GM:ウィスバーンを出発してグラスミアへ向かいます。グラスミア湖の北1マイルくらいのところにグラスミア村があって、そこに旅人の休息亭という宿があります。街中は非常に荒らされていて、住民総出で後片づけをしている最中です。
エドワード:ここもか。「どうされたのですか?」と聞いてみよう。
GM:(村人)「取り替え子たちが、イナゴの大群のように来襲して略奪を行なって、呪いとピストルで脅して、何もかもを持っていっちまったんだ」邪眼や弾丸の犠牲になった者たちもいましたが、基本的に取り替え子たちは食料が目的だったようです。略奪後、彼らは南へと向かったそうです。
エドガー:「奴らはどこへ行くって言っていた?」
GM:(村人)「しきりに“コニストンの老人”の名を出していたから、コニストンじゃないか?」
エドワード:「3か月前に鉱夫たちは通らなかったか?」
GM:(村人)「ああ、そんな連中がいたな」情報の内容的には、ウィスバーンで聞いたのとほぼ同じですね。現在は正午過ぎくらいなので、頑張れば夜までにはコニストンに到着することはできます。
エドワード:取り替え子の集団からは1日遅れなんだっけ?
GM:そうですね。疲れているし、これから暗くなると道中の危険性も増しますが、パーソンズは「急いだほうが良いんじゃないか?」という意見です。
エドワード:じゃあ、行きましょうか。
GM:夕方も遅くなってからコニストンに到着します。町には白壁の家や灰色のスレートの家が点在していて、コニストン・ウォーターという全長8kmの湖の平らな湖岸に向かって、丘陵地帯が下りながら広がっています。その背後には、ザ・オールド・マン・オブ・コニストン(またはコニストン・オールド・マン)という高峰がそびえ立っています。「ここには黒い雄牛亭という宿があるから、そこへ行ってみよう」とパーソンズが提案します。
エドガー:パーソンズがそう言うなら従いましょう。
中心部に近い、白壁とスレート屋根の広大な建物である黒い雄牛亭に到着した時、気づき始めていた混沌とした光景が君たちを出迎える。窓ガラスは割れ、何人かの人々が壊れた家具を片づけ、宿から運び出し、荷馬車に積み込むのに忙しくしている。農民や使用人たちの中に、洒落た騎兵隊の制服を着た若い男がいて、作業を指揮し、必要なときには間違いなく頼りになる肩を貸している。ちらりと顔を上げると、彼は君たちを見て、自分のしていることを中断して挨拶に来る。ベルトの剣に手をかけ、火薬か錬金術のポーションと思われるものをぶら下げた弾帯を着けている。隠しごとのない正直そうな顔をしているが、その表情は今は訝しげだ。
GM:(騎兵隊の制服の男)「ここに何の用がある、見知らぬ人たちよ?」
エドワード:自己紹介と目的を説明しつつ、「取り替え子の一団にやられたのですか?」と聞いてみましょう。
GM:彼は代々500年以上もコニストンを収めているフレミング家の現当主、ダニエル卿です。オックスフォードで錬金術を学んだ学徒だったので、もしかしたらエドワードは彼とカレッジですれ違ったことがあったり、顔を見たことがあったりするかもしれません。1か月前に前当主が突然死したので、学究を中断して戻ってきて、この地を治めています。このような田舎では錬金術は好ましい目で見られませんが、気さくな人柄から、村人たちは親しみを込めて、彼を「若旦那」と呼んでいます。
エドガー:エドワードとは共通点が多そうですね。
エドワード:そうですな。
GM:(ダニエル卿)「実はこの町にも大勢の取り替え子が押し寄せてきて、この通りの有様なのだ。そのことについて話し合いたい喫緊の問題がある。コニストン滞在中は私の家に泊まってくれ」
エドワード:「それはありがたい」
GM:案内されたコニストン・ホールはコンパクトな石造りの2階建てです。コニストン・ウォーターの湖畔にあり、湖と対岸の暗い森の素晴らしい景色を見渡すことができます。館に入ると、ダニエル卿は使用人たちに命じて客人用に個室を用意させて、風呂用のお湯と食事の準備をさせます。これはすごい歓待ですよ!
エドガー:そうだよね。
GM:翌朝、皆さんは食堂に集まって朝食をとります。ダニエル卿の姿は見えませんが、朝食が終わると、(使用人)「お食事がお済みになりましたら、主の書斎へ来るようにとの伝言でございます」
エドワード:もぐもぐ。では行きましょう。
GM:ダニエル卿の書斎には巨大な暖炉があって、中で丸太が音を立てて燃えています。2面の壁の床から天井までを本棚が覆っていて、革装丁の書物が並んでいます。使用人がお茶を持ってくると、ダニエル卿は皆さんに着席を促して、使用人を部屋の外へと追い出します。(ダニエル卿)「さて、コニストンへは、一体どんなご用事で?」
エドワード:「行方不明になったドイツ人の鉱夫たちを探しています。一部再開されたコニストン銅山の作業に向かったと聞いているのですが……」
エドガー:「それに取り替え子たちの集団が略奪をしながらこちらに向かっているという情報も聞いています」
GM:(ダニエル卿)「妖精が人の子を連れ去って、代わりに置いていったのが取り替え子であるといわれているが、悲しいことにそうではない。奴らは森の主、シュブ=ニグラスという大いなる太古の邪悪の淫らな顕現と寝た母親から生まれた子供たちだ。母親の中には魔女もいれば、脅迫されたり騙されたりして森の主に引き合わされた女もいる。森の主の子供たちは皆、彼の印(しるし)を持ち、強力な魔法使いであり、悪意と全能を持った真の姿で世界に戻ってくる彼の到来に備えている」
一同:「……」
GM:専門的な話をしますと、『クロックワーク&クトゥルー』ではシュブ=ニグラスに“女性”の側面はなくて、完全に“男神”とされています。このゲームにおいて、シュブ=ニグラスは基本的に“彼”と呼ばれます。つまり、シュブ=ニグラスと人間の女性との間に生まれた子供が取り替え子と呼ばれる存在です。
ダニエル卿の説明は続きます。
- 太古の強力な存在で、豊穣の支配者とされるシュブ=ニグラスは、圧倒的な欲望を持ち、魔女のサバトに黒い男として現れる。サタンと誤解されることもあるが、本当の姿は灰色の霧で、これに捕らわれた者は狂気に陥ると言われている。
- 惑星ユゴスから来た奇妙な種族である美しき民は、この世界の存在とは異なり、一般的な元素で構成されていない。彼らは自分たちの世界では得ることのできない鉱物を求めてここに来ており、シュブ=ニグラスを崇拝し、取り替え子たちと同盟を結んでいる。
- 鉱山は特権鉱山会社の所有だったが内戦で閉鎖され、最近になって新たな人々が鉱山に集まり始めた。彼らは地域の治安判事であるダニエル卿を避け、鉱山再開の準備をしているとだけ話した。実は彼らはマンチェスターから来た議会派のクロックワーク技師で、旧特権鉱山会社とは無関係だった。ダニエル卿は政府に報告したが返答はなく、彼らはドイツ人鉱夫を連れてきたが、戻ってきた者はいない。さらに美しき民の目撃情報が増え、技師たちは彼らと手を組んでいるのではないかと、ダニエル卿は疑っている。
エドガー:なんだか、色々とつながってきましたね。初めて出てきたのは、議会派のクロックワーク技師たちが背後にいるんじゃないかっていう疑いですね。銅山再開に際して、ダニエル卿に許可は必要ないんですか?
GM:いえ、コニストン銅山はフレミング家の所領内にあるので、収入の一部はダニエル卿が得られるもののはずです。でも、そのような話は彼の元には来ていませんし、そもそも銅鉱石が運び出されている様子がありません。特権鉱山会社経由であれば話を通すでしょうから、何か不正なことが秘密裏に行なわれているのではないかとダニエル卿は疑っています。
エドガー:「それならば、当然の権利として査察チームを組織して現地を調べてみたら良いんじゃないですか? 何が実際に行なわれているかを確認するというのはどうでしょう?」
GM:(ダニエル卿)「そうしたかったのだが、町には腕っぷしの強い者もいないし、ここ数日は取り替え子への対応に明け暮れていて、行動には移せなかったのだ」
エドワード:「取り替え子たちも鉱山へ向かったのですか?」
GM:(ダニエル卿)「いや、彼らはここから南のトーヴァーに向かい、それから丘陵地帯を登って、オールド・マン・オブ・コニストンの影が落ちる古代の不吉な沼、ゴーツ・ウォーターという暗い湖に向かっていると聞いている」
一同:(地図を見て)……ここか。
GM:(ダニエル卿)「そこは何世紀もの間、森の主と関係があり、月の暗い夜に魔女たちが不浄の儀式を行なうと言われている。しかし、私の秘蔵のオカルト本が正しければ、星々の合が近づいており、正しい儀式が執り行なわれれば、現在の戦争をエデンの園のように思わせる、狂気の雲という真の姿をしたシュブ=ニグラスをこの世に連れ戻すことができるのだ」
エドワード:そのゴーツ・ウォーターも気になるけど、俺らの目的はドイツ人鉱夫の行方を探すことなので、行くべきなのは銅山だよね。
GM:そんなことを話していると、使用人がノックもせずに扉を開けて書斎に飛び込んできます。「失礼ですが、見ていただきたいものがあります、恐ろしいものです、若旦那様!」
エドガー:お?
GM:ダニエル卿は立ち上がって、ホルワーシーという名のその使用人に案内するように指示し、皆さんにもついてくるように合図します。「君たちも来たほうが良い」
エドワード:ついて行きましょう。
GM:ホールの外に連れ出すと、ホルワーシーは西の方を指さします。コニストン・ウォーターの西側の低い山裾から、オールド・マン・オブ・コニストンの高く不吉な峰がそびえ立っています。山の左肩の向こうから、渦巻く灰色の雲の巨大な柱、巨大な竜巻が、空を覆っている低い灰色の雲にまで伸びています。それは一箇所に留まってわずかに波打っていますが、この距離ではその風の激しさの囁きすら聞こえてきません。
一同:おおう……。
GM:ダニエル卿は使用人に向き直るとこう言います。「ありがとう、ホルワーシー。心配するな、当面の危険はない。しかし、数日分の食料といつもの旅行用具をリュックサックに詰めておいてくれるとありがたい――どうやら旅に出なければならないようだ」使用人が立ち去ると、ダニエル卿はこう言います。「本の予言したとおりとなった。取り替え子たちはゴーツ・ウォーターにある儀式を行なう場所に守りの風を起こし、妨害を防ごうとしている。最強の呪文やエレメンタルたちでさえ、シュブ=ニグラスの千匹の仔山羊の力によって召喚されたそのような障壁を突破するのは難しいだろう」
エドガー:「それは阻止できないものなのでしょうか?」
GM:(ダニエル卿)「何もしなければ破滅は免れ得ぬが、希望が1つだけある。銅山を通り抜け、オールド・マン・オブ・コニストンの地下を通り、ゴーツ・ウォーターの岸辺近くに出る古い通路がある。見えている旋風の環の中に、その出口はあるだろう。君たちは鉱山を調査したいとのことだった――もし私と一緒に来てくれるなら、おそらく君たちが望んでいた以上に鉱山の多くを見ることができ、その先には少なくともシュブ=ニグラス召喚を阻止できる可能性がある。もし君たちが来ないのであれば、私は1人で行くが、おそらく失敗するだろう」
一同:「……」
GM:(ダニエル卿)「私と一緒に来てはくれまいか?」
エドワード:ガシッと握手しましょう。
エドガー:どうせ我々が行こうとしていた道ですからね。
GM:(ダニエル卿)「そう言ってくれると思っていた」
エドガー:「ゴーツ・ウォーターまでの距離はどれくらいあるんですか?」
GM:ダニエル卿によると、コニストン・ホールからゴーツ・ウォーターまでの道のりは約13㎞で、最初の3㎞は荒れた荷馬車道でレヴァーズ・ウォーター・ベックの谷を登り、残りは地下を通ることになるそうです。使用人の手も借りて、さっそく出発の準備が整います。ここで-40%で〈知覚〉ロールをしてください。
エドガー:成功!
GM:エドガーは、ダニエル卿が蠟引きした布で丁寧に包んだ本のようなものを袋に詰めているのに気づきます。
エドガー:(特に気にすることなく)ダニエル卿に狂気とかは感じられないですよね?
GM:〈洞察〉ロールをしてみてください(全員失敗)。熱意のある若き領主としか見えません。
エドガー:そうかー。
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