ!!

 エドガーの攻撃により手負いの美しき民Aがついに倒れます。美しき民の残りは7体。ヴァレリィのダガー投げは失敗、エドワードのサーベルは回避されます。


エドガー:このままだと、1体倒すのに4回の命中が必要だってことだよね。何か手はないものか……。
GM:魔法です、魔法。錬金術。
エドワード:まあ、一応使える錬金術はありますが、銃を手放して賢者の石を取り出さなくてはならないので、どうするべきか……。

第5戦闘ラウンド
 仲間を失ったことに動揺したのか、美しき民の攻撃はすべて失敗。
 エドガーのグレート・ソードが命中して最小ダメージ(3ポイント)を与えます。ヴァレリィはダガーを抜いて終了。


エドワード:……サーベルで切りつけます。
エドガー:本当に!?
エドワード《竜の如き息を吐くために》という火の錬金術があるのですが、命中しても1D8のダメージを与えるだけなので、サーベルでコツコツ削った方が良いと思うので。
GM:使いきりの、文字通り1発勝負の呪文ですか。武器への魔力付与効果がある呪文が欲しかったところですね。次回以降の課題として、やはりポーションを作っておいたほうが良いですね。
エドガー:……確かに。

 エドワードのサーベルは命中して最小ダメージ(3ポイント)を与えます。

第6戦闘ラウンド
 美しき民の必殺の攻撃がパーソンズを襲いますが、回避に成功して九死に一生を得ます。


エドガー:接近戦アクションの“全力攻撃”をします。リアクション(※受け流しや回避)を失って、命中率が-20%になるけど、2回攻撃ができます。(コロコロ……)2回命中して6ダメージ!
GM:累積で美しき民Bは倒れました。突破口はこれかもしれませんな。ガンバレ!

 ヴァレリィのダガー投げはまたしても失敗。彼女は戦闘要員ではないので、まぁ、仕方ありません。エドワードはサーベルを命中させて、美しき民Cを地道に削っていきます。

第7戦闘ラウンド
 美しき民は残り6体。パーソンズに攻撃が成功するも、彼はヒラリと回避。
 エドガーはパーソンズをかばうように移動して全力攻撃2回を命中させます。ヴァレリィは4本目のダガーを引き抜いて終了。エドワードはサーベルを命中させて美しき民Cを倒します。
 エドガーが助けに来てくれたため、パーソンズは移動アクション“後退”(※移動率の半分まで、敵から攻撃を受けずに退却できる)を使って戦闘から離脱します。

第8戦闘ラウンド
 美しき民は残り5体。エドガーに命中させますが、硬い鎧に阻まれて1ダメージのみ。エドワードへの攻撃は失敗。ヴァレリィに攻撃が命中しますが、幸い鎧に阻まれます。
 エドガーは(ヒーロー・ポイントを費やして)全力攻撃による2回攻撃を命中させます。美しき民Gが倒れます。ヴァレリィとエドワードの攻撃は失敗。

第9戦闘ラウンド
 美しき民は残り4体。何回か攻撃は命中するも、ヴァレリィは回避に成功し、エドガーは硬い鎧で跳ね返しました。
 エドガーの全力攻撃は1回だけ命中。ヴァレリィはダガー4本を使い尽くしたので、最後のナイフを抜きます。エドワードの攻撃は失敗。

第10戦闘ラウンド
 美しき民の攻撃は全部失敗。
 エドガーの全力攻撃は2回とも失敗。ヴァレリィの投げナイフは命中するも、与えられるのは1ダメージのみ。エドワードの攻撃は失敗。

第11戦闘ラウンド
 美しき民の攻撃がエドガーに命中するも、硬い鎧に阻まれてダメージなし。
 全力攻撃を続けるエドガーは1回命中させ、エドワードのサーベルは空を切りました。

第12戦闘ラウンド
 ヴァレリィに対する美しき民の攻撃が成功するも、ヒラリと回避。
 エドガーとエドワードが1回ずつ命中させて、美しき民に傷を負わせます。

第13戦闘ラウンド
 美しき民の猛攻! ヴァレリィに攻撃が命中して、耐久力を残り1ポイントにします。また、エドガーにも合計3ポイントの傷を与えます。
 冒険者側はエドワードがサーベルを命中させて着々と目の前の敵を追い込んでいきます。


エドガー:「ヴァレリィ、もう下がれ!」と言います。
GM:なるほど。ではヴァレリィは次のラウンドで“後退”アクションですね。

第14戦闘ラウンド
 “後退”アクションをするヴァレリィへの追撃が命中! 回避を試みるも、失敗してしまいます。しかし、ヴァレリィはヒーロー・ポイント持ちのNPCであるため、それを1ポイント費やし、〈回避〉を再ロールして成功。美しき民の残りの攻撃は外れました。
 全力攻撃のエドガーは攻撃を2回命中させて美しき民Dを倒します。ヴァレリィは後退。エドワードのサーベルは外れ。

第15戦闘ラウンド
 美しき民は残り3体。数を減らして士気が衰えたのか、攻撃はすべて外れ。
 エドガーは1発命中させるも、美しき民は回避。エドワードはサーベルを命中させてコツコツと自分の仕事をこなします。

第16戦闘ラウンド
 美しき民、最後の攻撃。エドガーに1回命中するものの、鎧に阻まれてダメージなし。
 エドガーの2回攻撃は1回だけ命中し、美しき民をさらに負傷させます。


エドワード:サーベルで切ります。(コロコロ……)クリティカル!
GM:では最大ダメージの3ポイントを与えられます(笑)。でもこれで美しき民Hも倒れました。残りの2体の美しき民は上空へ逃げていきます。美しき民の死体はドロドロに溶けて地面に染み込んでいきました。

 16戦闘ラウンドを重ねましたが、戦闘はかなりサクサクと進む印象です。原則的にアクション(攻撃など)、リアクション(受け流しや回避)、移動が1回ずつしかできないため、処理手順が少ないのがその理由です。派手な錬金術などがあれば、輪をかけて速くなるでしょう。
 冒険者はヴァレリィの〈応急手当〉技能で耐久力と正気度を回復させます。


エドガー:さて、ニコルソンもどきは?
GM:いまだに羽音のような声を発しながら、バタバタと手足を動かしています。
エドガー:……止めます。
GM:ニコルソンは能動的に戦闘を仕掛けてくることはないので、人数をかけて抑え込めば動きを止めることはできます。彼の身体は非常に冷たく、聞いていた通り、顔は蝋細工の面のように無表情です。しかし、別に仮面をかぶらされているわけではないようです。目をギョロギョロ、口をパクパクと動かしていますが、表情というものがない感じです。首の周りにはぐるりと傷跡がついています。
エドガー:縫いつけたような痕がある?
GM:そうです。それはまるで縫いつけた痕のようです。それを見て正気度判定です(全員成功)。墓場で掘り返した棺に入っていた謎の死体には頭がなかったですよね?
エドガー:何か、頭を挿げ替えたとかそういうことなのか?
エドワード:う~ん。
GM:(パーソンズ)「これは、もう……ニコルソンじゃない。地上を歩いていてはいけないモノだ」
エドワード:では心臓を一突きドスッと。
GM:ニコルソンにとどめを刺すと、「頭蓋骨が割れて美しき民の蠢く触角が飛び出し、イソギンチャクの触手のように揺れ動き、急速に色を変え、灰色がかったピンクに変わって死んで垂れ下がるのを見る」とシナリオに書いてあるので、正気度判定です(笑)
エドガーエドワード:失敗!(それぞれ2正気度ポイントを喪失)
GM:ニコルソンの脳に、棺に入っていたあの怪物の頭が移植されていたのでしょう。「どうやら、今回の事件には美しき民が関わっていそうだぞ」ということが分かりました。